俳句例:101句目～
冬風に下駄も結べる鵜籠かな/飯田蛇笏
卒業の日の下駄箱を閉める音/長島富郎
取的の下駄響かせる薄暑かな/大野英雄
地蔵湯の秋の灯洩るゝ女下駄/高澤良一
庭下駄の音をはばかる星月夜/池永洋子
夜々澄みて郡上踊の下駄の音/橋本榮治
夜の底にやがてはぐれて踊下駄/湯川雅
女ありく春の砂原下駄を没す/正岡子規
女下駄はきて其処まで一葉忌/伊豆三郷
妹が垣根古下駄朽ちて落葉哉/正岡子規
宿の下駄鳴らして渡る渓紅葉/斎藤正仁
おぼろ夜や旅先ではく男下駄/あざ蓉子
宿下駄に波ふくれ来る島薄暑/毛利憲子
宿下駄の足に馴染まず十三夜/岡村文恵
かへられて残る夜寒の女下駄/会津八一
小相撲の下駄音ひびく花曇/長屋せい子
ぎぼし咲く山へ揃へて宿の下駄/神蔵器
広下駄の左右行くや秋涙あり/永田耕衣
庭下駄がひんやり美男葛の実/川崎展宏
庭下駄に犬の歯型や地虫出づ/高城圭子
俳句例:121句目～
庭下駄に茶の花摘まん霜日和/正岡子規
庭下駄に足のせ初夏の縁に腰/星野立子
庭下駄の木目くっきり寒の月/白井万恵
庭下駄の歩き出しさう夜の梅/前田静枝
庭下駄の蹠になじむ今朝の秋/秋枝蕭子
庭下駄の音をたのしむ盆帰省/木内彰志
桐下駄の細き鼻緒や傘雨の忌/田中幹也
庭下駄は亡き夫のまま落し文/村山/方
どぜう屋の主下駄ばき春の昼/西堀貞子
彼岸会や身内の下駄を一纏め/久米幸叢
待宵や箱から出して桐の下駄/藤井恒子
思想展高校生ら下駄を鳴らし/岸風三楼
恵方への下駄にて渡る橋一つ/千田一路
斑猫や童女にゆるき湯治下駄/川崎俊子
新しき下駄の柾目の淑気かな/西田飄石
日盛の塗下駄ぬげば曇りかな/杉田久女
はり下駄の踵逃げすや蓼の花/石塚友二
星月夜外湯へ借りる男下駄/西原真佐子
春雨に下駄買泊瀬の法師かな/蕪村遺稿
ほきとをる下駄の歯形や霜柱/夏目漱石
俳句例:141句目～
昼深く元日の下駄おろすなり/千葉皓史
月に雲下駄はいて出る義士会/藤倉哲夫
朝霧に散歩の下駄の緒の緩し/高澤良一
枕の下雁木にこもる下駄の音/星野潔子
栗飯や下駄ぬぐきはに菊の花/正岡子規
桐下駄を後ろに跳ねて阿波踊/福本愛子
梅さくや泥田の中の下駄の跡/正岡子規
正月の下駄の音する飛騨の峡/前田普羅
水無月の下駄の鼻緒の雫かな/石黒一憲
ガタの来し下駄箱霧の共同湯/高澤良一
河骨や吾が青春は下駄なりし/藤後左右
浜下駄の鼻緒の濡れて芋の花/平野無石
湯上りの庭下駄軽し夏の月/芥川龍之介
焼下駄や縮羅にとほる宵の蟲/高橋睦郎
下駄ありて人なき池の花藻哉/正岡子規
焼印が素足くすぐる宿の下駄/岩木秋水
猛犬である下駄箱は町を映し/西川徹郎
猿田彦下駄脱ぎ来たる六夜待/山田春生
下駄であがる社の椽や散松葉/正岡子規
下駄にのる踵小さし菊日和/鈴木真砂女
俳句例:161句目～
玄関にころがつてゐる下駄の雪/林澄山
秋深き下駄幅決めし人を愛す/永田耕衣
竿灯担ぐ下駄の歯一本男意気/岡本喜美
下駄の上靴のつてをり避暑の宿/上野泰
笹酒を受く雪下駄の女たち/河合佳代子
箱の如き庭下駄のあり夏座敷/前田普羅
縄の緒の庭下駄一つ放哉忌/山本みゆき
聞き送る君が下駄遠き氷かな/正岡子規
下駄の歯の石除くとき鳥渡る/石川文子
下駄の歯を蹴欠いて戻る師走かな/鳳朗
花桐の琴屋を待てば下駄屋哉/正岡子規
草市へおろして軽き桐の下駄/中山純子
下駄の音ころんと一つ秋深し/富安風生
菊月や備後表の下駄買はむ/鈴木真砂女
下駄の音外は月夜と覺えたり/正岡子規
菖蒲湯へ来る少年の女下駄/小野冬虹子
下駄の音脳に響きつ夜寒けれ/石塚友二
薮入の姉の下駄履き野菊摘む/南/南浪
虫の夜の名札付けたる男下駄/飯田龍太
蚊遣火の音よく戻る日和下駄/野村喜舟
俳句例:181句目～
下駄はいて竹積む上に涼みけり/鈍太楼
蜥蜴出づ天狗下駄干す神宮寺/武田孝子
行き合うて共に下駄好き青芒/友岡子郷
行春やゆるむ鼻緒の日和下駄/永井荷風
裕忌や故郷へ帰る下駄の音/田宮真智子
親鸞忌人の温みの下駄借りる/西島民江
踏青や草履駒下駄足袋はだし/正岡子規
通ひ妻梅雨の下駄音紛れなし/石川桂郎
下駄借りて宿屋出づるや朧月/正岡子規
達磨忌の集ひにまじる女下駄/川端青踏
下駄履いて丈高きかな猿廻し/高浜虚子
郡上八幡宿に溢るる踊り下駄/古川昭子
金鳳華番所の跡に下駄干せり/高木良多
鈴虫を聴く庭下駄の揃へあり/高浜虚子
門へ来て下駄鳴らしけり夜の雪/菊舎尼
雲衲は棕梠緒の下駄や蓮の花/河野静雲
霜月や下駄の音冴ゆる大通り/寺田寅彦
下駄揃へある秋冷の山廬かな/森田公司
霜解けや下駄の緒切れし畷道/寺田寅彦
駒下駄の橋わたりくる初不動/角川春樹
