俳句例:101句目～
降りし汽車また寒月に発ちゆけり/羽公
汽車を下りる茸狩衆や稲荷山/正岡子規
はらはらと汽車に驚く螽かな/正岡子規
阿蘇噴いて汽車と葬列雁行す/石原八束
阿蘇を出て粟畑広く走る汽車/高濱年尾
金鳳華汽車行きてまた時経たる/森澄雄
里神楽森のうしろを汽車通る/高浜虚子
遅れつつ汽車が着くなり麦の秋/上村占
赤子に汽車見せて涼しむ麻畑/野澤節子
豊年や汽車の火の粉の美しき/澤木欣一
歳晩や火の粉豊かに汽車煙/中村草田男
袋とるリンゴの中の汽車の中/古館曹人
蜩のこゑ振る山に汽車停る/百合山羽公
蜜柑山その下稀に汽車通る/山口波津女
薄暮れぬ野末に汽車の走る音/正岡子規
一握の灯が汽車となる豊の秋/鷹羽狩行
二度よりは通らぬ汽車や花芒/正岡子規
五月闇煙吐き休む木曽の汽車/野沢節子
仏壇にひゞき秋夜の汽車通る/梶井枯骨
伊奈北をひた走る汽車濃山吹/坂本坂水
俳句例:121句目～
水虫を掻きて教祖の汽車旅行/古屋秀雄
汽車道に鳩の下り居る枯野哉/正岡子規
元日の汽車闇に着き闇に発つ/角川春樹
光る蜂青野の汽車に伴走す/伊丹三樹彦
汽車の音鶯逃げてしまひけり/正岡子規
其の下を汽車が通るぞ羽抜鳥/正岡子規
草藉けば深夜の汽車の疾走す/横山白虹
芽柳や成田にむかふ汽車汚れ/石橋秀野
汽車を下りて淋しき驛や花芒/正岡子規
汽車道に堀り殘されて花野哉/正岡子規
冬濤とわかれ大きく汽車曲る/木下夕爾
念ひ寒し逆行の汽車車窓過ぎ/中島斌男
分水嶺汽車を雪野へ放ちけり/羽部洞然
汽車道に冬木の影の竝びけり/正岡子規
初瀬の駅獅子舞汽車を待てるかも/誓子
芋秋や汽車ゆるやかに境線/鈴鹿野風呂
汽車よりも汽船長生き春の沖/三橋敏雄
南洋の朝礼こは国境行の汽車/伊丹公子
汽車過ぎて煙の中の茶摘かな/千原叡子
吹雪く中北の呼ぶ声汽車走る/西東三鬼
俳句例:141句目～
胸元の毛皮の爪に汽車の揺れ/品川鈴子
夏草に雲下りふして汽車疾し/会津八一
素通りの汽車に汚され雪の谿/津田清子
才蔵の素顔さびしき汽車の中/見目冠人
山の汽車噎びて発てり苗木市/宮坂静生
種痘つく柱の中を汽車が過ぎ/宮坂静生
寒凪やなかなか消えぬ汽車の尻/飴山實
摘草や汽車の煙をふりかむり/芝不器男
短日や汽車に持ち込む稽古弓/今井誠人
山女鮓汽車狩勝にかかりけり/田村木国
短夜や一番汽車に乗りおくれ/正岡子規
汽車過ぎて山静かなり夏木立/正岡子規
新緑の町へ来る汽車の音です/北原白秋
新緑や芥のごとき汽車の中/百合山羽公
汽車のつく頃幌橇が一つ来し/高野素十
汽車来る遠きひびきや夏の山/会津八一
汽車通る倉庫の前の三尺寝/木村里風子
秋雨や汽車藪を出て嵯峨の駅/西山泊雲
汽車過ぎて木枯闇に残さるる/内藤吐天
秋もはや蒸気の汽車の軽井沢/石塚友二
俳句例:161句目～
早乙女の一人は汽車に隔てらる/浅井啼
町裏に汽車がつきゐて秋の海/中村汀女
田舎人の衣更へたる汽車場哉/正岡子規
島人に陸の汽車ゆく初景色/秋元不死男
汽車待つや梨喰ふ人の淋し顔/正岡子規
炭坑の汽車に乗り来て入学す/山口誓子
春寒し手舁よりする汽車の旅/幸田露伴
漢数字の汽車時刻表秋ともし/山尾郁代
尻向けて汽車を憎めり田草取/石塚友二
春雨や汽車にをくるゝ二三人/羅蘇山人
昼も夜も似寄の汽車弁冬の旅/北野民夫
昼汽車のひと日の空費菜種梅雨/桂信子
秋の田の自転車汽車におくれゆく/六子
庭先を汽車行く家や釣り干菜/内田百間
汽車動き晩夏の空の動き出す/上島顕司
夜桜や汽車の白煙ふんだんに/山口誓子
泥鰌屋の汽車式便所砂壁冷え/北野民夫
廃さるる汽車に給水花吹雪/百合山羽公
沿線の桜見ながら汽車ぽっぽ/高澤良一
汽車黒く通りて赤し火事の村/齋藤愼爾
俳句例:181句目～
汽車下りて鼻梁をただす春の霜/松澤昭
月見草煤の日輪に汽車停る/殿村莵絲子
秋の海の夕日に向ひ汽車の窓/野村泊月
朝寒や首をちゞめて汽車の窓/羅蘇山人
汽車長し海水浴の人降りて/波多野爽波
汽車長くきしみて止る夏山峡/細見綾子
汽車の月後にて聞けば十三夜/正岡子規
秋の川渡るとき汽車軽くなる/高橋次郎
汽車下りて遠き宿場や稲の花/正岡子規
汽車道を横ぎつて行く夏野哉/正岡子規
心安し若葉の風に汽車が行く/正岡子規
汽車道をありけば近し稲の花/正岡子規
汽車に寝る眉ふく風や雲の峯/会津八一
汽車道の此頃出来ぬ芥子の花/正岡子規
枕木の霜正刻に汽車きたる/百合山羽公
枝柿を提げて汽車待つ田夫哉/正岡子規
友とその新妻春の汽車こだま/友岡子郷
汽車の隅安居に上る僧ならん/河野静雲
枯野原汽車に化けたる狸あり/夏目漱石
汽車道の此頃出來し枯野かな/正岡子規
