俳句例:101句目~
十六夜の誰か先ゆく鹿の先/桂樟蹊子
十六夜の月近々と山の宿/中島智椅子
十六夜の青林檎なれば自閉的/安西篤
十六夜や囁く人のうしろより/千代尼
十六夜や兎の型に切る林檎/平林恵子
十六夜や人も四十か花の老/中村史邦
十六夜を宵よりねたる男哉/寺田寅彦
十六夜のいづれか今朝に残る菊/芭蕉
十六夜や龍眼にくのから衣/榎本其角
十六夜も太刀参籠す羽黒山/伊藤敬子
風花の舞い込む三塔十六谷/高澤良一
十六夜の水にちらばり水馬/萩原麦草
十六夜の水の市ヶ谷飯田橋/川崎展宏
十六夜や溲瓶かがやく縁の端/日野草城
十六夜や着崩れなほす家の門/高柳重信
十六夜や石にたぐひて亀の甲/日野草城
十六夜や結び目褪せし笛袋/藤井寿江子
いちはつや十六までの柱きず/平賀寛子
十六夜や繚乱として秋ざくら/遠藤梧逸
十六夜や育児日記に父の文字/久田澄子
俳句例:121句目~
十六夜や飛ぶ鳥もなき草の原/中島月笠
もてゆけと十六ささげともにもぐ/篠原
十六日祭老いたる母に涙ぐむ/真/囁生
名月に発ち十六夜に戻りたる/坊城中子
喪の家や和紙と十六夜清冽に/北野民夫
地下出るに街洗はれて十六夜/西村公鳳
太子立つ御齢十六ならば東風/和田悟朗
峯風絶景十六夜秘曲/百済琴/高柳重信
待宵も十六夜も風なりしこと/村上三良
日蝕のいよよ十六ささげかな/柚木紀子
初風呂の十六貫はまだ老いず/原赤松子
十六の子供がしらや無木打/吉岡禅寺洞
十六や膝かゝへて居る御坊達/村上鬼城
時忠の墓守り十六ささげ干す/青木和枝
桑畑に出て十六夜の月を見し/細見綾子
灯さず入りて十六夜温泉あふる/及川貞
白和は飛騨の十六ささげかな/清水基吉
目を閉じて十六日祭の墓の前/山城光恵
能登曇り十六宵草の露しとゞ/前田普羅
十六夜に蹴つて鮑の殼なりし/山尾玉藻
俳句例:141句目~
菓子屑に十六むさし昏くなる/関口久雄
十六夜のいくつも橋を渡りけり/西山誠
逝く夏の雨の十六ささげかな/行方克己
遣羽子や十六七のうしろつき/正岡子規
長短に簾かけあり十六夜/長谷川かな女
十六夜のどつかと笑ひ仏かな/仙田洋子
十六夜の万葉仮名は風の侏儒/土屋遊蛍
十六夜の声よく通る太郎冠者/向井久子
十六夜の大釜沸かす氏子たち/乙黒麦童
十六夜の妻は離れて眠りをり/石川桂郎
十六夜の子の眉を引く旅役者/内田純子
十六夜の宿の障子を走らする/高澤良一
十六夜の寂びたる雲の迅さかな/小島健
十六夜の山はかはるや月の道/正岡子規
十六夜の指の先までかぐや姫/鈴木節子
十六夜の月に一位を聳えしめ/高澤良一
十六夜の月の面を照らすもの/後藤夜半
十六夜の月大いなる騎士の国/加藤耕子
十六夜の月無しの酒さめ易し/石田波郷
十六夜の月移ろへば窓替へて/高澤良一
俳句例:161句目~
十六夜の村のはづれに親不知/伊藤柏翠
十六夜の気色わけたり比良伊吹/ぶん村
十六夜の波少しある礁かな/大下みのる
十六夜の父のうしろに母寂びて/岸田稚
十六夜の白瀬や滝に発しつつ/野澤節子
十六夜の落葉は白く浅間立つ/堀口星眠
十六夜の親子狐は影絵法師/脇本千鶴子
十六夜の雨ふる犬の抱かれけり/籏こと
十六夜の雲ふかければ五位わたる/青邨
十六夜の鰊番屋の浮き立てり/毛塚静枝
十六夜はわづかに闇の初め哉/松尾芭蕉
十六夜や酒に間のある萩小鉢/古舘曹人
十六夜は知らぬ方にて茶漬哉/正岡子規
十六夜も居待も曇り草以仏/猿橋統流子
十六夜やしゆびんかがやく縁の端/草城
十六夜やひとり欠たる月の友/高井几董
十六夜やまどろみ流る碓氷川/堀口星眠
十六夜やむささび枝を渡りそめ/有働亨
十六夜やゆうべにおなじ女郎花/泉鏡花
十六夜や一輛灯す貨車よぎり/堀口星眠
俳句例:181句目~
十六夜や冷気おぼゆる糸瓜影/富田木歩
十六夜や出て後何の事もなし/正岡子規
十六夜や又酒のみの言ひ草に/正岡子規
十六夜や古妻古き帯を締め/鈴木真砂女
十六夜や品川に海ありしころ/藤田湘子
十六夜や地球の上に我家あり/星野立子
十六夜や少し猫背に見舞夫/鍵和田釉子
十六夜や尾上の鹿に月のさす/正岡子規
十六夜や月におくるゝ迎ひ船/正岡子規
十六夜や母には私しか見えぬ/松本紀子
十六夜や汝ら創りし森に来て/村越化石
十六夜に五百羅漢のひしめける/岡田泰成
地に垂るる十六ささげ秋立てり/岩田はつ
夜更かしの始め十六むさしかな/湯橋喜美
十六夜の雲深ければ五位わたる/山口青邨
十六夜の更けてひとりに広き卓/山田弘子
そのむかし十六むさし争ひし/瀧澤伊代次
年ごとに十六日祭の親族老い/岸本マチ子
広重の松に十六夜明りかな/阿部みどり女
十六夜の寒さや雲もなつかしき/渡邊水巴