俳句例:101句目~
雪光の中に風呂焚く豪華な音/飯田龍太
青葉西風一番風呂に男の子/八牧美喜子
初風呂の十六貫はまだ老いず/原赤松子
剃刃の傷あとうづく冬至風呂/河野南畦
十年の宿痾の癒えし冬至風呂/池田博子
風呂が沸き筍飯も炊けしとよ/池田秀水
初風呂は修善寺温泉数寄屋棟/磯野充伯
初風呂へ生子をつつむましろにぞ/槐太
恪勤の耳順の夫へ冬至風呂/中山フジ江
風呂の戸にせまりて谷の朧かな/原石鼎
初風呂やつきせぬながれ清元の/泉鏡花
風呂の水落す末寺の犬ふぐり/長谷川双
初風呂や吾子の小さき力瘤/井出真理子
熱き湯に痒み覚えぬ冬至風呂/高澤良一
風呂の湯を落せしあとの遠蛙/星野立子
風呂を焚く梅の寒さや早泊り/松瀬青々
若き日の火筒暮しや冬至風呂/柴田保人
風呂洗ふ作務を無心に安居寺/斉藤道廣
生涯や初風呂にいま目をつむり/森澄雄
風呂焚きの落葉の中に蛇の衣/藤米田薫
俳句例:121句目~
釜茹でを承知の上の冬至風呂/高澤良一
下呂温泉岩風呂に垂る凌霄花/郷/照雄
今日も亦よいの雁風呂焚つけし/原月舟
大旱岩風呂に蝉はりつきて/瀧澤伊代次
鵙漸く止みぬ月光を長風呂に/鈴木花蓑
鵜飼果て傘して風呂へ導かる/宮武寒々
鵯に覗かれてゐる昼の風呂/南/冨美子
長々と雁風呂のこと話しけり/岡田史乃
雁風呂にけふの浜波なかりけり/関利治
雁風呂にこさ吹く暮や浦の風/菅原師竹
岩風呂の秋燈暗し瀬を照らす/福田蓼汀
岩風呂や木賊にかかる夕陽見て/桂信子
わが肌に老斑いまだ菖蒲風呂/亀井糸游
少年のとび込む音す菖蒲風呂/中山純子
廊下まで匂ふ楽屋の菖蒲風呂/片岡我当
浸りつつたゆたふ齢菖蒲風呂/皆吉爽雨
雁風呂に母の乳房の貧しさよ/鷹匠子朗
一束の菖蒲がほどけ終ひ風呂/葉上啓子
雁風呂に海のつづきの波がたつ/澁谷道
一笊の胡桃がら焼べ終ひ風呂/西村節子
俳句例:141句目~
雁風呂に火を入れて人低唱す/藤木倶子
仕舞風呂葛原深く入る心地/宇多喜代子
雁風呂に雨や降る山近く見ゆ/佐藤紅緑
梟の声のつまづく仕舞風呂/江尻真沙子
膝ぎりの仕舞の風呂や虫の声/吉田冬葉
露さむし山の旅籠の終ひ風呂/田中冬二
かま風呂の肩にしみけり山の月/中勘助
ちら~と色鳥のくる伊豆の風呂/飴山實
雁風呂の焚口に来る男波かな/籾山柑子
雁風呂の薪はきえてしまひけり/中勘助
はる雨や風呂いそがする旅の暮/炭太祇
われに沸く風呂の浮蓋五月雨/松村蒼石
一つ家の風呂の中より舞雲雀/正岡子規
岩風呂へ下りゆく道の葛の花/野村泊月
雁風呂や月を泛べて汐到る/田中田士英
呆け土筆癩者浴せし空風呂に/宮坂静生
雁風呂や海鳴り近く聞く夕べ/河野石嶺
雁風呂や蜑がつたへて古き鉦/庄司瓦全
啓蟄の雨に昼風呂沸かしけり/白岩三郎
堅田てふ寒暮の郷の風呂熱し/鈴木鷹夫
俳句例:161句目~
雁風呂を焚きて傘寿を喜べり/吉年虹二
墨匠に沸き続く風呂かまど猫/田中英子
夏の月風呂溢れ落ち勿体なや/松藤夏山
夏安居の手桶で運ぶ風呂の水/升本行洋
夏油川野風呂童女に岩つばめ/金子兜太
夕露や風呂の火見する谷ッの口/飴山實
夕顔の咲いて子供の風呂終る/今泉貞鳳
大年の風呂に鼻までつかりけり/龍岡晋
大年の風呂轟々と沸かしけり/田川江道
大年の鼻まで風呂につかりけり/龍岡晋
大綿や風呂上る肩とがらせて/松村蒼石
居風呂に後夜きく花のもどりかな/蕪村
巌風呂に濤音こもる神無月/坂本山秀朗
据風呂の中はしたなや柿の花/夏目漱石
据風呂を載みゆく船や春の川/会津八一
旅籠屋の居風呂ぬるき夜寒哉/正岡子規
うら山の子狐鳴ける干菜風呂/内田雅子
川狩の相談成るや風呂の中/五十嵐播水
よく燃ゆる拾ひ薪や干菜風呂/鈴木鈴蘭
両神山の日翳り早し干菜風呂/井水貞子
俳句例:181句目~
北国の冬三日水の干菜風呂/土岐錬太郎
干菜袋抱へてじつと風呂の中/藤波銀影
庭へ出て風呂焚く家や夏の月/井上井月
干菜風呂手擦れの艶の火吹竹/乾佐知子
敗戦忌砂のざらつく風呂の底/木田千女
早苗饗や朝から沸かす薬風呂/森脇恵香
明智風呂愛宕の連歌口すさむ/伊藤松宇
手拭ひに匂ひが残り干菜風呂/斎藤花辰
昼風呂の水溢るゝに蝶々かな/吉田冬葉
時の日の齢いとしむ二番風呂/板垣紫洋
杉風呂にいやす高野の花の冷/荒井正隆
雪匂ふ御嶽の闇や干菜風呂/市村究一郎
松虫や風呂暗らくして松の月/正岡子規
梅雨闇の野風呂や狐顔ひとり/加藤房子
水温む風呂焚き釜も早く沸き/湯山淳三
柚子風呂にひたす五体の蝶番/川崎展宏
汗し病み母よ黄天に風呂溢る/片山桃史
烏賊漁の灯がまた霧の霧天風呂/平田薫
煤掃を風呂焚く僕の老にけり/尾崎紅葉
熱き風呂忽ちおとす木枯へ/殿村菟絲子