死者に関連した俳句の例をまとめました。
死者を含む俳句例
涙して死者を羨む夏椿/窪田久美
紅梅や謡の中の死者の声/上村占
死者生者夏鶯をかけ橋に/原コウ子
死者のこと山程嘆き薬喰/寺井谷子
死者送る生者ぞろぞろ油照り/篠原
死者に簾渓流のごと夜風くる/湘子
死者の山一年呆け蕨また/和田悟朗
冠雲や八月の死者顔の布/平井照敏
囀や海の平らを死者歩く/三橋鷹女
苗代と死者を隔つる白襖/野中亮介
夕蝉の天近づきぬ死者の窓/石寒太
死者生者一つ闇へと薪能/高橋さだ子
死者送り幼を育て田が青む/矢島渚男
鰯雲死者の家族は海見つつ/椎橋清翠
死者生者竜舌蘭に刻みし名/西東三鬼
雷光や目鼻ひらきて死者生者/三谷昭
死者の髪伸びる刹那を冬の鵙/今井豊
死者の家昨日の小菊に昨日の虻/林翔
深秋の奉教死者のミサの燭/景山筍吉
荒星を消す天涯の死者の数/深谷雄大
俳句例:21句目~
木犀の匂ふ辺りへ死者探す/萩原麦草
死者のため蕾を選ぶ夏夕べ/森田智子
花万朶沖へ昂ぶる死者の脈/栗林千津
冬日輪生者が外す死者の札/長谷川双
月明の死者を剥ぎたる青畳/杉本雷造
秋水に死者三日月のごとくなり/照敏
死者の足丹念に揃え春白波/深谷守男
戦死戦災死者忘却や敗戦忌/橋本夢道
瞑りて蝉は聞くべし死者の丘/所山花
猫柳死者の笑顔の見える空/飯田龍太
昼寝覚死者と語りし顔拭ふ/細川加賀
晩涼の欅の下に死者を待つ/飯島晴子
死者に無き歳月烏瓜手繰る/佐野美智
炎天をゆく死者に会ふ姿して/岸田稚
鬼押しの死者の宴や黄落期/四倉喜美子
飢餓の死者呻くか谷の草に蝉/矢島渚男
風鳴つて死者をとむらふ風車/仙田洋子
豊年や死者にこにこと担がれて/秋澤猛
風花や青き竹伐り死者の杖/三ヶ尻湘風
雪嶺や死者還らねば棺は空ら/岡田日郎
俳句例:41句目~
冬日和死者も生者も路地を抜け/穴井太
雨の薔薇騒ぐは死者の通るらし/徳弘純
貝風化死者の旗なす干拓田/河野多希女
諸葛菜死者が生者を走らせる/和田悟朗
死者を焼く煙にも影/大花野/松本恭子
死者はいま魂魄をもて脚を震ふ/金子晉
十月の葱見て死者の夢ばかり/宮坂静生
南瓜を死者の祭りに飾りたる/中田美子
原爆忌死者に生者に今年また/辻七星女
朝の戸に死者の音声半夏生/山口都茂女
螢火揺れ死者の霊呼ぶ水の闇/河野南畦
蝉鳴いて西空の明死者とあり/桜井博道
海底に死者居て夜光虫光らす/菅八万雄
水中花死者の顔剃る音聴こゆ/梅木俊平
国道の死者に線香犬ふぐり/百合山羽公
蜂に縞死者に讃美歌流れゆく/大坪重治
虹の下にありて死者との間かな/岸田稚
坊守の予感に夜の秋の死者/赤松ケイ子
きりぎりす胸に組まれる死者の指/雅人
死者のこゑ熾となりゆく櫻榾/黒田杏子
俳句例:61句目~
夏真昼死者も縁者も化粧して/柿本多映
すぐに了る竜踊の汗生者死者/和知喜八
死者の靴の中で靴が鳴る晴天/筑網敦子
桜咲く死者の性欲遂げられて/江里昭彦
夜の葡萄死者に時間の傾けり/柿本多映
死者生者炉塞ぐだけの計残る/巌谷小波
花を待つ死者の購めし歎異抄/黒田杏子
紅葉山死者も生者も華やげり/兼若君江
死者生者共にかじかみ合掌す/西東三鬼
稲妻や死者は写さぬ夜の鏡/鈴木真砂女
死者になほ届く手紙や鳥曇/岡本まち子
寒星や生者をしのぐ死者の数/豊田都峰
寒暁や死者よりはづす管の数/小島照子
鶏頭や生者を囲みゐるは死者/水内慶太
帰り来し死者も見にゆく盆踊/谷野予志
鵙高音鏡と死者の縁切るる/神尾久美子
鵙叫ぶ沼の木死者の白き手よ/佐藤鬼房
鳰残す波紋に倦くよ死者忘れ/香西照雄
扇風機ひとつの風に死者生者/今瀬剛一
鱶湯がく男が決まる死者の家/坪内稔典
俳句例:81句目~
死者の國よりあかつきの花筏/黒田杏子
敗戦忌死者へ生者へ鐘鳴れり/藤原佳子
百年は死者にみじかし柿の花/蘭草慶子
昏睡の死者は那辺に青葡萄/磯貝碧蹄館
死者の書を閉じて輝く夏の街/高澤晶子
秋風裡死者の語りの巫女老い/河野南畦
春一番端山吹きをり死者の飯/堀口星眠
死者の書は畏多きと紙云うも/高澤良一
春火鉢ひとつへだてて死者生者/井上雪
死者生者ゆきあふ坂の桐の花/垣本章子
炎天下死者には影も声もなし/福田蓼汀
一斉に死者が雷雨を駆け上る/片山桃史
魔の六日九日死者ら怯え立つ/佐藤鬼房
万緑や水につながる死者生者/加藤耕子
丹念の畦塗死者の道なりし/古山のぼる
炎天の死者ひっそりと爪伸ばす/源鬼彦
炎天の死者の連弾仰ぐべし/磯貝碧蹄館
生者火の恋し死者には柿供ふ/村越化石
綿虫や光りつづける死者の爪/宇多喜代子
羽織着の死者に持越す不幸なし/安東次男