原子爆弾を使用した俳句

俳句例:101句目~

原爆忌耳朶すこし痒くなる/大石雄鬼

原爆忌農薬マスク息苦し/松倉ゆずる

原爆忌近づく朱き花咲けば/岸風三樓

命得しこの身大事に原爆忌/田中玲子

夜は熱き電球愛す原爆忌/磯貝碧蹄館

子が残す飯の白さよ原爆忌/佐藤木鶏

戦知らぬ水兵ばかり原爆忌/川口巌渓

抽斗に下着が填まり原爆忌/白井久雄

絵日記に幼な手の藍原爆忌/佐藤鬼房

極彩のブリキの玩具原爆忌/白石司子

母の杖熱き湯で拭く原爆忌/河野照子

湯の中を歩むが如き原爆忌/大竹静枝

照り白む道のわが影原爆忌/嶋田麻紀

献水に寄せる歳月原爆忌/金田八重子

原爆忌介護ハウスで黙祷す/北村恭孝

暑さなど何ぞ原爆地獄絵図/古橋成光

生涯の傷身にきざみ原爆忌/中村公美

末枯に遊ぶ原爆以後の子等/山本歩禅

町医者の静かなる朝原爆忌/山内弘子

白蛾の目玻璃に紅彩原爆忌/原田孵子

俳句例:121句目~

直角にわが影が立つ原爆忌/原コウ子

砂糖水供へてありぬ原爆忌/桜田品絵

空鑵に育つぼうふら原爆忌/原田青児

絨毯を歩んでゐたる原爆忌/鈴木鷹夫

舌やれば口辺鹹し原爆忌/伊丹三樹彦

裸子の匂へることよ原爆忌/白澤良子

語り部に食ひいる瞳原爆忌/細井泰子

白服に玄沁みもどる原爆図/水巻令子

豪雨に放つ幾千の鳩原爆忌/木田千女

原爆忌万の市民の短い影/木村里風子

緑濃き原爆の日の地の起伏/松浦敬親

農薬を背負ひて歩む原爆忌/桝原豊子

三日目も燃えゐし記憶原爆忌/宇川紫鳥

流氷の基地いま無人ぞ原爆忌/香西照雄

海の面にあまた凹凸原爆忌/松森向陽子

かはほりや原爆ドーム骨曝す/本橋康子

千羽いや万羽折鶴原爆忌/宇都木水晶花

溶接の火花こぼるる原爆忌/渡辺波津子

原爆忌有無を言はせず空白み/百瀬美津

原子爆弾一発いくら大根干す/工藤克巳

俳句例:141句目~

原爆に焦げし頬も癒え卒業す/宮武寒々

わが齢傘寿となりぬ原爆忌/町田しげき

原爆忌ひまはりの丈子が制す/原コウ子

原爆の地に直立のアマリリス/横山白虹

原爆の地より噴き出す彼岸花/朝倉和江

原爆忌草さまざまな影を生み/村上恵生

原爆の日の病む手足洗ひをり/石川桂郎

原爆の日の白蓮に出遇ひけり/志摩知子

人に仕事ゆづりて戻る原爆忌/岩田昌寿

原爆の遺品出でくる川ざらへ/朝倉和江

原爆へ昂る師の語夜の蝉/鍵和田ゆう子

原爆も種無し葡萄も人の知慧/石塚友二

人の影木の影濃しや原爆忌/野本希容資

石段にわが影を折る原爆忌/西村てる子

原爆図の中の魔羅だし朧の夜/和知喜八

ぼうたんの白炎を挿し原爆忌/木田千女

空は空いろ水は水いろ原爆忌/滝井清子

一人来て群衆となりし原爆忌/谷沢白城

原爆忌吾は四歳や記憶せる/川脇すみ子

窯出しの髪を焦がしぬ原爆忌/稲垣光子

俳句例:161句目~

終戦の年に生まれて原爆忌/江守三千代

原爆日ごぼりごぼりと泉の穂/加藤楸邨

原爆日噴水は穂を高うせよ/下村ひろし

原爆柱蝉声のあとの時にをり/桜井博道

原爆楠あまたの蝉の声降らす/鈴木貞雄

原爆碑夜涼の芝になほ熱る/下村ひろし

人影のみなくらみくる原爆忌/石原八束

原爆忌近しホースが芝を這ひ/河野南畦

老皺を繰りこむ波止場原爆忌/熊谷愛子

背泳ぎに空を見てゐる原爆忌/大森理恵

胸水のごぼりと鳴りぬ原爆忌/昆ふさ子

膝小僧よごれてならぶ原爆忌/仙田洋子

原爆忌信濃の雲のありがたし/西本一都

夏雲の下の原爆記念館にわれ/目迫秩父

茄子に照る完璧な空原爆忌/百瀬ひろし

見えぬ目を閉じて黙祷原爆忌/梅木酔歩

未完に似ませ原爆ドーム風花/柚木紀子

柳散る原爆ドームと川へだて/館岡沙緻

桜散る原爆ドームの中へ散る/務中昌己

櫨紅葉越しに原爆ドーム見る/稲畑汀子

俳句例:181句目~

ほろ酔ひの繰り言多き原爆忌/松山義雄

原爆忌人は孤ならず地に祈る/飯田蛇笏

原爆忌乾けば棘をもつタオル/横山房子

原爆忌ごぼりごぼりと泉の穂/加藤楸邨

牡蠣飯食ふ原爆の河流れたり/河上蘆筍

語り部のおほかた女人原爆忌/田川研一

原爆忌雲も墓標となりて立つ/野村久子

羽蟻とぶ街に原爆呪詛の歌/下村ひろし

而して處女受胎長崎原爆日/篠田悌二郎

蕗の雨原子爆弾が来る予感/高野ムツオ

原爆忌一つ吊輪に数多の手/山崎ひさを

訃報また原爆詩人春待たず/市村ただし

語り部の使命いや増す原爆日/久保厚子

供華となる花剪り尽す原爆忌/朝倉和江

その時刻駅に立ちをり原爆忌/本宮鼎三

黄色の芽出し原爆地捨て玉葱/黒田謙司

夢に出て水乞ふ子らや原爆忌/大橋淳一

大空をつなぎ蝉鳴く原爆忌/大岳水一路

ふくらはぎ朝より重き原爆忌/菖蒲あや

子の髪を捌いて冷ます原爆忌/江良/修