文字を使用した俳句

俳句例:201句目~

一望の雪野に畦の井の字かな/二瓶洋子

上元の朱蝋の金字焔をふくむ/朝永律朗

下町は字紙鳶ばかりや南かぜ/羅蘇山人

二学期や筆圧強き板書の字/奥土居淑子

二度までは初の字つける松哉/正岡子規

仕事初め雑巾を十の字に刺し/細見綾子

元帥の大きな碑文字冬の海/青柳かつみ

冬深し老と死の字は六字画/宮本はるお

冷酒に澄む二三字や猪口の底/日野草城

初便り兄の字劃の固さかな/小野満里子

十の字にとぶ二羽の鳩草城忌/石田波郷

十三夜掛軸の字の読めぬまゝ/川崎展宏

同じ字を砂に書きつゝ春の昼/山口誓子

塵芥車も春闘参加車体に字/田川飛旅子

墓の字を読むさいかちの風の中/今田拓

夏休み丸字で埋まる伝言板/田中こずゑ

夕涼を井の字飛白の大臣かな/尾崎紅葉

大の字にジーパン乾く女正月/西谷剛周

大の字に寝て独り占め夏座敷/正木海彦

大文字草の大の字ほつそりと/京極杞陽

俳句例:221句目~

大比叡やしの字を引いて一霞/松尾芭蕉

大言海割つて字を出す稿始め/鷹羽狩行

姫辛夷莟で春の字を書きたし/奥山繁男

子に教ふカ行のカの字藪昼顔/細見綾子

子の残すメモに癌の字大西日/中村祐子

子規かの字を付ける声のあと/中村史邦

子雀のへの字の口や飛去れり/川崎展宏

春夜とや書架の金字の寒きのみ/林原耒井

名札の字やうやく読めて入園す/西村和子

近すぎて妙法の火の字とならず/清水忠彦

大の字に寝て生家なり風涼し/山本伊佐夫

辞書の字をルーペに拡げ福沢忌/大熊坩火

吹くからに秋といふ字や萱の原/清水径子

吾子が書く学生の字の帳祝ひ/池上浩山人

字を崩し夏の眩暈はじまれり/宇多喜代子

柿の蔕みたいな字やろ俺の字や/永田耕衣

あたたかや万年筆の太き字も/片山由美子

豆腐一丁あれば御の字冷やし酒/高澤良一

大の字に寝て見たりけり雲の峰/小林一茶

字の間を紙の急いでをりにけり/鈴木貞雄

俳句例:241句目~

筆始ほろ酔ひの字もめでたけれ/柏木志浪

書きし字を離れし筆や秋燈火/嶋田摩耶子

うす~と裏に字の透く助炭かな/由井艶子

諸子船湖国に切れ字爆ぜにけり/攝津幸彦

褒美の字放屁に隣るあたたかし/中原道夫

蝿といふ字に蝿の脚ありさうな/寺杣啓子

噴水の白穂もて何の字を書かむ/柴田奈美

緘の字を以つて秋思を封じけり/水越菖石

がん二字の墨痕星をまつりけり/中本柑風

蚰蜒といふ字は覚えおく気なし/北野平八

虻が飛ぶ虻飛ぶ虻の字の不思議/上杉順子

白桔梗一の字に置きただ泣ける/清水径子

書初の書き出せし字の大滲み/岩崎起陽子

さむや田の風と散りにし十七字/手塚美佐

藺ざぶとん難しき字は拡大し/波多野爽波

筒鳥や字を習ふ日の吉野の子/大峯あきら

しののめのしの字に引きし牛蒡かな/一茶

しの字曲りのの字曲りの胡瓜かな/辻桃子

ぜんまいののの字の綿の並び立つ/北條力

霊棚の栗にさきだついの字かな/服部嵐雪

俳句例:261句目~

終の字を映してゐたり蟲の闇/佐々木六戈

投げられて口をへの字の武蔵丸/高澤良一

藁しべをくの字への字に薄氷/榎田きよ子

つまみたる切山椒のへの字かな/行方克己

薔薇の字を確かむるたび歳をとる/関口勉

子供らによめぬ字のあり青写真/石井双刀

眼鏡かけ點が字となる秋灯下/嶋田摩耶子

蒲公英や矢の字となりて鶏走り/宮坂泰子

春泥を鍵屋への字の眉で来る/浅野津耶子

への字への字かさなる山の薄哉/正岡子規

月の葱畑涙という字も折れて/北原志満子

墓の字の刃てふを夜目義士祭/八木林之助

知らぬ字の大きになりし夏書かな/大/魯

落鮎の口をへの字に曲げてあり/野村喜舟

意味が字となり石となる枯芝に/鷹羽狩行

むつかしき辭表の辭の字冬夕焼/富安風生

短夜やスリッパの字の鹿野山/波多野爽波

紺のれんといふ字もおぼろかな/吉屋信子

碑文字は水の切れ味柚子は黄に/田中水桜

苗札の字も消え父も逝きにけり/川口咲子

俳句例:281句目~

夕張といふ字を雪の諸所に見る/京極杞陽

碑文字且つ拾ひ彫る菊も匂ひて/内田百間

花冷えの口をへの字に反抗期/相沢真智子

ローマ字の表札掲げ薔薇に住む/川口依子

一といふ字三といふ字の筆始め/高野素十

一の字に一の字に引き甘藷植う/山本きぬ

一の字に力入れたる吉書かな/池上浩山人

良寛の読めない字ゆゑ春惜む/阿波野青畝

妻の字は夫に似るとよ花菖蒲/石田あき子

一の字の清く正しきさよりかな/今富節子

夜櫻のぼんぼりの字の粟おこし/後藤夜半

膝に字を書かれて春の夕ベかな/松山足羽

春鮒のへの字の口へ余呉の風/藤田あけ烏

母の日や海といふ字に母のあり/沙羅夕子

氷の字二つに割れて氷室開く/松浦沙風郎

氷頭なます霰といふ字胸中に/八牧美喜子

法華経人万九千余字の夜伽かな/九堂夜想

波郷忌や切字のごとく木守柿/松倉ゆずる

竜の字の金粉に跳ね賀状書く/水田むつみ

胡桃割る聖書の万の字をとざし/平畑静塔