文字に関連した俳句の例をまとめました。
文字を含む俳句例
白川静新訂字統読始/黒田杏子
良寛の天といふ字や蕨出づ/目
君が代や猶も永字の筆始/乙由
本の字極印光周し御蔵の春/調鶴
誠の字太く大きく筆始/鈴木照雄
心太箸より逃ぐる字の形/河野薫
肉も血も暗喩も翳る字神梅/林桂
十七字即ち春の愁かな/岩崎照子
杢兵衛の燐寸箱の字春灯/角光雄
鶯や切字てにをは句読点/星野椿
注連かけて鴨の字隠る翁塚/林翔
鬼百合に桃の名残や國文字/林桂
冬麗の壺壽の一萬字/伊藤いと子
野葡萄も花嫁も雨字小夜戸/林桂
死を電報にして字のかず/岡栄一
壽の字は紅梅の蕊のさま/野澤節子
萍や水ふんだんに心字池/橋本青園
忘れし字妻に教はり冬籠/富安風生
缺徳利字山田の案山子哉/正岡子規
病少年病少女の字星祭る/右城暮石
俳句例:21句目~
竜の字は龍でなくては凧/大橋敦子
大和仮名いの字を児の筆始め/蕪村
字違へ小字をたがへ秋祭/藤井貞子
夕空や五字抹消の蝉の稿/斉藤夏風
宝刀の切字を頼む歳旦吟/高澤良一
一の字に己の見えて筆始/田淵宏子
心経に無の字の多し若葉雨/三角節
花明り蛙もなかぬ心字池/川端茅舎
寿の字は紅梅の蕊のさま/野沢節子
定形の中の鬱の字瓢の字/鈴木鷹夫
鯵売の阿字と聞ゆる耳もがな/蓼太
蜩や永久にと書きし金字かも/林翔
蜩や指で字をかく膝の上/近藤一鴻
足跡を字にもよまれず閑居鳥/蕪村
八葉の上に念の字朴の花/村越化石
橘屋栄蔵字は曲生れし寒/矢島渚男
大文字草大の字を習得す/後藤夜半
切字響くは雁の渡るなり/齋藤愼爾
母の字に泪の二滴鳥渡る/小澤克己
霜柱俳句は切字響きけり/石田波郷
俳句例:41句目~
雲雀仰ぐ孤独や山姿は字國定/林桂
筑波路のS字坂上夾竹桃/柴太香子
雨の字は雨粒四つ草青む/木田千女
難字多き荷風日記や春の蝿/安西篤
葉桜の駅に字を書く洋傘の尖/誓子
春風や石に字を書く旅硯/正岡子規
逞く子の字はみ出す祝箸/羽田岳水
木簡に残る税の字雁帰る/佐藤サチ
朝顔や何処に死すとも八字髭/仁平勝
書きいそぐ偏の字や水温む/仙田洋子
竹筆のうすき夢の字谷崎忌/三宅芳枝
神官の立つて字を書く在祭/井上弘美
検眼のコの字ロの字や鳥雲に/林朋子
梅にほひ彫の字細き尼の墓/松田多朗
柏餅挙挙服膺の四字をふと/川崎展宏
盲春庭筆太の字の秋の聲/八木林之介
百ばかり年といふ字を初硯/斯波園女
字々の豆幹いろの賢治の書/吉田紫乃
字のそばに鉛筆ころげ夏休/橋本鶏二
字の何と陽炎立つや道標/松根東洋城
俳句例:61句目~
湖に脚をハの字に白鳥降る/高澤良一
んの字に膝抱く秋の女かな/小沢信男
病名に炎という字寒すばる/隈元拓夫
畳替丸を書くのも字の一つ/小林敏朗
教室に天という字の夏休み/対馬康子
トロ箱につの字に並び祭鱧/村松/堅
父の筆勢減ぜし刻字燕来ぬ/香西照雄
父の字はつるはし二本鰯雲/今岡直孝
字足らずのごと黄昏を秋の蝉/石寒太
賀状の字いと正しきを畏れけり/風生
一の字にあるは潮目や金盞花/森田峠
啄木のローマ字日記秋深し/行方克己
藤村の文の字細し鉄線花/秋山美知子
国道を雁字搦めの初荷ゆく/井出和幸
土用鰻うの字大きく紺暖簾/蕪木啓子
一の字に浮びし鯉も春の通夜/上村占
滝涼し那智の巫女字を習ふ/橋本鶏二
海峡は大きな切れ字鳥渡る/的野雅一
寺石に忍耐の二字達磨の忌/宮田祥子
寺通り字を美しく葛ざくら/有馬朗人
俳句例:81句目~
土筆野中の石碑字消えたり/正岡子規
月待てる提灯の字の招提寺/下村梅子
鳥雲に鉛筆舐めて字を濃くす/関成美
海と山十七字にハ餘りけり/正岡子規
乱るゝは風の当字や蘭の花/横井也有
山のへや霞一の字水くの字/正岡子規
墓の字につかふ長鋒夏わらび/上村占
五大力餅挙ぐ顔を困の字に/岩本清子
年玉に上の字を書く試筆哉/正岡子規
山小屋の七夕の字も鎮魂歌/福田蓼汀
鯉二つ二の字にゐたる朧にて/森澄雄
傲霜や黒き字を書く老の影/永田耕衣
働けり立秋の二字胸に彫り/相馬遷子
春風の辻堂めの字めの字哉/正岡子規
夏帽の白きをかぶり八字髯/正岡子規
萌の字に日も月もある刷初/平沢陽子
霾るや何も映さぬ心字池/穂坂日出子
夏落葉嫉妬と言ふ字女偏/植田みつ女
露涼し敷きたる如き吉字草/朝野白山
露の世に足尾の遺す足字銭/西本一都