俳句例:201句目~
虹唇の濡るるがごとく室の花/富安風生
螢に水吹いて唇さみしくす/鈴木真砂女
言う前にひらく唇すべりひゆ/池田澄子
雛の夜や串肉しごき唇濡らす/石川桂郎
雪焼けの唇割れて血がにじむ/大原雪山
露けさよ祈りの指を唇に触れ/山口誓子
風船を吹く唇うすし少女尼/柴田白葉女
颱風鬼吾が唇の朱を奪ふ/竹下しづの女
鯉のぼり吃音の唇あけしまま/松本照子
麦笛の甘みほのかにのこる唇/中村孝一
夏雲のひろごり風に唇ゆるむ/石橋辰之助
青梅をぶつつけ合ふや唇噛んで/川崎展宏
唇にラムネの壜のいかめしさ/相生垣瓜人
唇にさくら蕊降るひびきかな/鳥居美智子
空也上人唇をすぼめて寒に入る/仙田洋子
寒潮に沿ふマラソンの唇その眉/鈴木鷹夫
いちじくに唇似て逃げる新妻よ/大屋達治
唇として使ふ真昼のあやめかな/攝津幸彦
唇つけし泉息つくひまもなし/橋本美代子
唇のごとくつめたき夏蚕かな/大澤ひろし
俳句例:221句目~
唇あてて陽のぬくみある梨の肌/高井北杜
陶肌の雛の唇から嘘つぎつぎ/文挟夫佐恵
針創をつめたく唇にふれ癒やす/野澤節子
子を産まぬ八十八夜の唇づけす/松本恭子
唄ふ唇が夜空に老いて老いゆく世紀/林桂
春の雪たちまち唇の濡れてをり/仙田洋子
旱梅雨剥げし絵に生く裸婦の唇/雨宮抱星
お握りの海苔唇につく薄暑かな/中西舗土
身ごもりしうれひは唇をあをくせる/篠原
涼しからむ仏頭の唇盗みなば/金久美智子
説き終へて満ちける御ン唇涅槃仏/林昌華
渤海このするめをえさに鼻唇乖/安井浩司
くれなゐの頬のつめたさぞ唇づくる/篠原
言ひつのる唇うつくしや春の宵/日野草城
花摘むなら唇いろのスターチス/高澤良一
初雪のひとひら唇を吸ひにくる/岸田爾子
虹の唇冬野の神に見られけり/殿村菟絲子
冬薔薇を選るも中年唇渇く/鍵和田ゆう子
笹鳴に唇そらし鉄漿つける/長谷川かな女
冬薔薇を唇にくはへて誇りたる/仙田洋子
俳句例:241句目~
花びらの唇にあたりし固さかな/中西夕紀
みんみんのみんの呟き唇に合ふ/岡井省二
瓜を食ひ戯れ言二三の濡るる唇/原子公平
仏唇のいと濃き方へ瑠璃揚羽/小枝香穂女
紙ひひな唇を描かれてより白し/長谷川双
唇噛めばいよいよ草いきれ激し/鎌倉佐弓
寒牡丹濡るる唇もて見尽さん/河野多希女
一片の落花を手にし唇につけ/大場白水郎
春泥の子の血吾が唇もて覆ふ/長谷川秋子
富士烈風天水飲んで唇爽やか/加藤知世子
ラグビーや唇きつく噛む少女/折原あきの
メガホンの奥に唇みえ社会鍋/田川飛旅子
花あやめ殺してくれと母の唇/伊藤美也子
さくらんぼ雨滴もろとも唇に/赤松けい子
葛切の唇むらさきにすゝりけり/古舘曹人
唇をころげ落ちけり雛あられ/波多野爽波
そのゑくぼ吸ひもきえよと唇づくる/篠原
花菖蒲うつうつ雨を唇うつし/長谷川秋子
穴のやうに唇あけ歩む粉雪に/長谷川秋子
唇に砂漠いちまい畳まれたり/増田まさみ
俳句例:261句目~
唇耳そばだてて雪原を遠く見る/飯田龍太
夫の唇ほぐす春雷とどろけり/石田あき子
唇描くやさらさらと春過ぎむとす/鎌倉佐弓
初霜や軍歌めくものふと唇に/鍵和田ゆう子
成人の日ひかる唇イエスと言う/山口可久美
冬の屍のもつとも唇のやはらぎぬ/斉藤夏風
先立たる唇きりきりと噛みて寒/稲垣きくの
手花火を見てゐる唇の濡れてをり/鈴木貞雄
唇を濡らす泉やa//u/e/o/高澤晶子
トマト食ふ妊りし唇ためらはず/榛原アイ子
グラスの底に唇を沈めて椿の夜/長谷川秋子
笛吹くと唇しめらせるつちぐもり/石川文子
羽化見ており唇をひらける少年と/池田澄子
菊酒の花びら唇にあそばせて/佐々木とよ子
でんでら野唇に冷やりと雨の粒/八牧美喜子
花ほつほつ座像西行唇辺笑む/鍵和田ゆう子
たんぽぽの絮食みこぼす馬の唇/吉村ひさ志
すかんぽや唇にくはへて釘湿らせ/長谷川双
子持鮒死後に開けたる唇ならむ/加倉井秋を
唇のやうにすでに湿りて桜散る/長谷川秋子
俳句例:281句目~
こつそりと泳ぎて唇のむらさきに/品川鈴子
ここは信濃唇もて霧の灯を数ふ/加倉井秋を
くわんおんのお唇に酔ひぬ春の雪/三嶋隆英
唇のまわりの枯れてしまつた日/津沢マサ子
遺画像は青きくち唇まげ藁ぼつち/岡崎万寿
避暑の葡萄は唇盗みのためにある/松本恭子
野守濡れひらかぬ唇となりにけり/攝津幸彦
うすあかうほとりは春の唇死ねり/片山桃史
雄叫びのラガーの唇に血のにじむ/三村純也
雨の木賊唇とがらせば刈りやすし/長谷川双
蓬摘み死なばほほゑむ唇ならむ/河原枇杷男
柄をつんと唇に遊ばせさくらんぼ/千原叡子
風邪の額に唇つけむとす怖るゝな/岩田昌寿
唇に吸ひよせられし切り子猪口/菱田ます子
高熱の唇にほほづき鳴らすかな/上野さち子
桐の花唇をつぼめて落ちゆけり/安達みなみ
枇杷に唇あてをり格子は斜なす日/岩田昌寿
あかあかと唇塗る梅に負けぬやう/仙田洋子
唇むすびどほしの旅のかいつぶり/能村登四郎
蚊帳吊草唇にくはへぬ吾にもなく/加倉井秋を