俳句例:101句目～
応援の人文字を描く夏帽子/三村純也
夏暁の子供よ地に馬を描き/西東三鬼
夜の蟻迷へるものは弧を描く/草田男
椿一輪描きし遍路便りかな/岩切青桃
大鯰描くに力の抜きどころ/永末恵子
天の川児の描く夢の宇宙船/本多菊枝
天界へ跳んで白隠雪嶽描く/高澤良一
天空を行く汽車描かれ染卵/村田白峯
菱形に沼描きつづけ二月の死/上村占
太陽を必ず描く子山笑ふ/高田風人子
春興や大きく描きし達磨の絵/磯直道
春めきて写楽の描きし男かな/皆吉司
椿も描き遺作の中に牛の尻/古館曹人
万燈を芯より仰ぐ眉描きて/古舘曹人
病む友へ絵手紙描く春灯下/森井初枝
片栗よ夢の母描くペンとなれ/林昌華
中年の眉細く描く芥子の花/西谷剛周
枇杷描き枇杷羊羹の包み紙/高澤良一
子の描く菊戴は大きけれ/竹山佐和子
子の描く蟹の鋏のみな大き/伊東白楊
俳句例:121句目～
二羽の鳶円を描きて神迎/法本フミ女
花を描き根来寺縁起雲を描く/有働亨
火の山を火の色で描き青嵐/渡辺立男
人の世の様描かれて絵双六/高浜虚子
富士山の絵を描き覚え入学す/上野泰
横刎ねに描く神農の虎の口/大橋敦子
自画像は描かぬと決めて鰯雲/畠田天
似顔描き続けて画学生の夏/大橋敦子
描きかけの自画像と鶏頭/栗林一石路
涅槃図に小さき涙描かれず/菅原章風
六双の屏風に描く気魄かな/高浜虚子
左手で絵手紙描きぬ豆の花/信崎和葉
雪空に睡魔の描く大伽藍/野見山朱鳥
枯蔓の螺旋描けるところあり/上村占
金泥をもて描くべし豊の秋/県多須良
冬休船の見えざる海を描く/広瀬長雄
霾や古墳に描きし舟と馬/岡部六弥太
紅葉狩する女子共描きあり/高濱年尾
紅花の船出を描く屏風かな/小林松代
春空に虚子説法図描きけり/阿波野青畝
俳句例:141句目～
朝顔の双葉の鉢に描きある画/後藤夜半
うすずみをもて大寒の水を描く/辻桃子
えぞにうの花を心に描きけり/野村泊月
お花畑霧が消しては日が描く/福田蓼汀
春の鳥徽宗皇帝に描かれけり/尾崎迷堂
雛車とまづ伊勢丹が屋に描く/中村汀女
桜大樹紙継ぎ足して児等描く/永澄幸子
陽の沈む前の余白に何を描こう/原直子
こゑにして鳶の描ける初景色/齊藤美規
しんと秋眉を描くのは左から/倉良操代
その春着難波の芦を描きたる/下村梅子
その羽子は忘却曲線描きけり/櫂未知子
金泥に帯び描くことも冬安居/京極杜藻
水漬田に田螺が描く古代文字/滝谷/章
里芋の毛をていねいに描きあり/辻桃子
描き捨つ険しき貌の春の禽/相生垣瓜人
走馬燈文を地に描き跼み売る/福田蓼汀
旅景色描くパレット冬日溜め/脇田絹子
みなづきの何も描かぬ銀屏風/黒田杏子
むさしのの夕焼を描く父と祖父/皆吉司
俳句例:161句目～
桐描くには水彩に如くはなし/高澤良一
やはらかき鉛筆で描く芽吹山/梶井悦子
影までも描かれ壁画の馬に冬/有馬朗人
よき伴れとおれ皿に描く湖の/和知喜八
わが噴煙描き晩夏の髭伸ばす/中島斌雄
アトリエの父は裸身に雲を描く/皆吉司
向日葵と闘ふ如く描くなる/相生垣瓜人
蓬や描くとすれば今日の浪/吉本伊智朗
蒲公英に描きそへたる土筆哉/正岡子規
セザンヌの描きし色味春北風/新山郁子
葉とともに柿を描かん机かな/小澤碧童
母の忌の円描き重ね白蛾とぶ/原コウ子
パレットに藍冬枯の街描ける/山本歩禅
死はきらきらと飛の弧を描く/松本恭子
草描ける淡墨やがてすだくなり/渋谷道
思想展蒋氏の睫うすく描かれ/岸風三楼
七月や描く眉墨の細く濃く/野村津也子
万緑に塔を配して奈良を描く/山下美典
三月の筋書桃の大枝描き/長谷川かな女
丸二つ描きて乳房や雪もよひ/折井眞琴
俳句例:181句目～
息とめて雛の眉描くとの曇り/脇坂啓子
乾鮭を描くリアリズム明治とは/日原傳
色鳥に女かなしびの眉を描く/三橋鷹女
色淡き夏木描ける吾子いとし/中村汀女
何もなき冬海のみを描きたる/大橋敦子
充実やスケートが円描き続け/森田智子
円を描きまた円を描く火取虫/川口利夫
羅漢描き指いきいきと冬襖/秋元不死男
昼寝より覚めての絵を描く子/鈴木鷹夫
手にて描く巌ふたつとも滴れり/中田剛
冬海に無き繊月を描き加ふ/中戸川朝人
初凪や潮が描けるよろけ縞/樫村ひろ子
初日描けり二人子額を染めあひて/波郷
童女地に描く曲線桃ふふむ/軽部烏頭子
友禅描き梅雨百燭の畳の間/白澤よし子
四君子の梅を描きけり初便り/野村喜舟
短夜の汝が描きし樹々は立つ/加藤楸邨
秋晴のが描かれてゐるパイプ/有馬朗人
秋山路ヘツドライトは雨描く/林原耒井
睡蓮を描き思ひ出を描くごとし/大串章
