辻を使用した俳句

俳句例:201句目~

辻に来て夜空が広し一の酉/渡辺千枝子

伊勢辻の筍売りの地を濡らし/茂里正治

笹立てて嵯峨の辻々地蔵盆/鈴鹿野風呂

長安の辻や落葉もおちつかず/幸田露伴

降り立ちし鍵屋の辻の初時雨/菖蒲あや

除夜詣見知らぬ辻に出でにけり/有働亨

陽炎や簀の子日のもる辻談義/正岡子規

霧雨やほつかり明くる辻行燈/正岡子規

露の辻落葉松の空も十字なす/大島民郎

節季候の札の辻にて分れけり/正岡子規

綿虫に人さらひ来る村の辻/西嶋あさ子

魂送りの松明の束辻に売る/吉原田鶴子

麦秋や火の見も錆びて村の辻/大熊輝一

黄楊の小櫛さゝず寄りけり辻相撲/調古

土芳の忌辻から路地へ伊賀の風/広瀬二郎

夏野越ゆ草より低き辻地蔵/鍵和田ゆう子

大年のはりまや橋の辻に佇つ/鈴木真砂女

官許金澤青草辻近江町市場夏来/高橋睦郎

散り敷ける落葉は血色鍵屋辻/中津千恵子

木の実降る辻の手廻しオルゴール/堤京子

俳句例:221句目~

来し方も行方も闇の辻踊り/鍵和田ゆう子

茶屋ふたつ鍵屋の辻のうららかに/石川子

唄はれよ辻あれば輪に風の盆/尾亀清四郎

辻の雨市のあまりの苗木立つ/水原秋桜子

辻埋めて初金刀比羅の植木市/富岡掬池路

辻廻す山車の奈落を人知らず/出島かず江

町の辻に山みえている遅日かな/田中冬二

支那蕎麦の手招く灯あり霜の辻/石塚友二

秋暁やまづ辻馬車の摶たるる音/清水安奈

辻踊りふたたび闇へ消えゆけり/中尾杏子

辻ごとに比叡の見ゆる地蔵盆/山田ひろむ

身のなかの逢魔が辻の螢かな/河原枇杷男

おほかたは辻氏松尾氏注連作る/岩本菊江

ごくもんの八道の辻に春くれぬ/正岡子規

立冬をさつと雨降る四辻かな/蓬田紀枝子

辻に来て大きく回る佞武多かな/水野雅子

どの辻にも吾の佇ちゐて秋の暮/宗田安正

リラ冷や阿Qの辻を荷馬車来る/加藤耕子

闇の梅日頃の辻子にたもとほり/松岡青蘿

傅書鳩四ツ辻に舞へり東風日和/内田百間

俳句例:241句目~

僧あさましく野分の辻を曲り来る/原月舟

六道のごぜんたちばな辻をなす/滝澤一久

辻の火のまだ消えやらぬ霙かな/浜田酒堂

栗熟るる小布施の辻の市の神/岡田万壽美

六道の辻に来てゐる夜鳴蕎麦/奥/てるを

冬の暮辻楽士わがために弾く/八牧美喜子

額に隠れて画商が渡る聖夜の辻/伊丹公子

初夢の辻棲合つてしまひけり/片山由美子

同じ手を二度して勝ちぬ辻角力/井上井月

辻に湖見え凧の尾の吹きまろぶ/木村蕪城

鬼さん鬼さん辻の残雪陽の色に/川崎展宏

うそ寒や奈良井の水場辻ごとに/伊東宏晃

毛糸帽いぶかり見上ぐ辻の犬/水原秋桜子

麦星のひとつともりて辻楽士/永井由紀子

四ツ辻に旋風まひをり夜半の春/内藤吐天

四辻冱え英霊車つゞきなほつゞく/及川貞

辻に来て雪解の風を曲がりけり/佐々木六戈

刃ものとぎ辻より辻へ花むくげ/岩城のり子

辻で別れた姉が紅葉となっている/西川徹郎

みちづれの風と訣るる余花の辻/松島緋の衣

俳句例:261句目~

辻売のふぐのふくるる春しぐれ/中戸川朝人

日輪はうすれむかし尊き雪の辻/宇多喜代子

師を訪ふと辻もう一つあたたかし/桂樟蹊子

枯木の日移れど去らず辻説法/長谷川零餘子

辻神に黄なる日とどく晩稲刈/鍵和田ゆう子

天の川待てば死者くるこの辻も/河原枇杷男

海女たちに上総五十座の辻告知/加倉井秋を

おぼえある町なり辻に雪だるま/水原秋櫻子

木がらしや地びたに暮るゝ辻諷ひ/小林一茶

円寂に数珠屋の辻のしぐれけり/つじ加代子

綿虫の辻ならいくらでも待てさう/飯島晴子

柘榴割る鍵屋が辻の古き碑に/長谷川かな女

鰯売る芭蕉の辻は図絵にあり/長谷川かな女

鳥のほかなにも来はせぬ辻の春/宇多喜代子

辻飯に今宵どの餓鬼来ますらむ/山田みづえ

ギターほろと時雨やどりの辻楽師/桂樟蹊子

ゐのこづちサビエル立ちし街の辻/上野さち子

まくなぎやはせをの辻は凪ぎてをり/坂下優絵

血判も汚点や四方より辻冷ゆる/鍵和田ゆう子

辻風にこころざらつき端午の日/鍵和田ゆう子

俳句例:281句目~

ふと迷ふ来馴れし辻もおぼろなり/水原秋桜子

のうぜんの枝垂るる辻にさしかかり/高澤良一

とめどなく辻りはじめしヨットかな/三村純也

この辻やひとりは蝶となりつつも/河原枇杷男

辻マリアしぐれにともる誰が祈る/文挟夫佐恵

翡翠の店へ着いた辻馬車誰も降りぬ/伊丹公子

夜の辻のにほひてどこかプールあり/能村登四郎

スクールバス雪の辻にて彩ばらまく/中戸川朝人

死闘八ツ辻一つが活路や風冴ゆる/鍵和田ゆう子

正月や辻の仏も赤頭巾/一茶/文化十一年甲戊

六道の辻に金の売られけり/井上弘美「あをぞら」

辻諷凧も上ていたりけり/一茶/文化八年辛未

梟が笑ふ目つきや辻角力/一茶/文化十一年甲戊

辻風の砂にまぶれし小蝶哉/一茶/享和二年壬戌

曳かれる牛が辻でずつと見廻した秋空だ/河東碧梧桐

四辻や匂ひ吹きみつあやめの日/闌更「半化坊発句集」

辻馬車が来た日とおなじセンチメンタルホテル/伊丹公子