俳句例:101句目～
七月といふ晩年の空のあり/櫂未知子
晩年や秋の蛙がひとつ跳び/坂本謙二
井戸も亦晩年ならむ梅雨きのこ/林翔
晩年や空気で冷える夏の海/永田耕衣
晩年や触れて小春の力石/北見さとる
晩年や雪採れば餅近づきぬ/永田耕衣
冬の噴水白く勢ひて晩年へ/館岡沙緻
晩年や骨の音して籐の椅子/山下良三
刻むほかなき晩年の葱の量/楠本憲吉
晩年を火の色とせん飾焚く/坂井三輪
晩年を考へてゐる冬木立/中村菊一郎
晩年を薔薇に腐心の老大家/高澤良一
晩年を覗いて見よう葱の筒/永田耕衣
晩年を頼る妻ゐて糸瓜蒔く/小川玉泉
夏すでに陸封のわが晩年ぞ/三橋敏雄
更衣へ晩年の計ほどほどに/巌谷小波
月見草吾が晩年の胸に咲け/増田春恵
室の花晩年といふ檻の中/根本喜代子
木枯や晩年鶴のごと吹かれ/桑原視草
屠蘇酌みてまだ晩年の持時間/柊愁生
俳句例:121句目～
球入れの球晩年の日を数う/花谷和子
引き汐のごとき晩年秋袷/町田しげき
男の晩年/雲の中へ糸垂らす/穴井太
疾風怒濤の晩年もよし冬欅/倉橋羊村
登山靴履く晩年の句一念/小川原嘘帥
白線を辿ればふいに晩年に/森田智子
星恋の晩年という闇に立ち/津根元潮
瞑ればすでに晩年風と霜/上田五千石
秋晴や手間隙かけず晩年へ/藤田湘子
竹皮を脱ぐ晩年の青写真/石川美佐子
紅葉焚くわが晩年に見ゆるは何/畑稔
晩年さながら紅葉を貪りぬ/櫂未知子
鹿の晩年蝉声を坐して聴く/辻田克巳
縁はなし冬日珠なす晩年など/安住敦
花の雲抜く晩年の飛魄かな/永田耕衣
草露か螢かほのかなり晩年/森田智子
葉鶏頭母に晩年なかりけり/満田春日
蓑虫や句を晩年の計として/巌谷小波
蕗味噌の適ふ小器晩年や/文挾夫佐恵
薄氷も夢やそよそよ秘晩年/永田耕衣
俳句例:141句目～
遊び紐がよし甚平も晩年も/倉橋羊村
野鴉や晩年水の香にも酔ひ/三橋鷹女
金銀の夏は来にけり晩年祭/永田耕衣
隼人瓜晩年だんだん面白く/高澤良一
晩年にふるさとのなし夕芒/高橋沐石
雀隠れ晩年急ぐこともなし/和田祥子
雪の果晩年は娘に近く住み/肥田銀峰
晩年に視えくる沖の/藻の花よ/林桂
雲に心ひらく晩年冬木の芽/倉橋羊村
晩年のいま雪のとき山や川/清水径子
青春が晩年の子規芥子坊主/金子兜太
晩年のこの街が好き菊日和/林友次郎
晩年のなかりし父の冬帽子/関口謙太
晩年のなき源義の褞袍かな/増成栗人
晩年のほのかに見ゆる蒸鰈/池田秀水
晩年のわが常臥しや四月馬鹿/森澄雄
晩年の世阿弥判らず蚊遣香/鈴木鷹夫
晩年の倖せあるか痩せ氷柱/室岡純子
晩年の刻のゆるやかなづな粥/西村澪
晩年の夫婦なづなの花白し/篠崎圭介
俳句例:161句目～
晩年の如くに垂れて青糸瓜/高橋悦男
晩年の妻直角に秋刀切る/加倉井秋を
晩年の母に似てくる初鏡/松本サキ子
晩年の母の小振りの遍路鈴/品川鈴子
晩年の父に金のまぶしくて/黒田杏子
晩年の父母あかつきの山桜/飯田龍太
晩年の生きざまふっと烏瓜/河江麗子
晩年の痩身年をゆかしむる/長谷川双
晩年の眼鏡がくもる桐の花/松野忠弥
晩年の跫音さらさら更衣/古賀まり子
晩年の道行きどまる遠雪嶺/木村敏男
晩年の序の口にして新走り/高澤良一
晩年の骨カラカラと野分かな/中山雪
晩年は大輪が佳し菊根分/堀川由規子
晩年は背泳ぎのまま青すすき/遠藤煌
晩年といふは春きて夏くるや/清水径子
置き去りにされ晩年の痩海月/岸風三樓
このままの晩年でよし蝸牛/石田あさ子
晩年の秋麗ひと日づつたのし/矢成緑風
晩年は甘え上手に昼顔咲く/吉川みつ子
俳句例:181句目～
籾降らし降らし晩年泣かぬ父/齋藤愼爾
篝火に鵜の疲れくるわが晩年/國定義明
まつたなき晩年にあり虎落笛/神尾きく
晩年や黒穂の黒に指染まり/加倉井秋を
晩年の帰る地もなし枇杷の花/皆川白陀
晩年の母ひとり打つ冬田かな/堀/雅子
晩年の思ひにをりて挿木せり/森田公司
晩年やいずこも鳥の止り居る/永田耕衣
晩年の花とも思ふ花馬酔木/石垣みち代
モネ晩年の睡蓮の闇水中に/松田ひろむ
福寿草わが晩年の知己増えぬ/伊東宏晃
何処からが晩年甘納豆と冬日/鈴木鷹夫
晩年の景色に雨の赤のまま/今井杏太郎
晩年を曝せるごとく書を曝す/市川彳水
水飲んでゐる晩年の朧かげ/鷲谷七菜子
区切りなきものに晩年草青む/三浦光児
柿干して晩年のなほ無策なり/小島照子
南天結実よき晩年を妻よ得む/細川加賀
短日や晩年日記とびとびに/秋元不死男
晩年の景紅葉浴び黄葉焚く/小松崎爽青
