俳句例:101句目～
雪噛んできし北国の獅子頭/佐藤恵子
数の子を噛み数の子と思ひけり/柏禎
前頭葉噛るは誰ぞ青葉木菟/山田岳星
秋暑し姉妹ガム噛み尖り顎/香西照雄
難題の解けず南京豆を噛む/富田潮児
命名の筆噛みほぐす白木槿/高橋青矢
唐黍を噛む白日に歯音立て/大野林火
難民に似て競輪に柿噛る/百合山羽公
嘴合わぬ鴉や椿なら噛める/永田耕衣
噛みきつて味考ふる闇夜汁/小林輝子
門前の金柑男のやうに噛む/飯島晴子
鉈噛ますまたぎの柱山眠る/清野祥竹
噛みしめて竹輪にちから秋収/辻桃子
短日や砂を噛みゐる貝の腸/斎藤梅子
炎天の芯の暗さやくすり噛む/神蔵器
鈴虫の闇の欠伸を噛み殺す/河村正浩
林檎噛む音さくさくと子の世代/林翔
噛むといふ快楽を春の鮑かな/辻桃子
金網を鶏が噛みをる旱かな/延広禎一
年惜しむ瓦噛みたる鬼瓦/山田みづえ
俳句例:121句目～
野苺や噛めばみだらに舌動く/三谷昭
噛れしが思ひもすてず猫の声/炭太祇
噛んで見る秋海棠の莖赤き/正岡子規
年玉の真鱈とどきぬ雪を噛み/嫦蛾朗
猿梨を噛んで唇熱くなる/加藤知世子
酢昆布を噛みて一八美しき/岸本尚毅
夏帽の紐など噛むや余所心/星野麦人
猫柳風のひとひら甘噛みす/大沢輝一
遺品とや噛みあと粗き箱眼鏡/峰剛夫
夕虹にかりりと噛みし青林檎/滝春一
はたはたの大粒卵噛むさびしさ/林翔
歯固めに子は何を噛む砂嵐/赤尾恵以
爆音や雪を噛みゐて金髪児/小池文子
熱々のごはんを噛んで桜待つ/角光雄
大山山麓すかんぽ噛めば谺/金子兜太
煎餅を噛むわが音の秋の暮/加藤楸邨
煎豆をほつほつ噛めば春ちかし/楸邨
正月寒くやきとりの骨噛む/大橋裸木
晝顔の風に砂噛む家居かな/富田木歩
西安旅愁甘栗の甘き噛み/上田日差子
俳句例:141句目～
袋角憂く口中に草練り噛む/津田清子
小机に筆の穂を噛み一葉忌/川畑火川
少年を噛む歓喜あり塩蜻蛉/永田耕衣
尖閣湾春潮岩を噛みどほし/渡辺圭子
山で噛る林檎紅肌雪で磨く/福田蓼汀
山国の春日を噛みて鶏の冠/飯田蛇笏
山梨を噛めば口許風つどふ/細谷鳩舎
虎杖を噛んで父と子何話す/鷲見菊枝
海鼠噛む顔を四角に三角に/高澤良一
赤貝の紐を噛むなり神楽坂/佐川昭吉
虎杖を噛みつゝ島の道遠し/山田不染
煮干噛みしめて七夕迎へけり/原田喬
晴天の筵機は藁噛みしまま/今瀬剛一
幕末史心弱りのセロリ噛む/赤尾兜子
恋猫の足噛まれたる不首尾哉/射水庵
蓮如忌や濤が波噛む日本海/飯田和子
草噛めば風が吹くなり萍に/皆川白陀
芹噛んで風音に聴く化粧川/藤城茂生
芹噛んで吉祥天にまだ逢はず/原田喬
芹はりと噛めば現れ伊吹山/大石悦子
俳句例:161句目～
梨を噛む霧に見えざる湖を前/福田蓼汀
黒糖をほろと噛みけり雁渡し/小林篤子
鶏卵屋の噛み殺したる生あくび/仁平勝
鵜のやさしさ鵜匠の腰の蓑を噛む/誓子
鴬餅舌噛むといふ死もありぬ/桑原三郎
あぶな絵の女の噛みし洗ひ髪/伊藤通明
鬼の豆噛み興福寺抜けてゆく/吉田汀史
香の物音たてず噛む安居かな/森樵仙子
うららかや馬に噛まるる秣桶/野村喜舟
風荒き雪と林檎を噛みしむる/臼田亞浪
かみきりの机を噛めり敗戦日/白岩三郎
風ほろほろ木の根噛んだ墓だ/松本恭子
音暮れて牛は磨り噛む冬紅葉/中島斌男
鞭噛んでポニーも秋の眼せり/矢島渚男
青梅を噛めばひとりの秋津島/田中信克
露一と粒の光陰石を噛む根株/成田千空
霜柱わが足跡に噛み合へり/佐々木六戈
干鱈噛み家の中にも風吹けり/細川加賀
ごまめ噛みつゝ減反の話など/水野紀子
ごまめ噛んで齢一つを重ねけり/持田子
俳句例:181句目～
雪晴の朝餉の酢茎噛みにけり/日野草城
雪安居僧あるときは小指噛む/辻本青塔
干鱈噛んで一夜惑ひの四十代/北野民夫
平穏といふ新生姜噛んでをり/西村信男
しづけさに山蟻われを噛みにけり/遷子
雪の朝独リ干鮭を噛み得タリ/松尾芭蕉
海鞘噛んで牧に畑に雨が降る/飯田龍太
すかんぽを噛むや幼き村の川/蓮實淳夫
すかんぽを噛めば沖雲堡なす/友岡子郷
陽炎をよく噛んでゐる羊かな/山尾玉藻
その中に噛むこゑのあり虫時雨/中拓夫
たはむれに枕く籠枕髪噛みぬ/大石悦子
だんだんに心冷えゆく海鼠噛む/樋笠文
海女若し乳房かくして瓜噛る/中井大夢
酸葉噛み酒船石にもたれをり/内田典子
酢海鼠を噛みて右脳覚しけり/冨永/冨
なまこ噛み老若といふ蟠り/伊丹さち子
幽かなる防風の砂噛みにけり/矢島渚男
酒少々さらし鯨をよく噛んで/梅本豹太
辛口の地酒に噛めり田螺和/瀧澤伊代次
