俳句例:101句目～
楮蒸しきのふ終へたる大竃/坂内佳禰
初竃一国の火は絶やすまじ/西村逸郎
一の火は神に二の火は初竃/山口諌江
煤けては出雲への旅竃神/亀田虎童子
煤掃の一番竈燃えにけり/大橋櫻坡子
よせてある枯菊も焚き初竃/田村木国
かなしみに使ふ竃や春の露/宮下白泉
燈明を肩に歳来る土間竈/長谷川素逝
きちきちや産屋竃に残り灰/宮岡計次
しぐるるや蓑虫庵の石竃/下里美恵子
竈火のどろどろ燃えて初御空/原石鼎
竈火うつる雨の木膚や蝸牛/西山泊雲
藁焚けば灰によごるる竈馬かな/丈草
力粥炊く炉か雨に竃馬跳ね/河野南畦
海女の眼の沖をはなさず磯竈/下田稔
ちちろ鳴く芭蕉生家の土竃/金居欽一
竃火のまとへる暗さ閑古鳥/木村蕪城
竃猫貧富も知らず眠りをり/村山古郷
燃え立ちて竃火親し秋の暮/松村蒼石
ででむしや曲屋雨の竃口/深見けん二
俳句例:121句目～
のうれんの内は竈や春の雪/松瀬青々
竃猫落飾のこといまもある/内田哀而
火は神の賜ひしものに初竃/京極杜藻
干鮭の目へかがんだる竈馬かな/許六
張り残す窓に鳴き入る竈馬かな/素牛
みちのくの駅を拾つて七竃/宮/沢子
手に乗せて勝手の違ふ竃馬/高澤良一
松かさの火が廻りたる初竈/萩原麦草
はじめから眠るつもりの竈猫/土手敏
日に三度たく竃火や秋の風/橋本鶏二
禅寺のみがきあげたる初竈/安藤尚子
海荒れて机の上の竈馬かな/岸本尚毅
老いし婢を母の如くに初竃/川上明女
潮灼けの眉のうすさよ磯竃/中村丹井
一茶忌の句屑をくべよ庭竃/黒田杏子
七竃散るをこらへて真つ赤なり/林徹
一廻りしたき炭竃廻られず/茨木和生
七竃釧路駅裏並木なす/野見山ひふみ
松伐つて月炭竈に上りけり/正岡子規
二上に雪くる午後の竃口/つじ加代子
俳句例:141句目～
春来川染めて温泉宿の初竈/宮武寒々
炭竃のいたく黄色き煙吐く/鈴木花蓑
炭竃のほとりしづけき木立かな/蕪村
炭竃のみな煙りをり秋の雲/前田普羅
折りくべて桑の小枝や初竃/大竹孤悠
炭竃の上に真白に那須ケ岳/岡安迷子
炭竃の大きい方は使はれず/後藤夜半
炭竃の蓋をひらけば猿の声/榎本其角
丸まりて顔のなくなり竃猫/山田不染
炭竃へ径あり枯木中に見ゆ/高濱年尾
火の落ちし竃を廻る嫁ケ君/田中冬二
垣根なる臼に鶏鳴け庭竃/岩谷山梔子
炭竃や伽藍あるてふ大悲山/尾崎迷堂
六月の竃火の奥見つめをり/飯島晴子
宵闇や竃火に遠き蔵びさし/飯田蛇笏
竃猫妊りをりてふてぶてし/大橋敦子
竃馬跳ぶ母は厨の人なりき/本谷英基
初竃拝みて母の炊きはじむ/中西昭子
炭竈うあ雪のうへ行く夕けぶり/青蘿
山国の年端月なる竃火かな/飯田蛇笏
俳句例:161句目～
炭竈に手負の猪の倒れけり/野澤凡兆
初竈母の世に在る限りかも/宇咲冬男
炭竈のいたく黄色き煙吐く/鈴木花蓑
太き竃寒蛩ないて用ゐざる/高濱虚子
炭竈の上にくづるゝ桜かな/正岡子規
金輪際動く気はなし竃猫/岩崎寿美子
炭竈の大きい方は使はれず/後藤夜半
忽焉在り忽焉在らず竃猫/三宅清三郎
炭竈の奥より声す芹なづな/川崎展宏
炭竈の火に初螢うまれあふ/萩原麦草
炭竈の煙ならぬ雲流れけり/尾崎迷堂
寒波来と燃え渋るなる朝竈/石塚友二
初竃今森中のわが廬かな/松根東洋城
庭竃の辺りぬかるみ大根焚/由山滋子
初竈一灯の夜気はなれゐし/吉安師竹
炭竈や柴打ち寄せし花一木/大谷句佛
初竃一灯の夜気はなれゐし/吉安師竹
炭竈をめぐりて秋の胡蝶哉/正岡子規
豆殻を焚き初竈ゆれにけり/萩原麦草
能継いで竈火濃ゆき野菊かな/山本洋子
俳句例:181句目～
芦暮れて蜑が竃火ここかしこ/木村蕪城
鰯雲故郷の竃火いま燃ゆらん/金子兜太
ひややけく神おはしけり初竃/中村汀女
二すぢのこぼれ松葉や初竃/徳永夏川女
初竃燃えゐて誰か立てりける/高浜虚子
初竃祖先供養の火打ちかな/池上奈々子
塩焚の夜にこそおよべ初竃/佐野まもる
業ふかく生きねばならぬ初竃/鍵谷芳春
はなやぎて煙れる注連や竈神/飯田蛇笏
神の火をうつして焚きぬ初竃/池森葩蜂
もえかぬる竈の薪を組かへて/正岡子規
キヤンプ村竃の数の火吹竹/村田音誌子
ネロの業火石焼芋の竃に燃ゆ/西東三鬼
茄子の木を焚き了りたる初竃/萩原麦草
三月果つ竈の中に火が狂ひ/櫛原希伊子
下手の焚くひなの竈ぞ賑はしき/炭太祇
冬暖くく人焼く竈の鍵を手に/松村蒼石
初鶏は鳴きぬ竃は焚きつけぬ/笠井歎水
予言満つごと炭竃の火を蔵す/原ふじ広
古竃に火のあふれけり大師粥/小川鴻翔
