愛するに関連した俳句の例をまとめました。
愛するを含む俳句例
沈丁花鉢に愛せり堺すぢ/大魯
雪山の斑や近き者愛す/岸貞男
掌に愛して見する葡萄哉/太祇
文筆を愛す机に貝雛/高橋淡路女
手枕に身を愛す也おぼろ月/蕪村
船長の愛す菫の小鉢哉/正岡子規
渚に妻白浪に敵敵を愛す/隈治人
二もとの梅に遅速を愛す哉/蕪村
孤高とふ言葉愛せし冬畢る/林翔
親なれば子を鍾愛す遠蛙/安住敦
一枚の袷を愛し秋深し/林原耒井
一粒の葡萄の曇り愛しゐる/綾子
晩年は鯨を愛す日の帝/折笠美秋
新刊の冷たさ愛す冬旱/宮坂静生
青嵐愛して鍋を歪ませる/辻桃子
落第の少年愛す伝書鳩/福田蓼汀
何か追ふ心愛しや古暦/星野立子
雪中花唇を愛しく使ひけり/林桂
鴎愛し海の碧さに身を細り/篠原
焼酎の一銘柄を偏愛す/中島和昭
俳句例:21句目~
藻の終り青海亀を愛しけり/橋石
冬帽の下の薄き毛わが愛す/林翔
八月や老いの愛せし白襲/筑紫磐井
手織紬愛し着つづけ春浅し/及川貞
露の秋無名指を愛しけり/下村槐太
梅雨寒の朝の白粥命愛し/伊東宏晃
仔犬愛して夫淡々と年迎ふ/及川貞
愛しあふごとく無風の鯉幟/矢島恵
古雛の古きを愛す男かな/正岡子規
鷺鴦や即刻愛し即刻絶つ/永田耕衣
鬱然と妻を愛しぬ世苦の中/三谷昭
香水の壜の愁を愛しけり/後藤夜半
雷鳴の真只中で愛しあふ/仙田洋子
男老いて男を愛す葛の花/永田耕衣
春惜しむ心と別に命愛し/富安風生
少年が愛す窪地の秋の川/細見綾子
老幼を愛する如し冬の空/永田耕衣
花冷の小蟹愛しむ漢の掌/渡辺恭子
埋火の珠玉を愛す齢なる/福田蓼汀
金一鱗末枯の庭わが愛す/山口青邨
俳句例:41句目~
破れ傘生ふ裏山の道愛す/高澤良一
胸薄く来たりて菱の花愛す/岸田稚
振袖に肩上げ愛し十三詣/三澤律乃
わが齢わが愛しくて冬菫/富安風生
夫愛すはうれん草の紅愛す/岡本眸
妻愛す日数の中や鳥交る/清水基吉
羽抜鶏愛して猫を愛さざる/日原傳
寒菊や愛すともなき垣根かな/蕪村
寒靄や百葉箱と汝を愛す/攝津幸彦
貧乏や檻に縞馬愛されて/阿部完市
尺蠖の遅々寸々を愛すべし/塘柊風
雪雲を愛す時計の大振子/対馬康子
初渚ふみて齢を愛しけり/富安風生
秋灯かくも短き詩を愛し/寺井谷子
螢火を愛して口を開く人/永田耕衣
青櫟文鎮ほどに子を愛す/宮坂静生
幻の如き速さの鷹を愛す/倉田素香
愛すと告ぐ大夕立の真只中/台迪子
羽抜鶏愛して猫を愛さざる/日原傳
白にかくも愛しき眼あり/角川春樹
俳句例:61句目~
日本の椿を愛す異人かな/正岡子規
亀鳴くや母を愛する齢にて/岸田稚
日輪を愛す氷湖の真中に/宮津昭彦
葛の花人の世憎み人を愛し/本井英
愛されて放任されて葱坊主/岡本眸
愛されし白山霞み九山忌/南秋草子
蘭散て萬年青を愛す主哉/正岡子規
晩年の子を鍾愛す天瓜粉/日野草城
疵ありて小春の玉の愛しけれ/間石
枯園の青年独り鹿を愛す/井上美子
俳諧師青水無月の星愛す/岸風三樓
いわし雲村人谿を愛し老ゆ/有働亨
蛙を愛す蛙露石を愛す哉/正岡子規
桃いけて寸のこけしを愛す/中勘助
渡鳥誰か故郷を愛せざる/山口青邨
泣きながら少年耳を愛しけり/林桂
匕首の切先冬の来し愛す/岩城久治
元日の道ゆく一本道愛し/大熊輝一
秋海棠一本ありて雨を愛す/山口青邨
稲の花愛する人は受精せり/高屋窓秋
俳句例:81句目~
愛しさは草の穂に居る蝸牛/久米正雄
籐椅子を愛し身辺の句を愛す/安住敦
露の畑手洟かむ父を愛しめり/瀧春一
後苑の菊の乱れを愛しつゝ/高浜虚子
霜夜来し髪のしめりの愛しけれ/林火
綿木の仙骨となり父を愛す/寺井谷子
繕ひて古き紙衣を愛すかな/高浜虚子
廃船を冬の怒涛の愛し方/横田佐恵子
庭隅の愛しき花や藍の花/粟飯原幸子
聖燭祭工人ヨセフ我が愛す/西東三鬼
雨細き凡日蝸牛愛しけり/徳永山冬子
酸つぱくて苔桃愛し天近し/中島斌男
辛夷泛く夕空神を愛しまむ/堀口星眠
わが性を愛すほかなし下萌ゆる/林翔
贋物の壷を愛して風邪籠/小泉八重子
われ愛すわが予州松山の鮓/正岡子規
工場の愛しあう煙五月くる/寺田京子
半眼の鰐を愛し地方公務員/池田澄子
山吹の一重を愛し黄を愛し/重田順子
莟太く開かぬを愛す福壽草/正岡子規