俳句例:101句目～
蕪鮓送らんとして母の亡し/黒田杏子
異邦人箸を短く寿司を食む/和田郁子
約ありて来らず鮓の圧低し/正岡子規
鮒鮓をねかす月日の波の音/高見岳子
山北や鮎の鮓買ふ汽車の中/正岡子規
山吹の花はあかるし腐れ鮓/田中冬二
虚子を待つ松蕈鮓に酒二合/正岡子規
鱧鮓を膝に金比羅囃子かな/壺井久子
飯粒の臍もれ白し雀鮓/安斎桜カイ子
待ちかねて鮓の圧取る夕哉/正岡子規
鰰鮓一樽漬けて村を継ぐ/佐々木栄子
我老いて柿の葉鮓の物語/阿波野青畝
手づくりの芹鮓開き湯治客/坪根里杏
襲名の華やぎにをり穴子鮓/池田栄子
押鮓や一番神輿門を過ぐ/本多ちづ子
雛寿司を五彩に夫の誕生日/安野良子
鮒鮓の便りも遠き夏野かな/蕪村遺稿
旅僧よ鮓といはず参られよ/正岡子規
鰊鮓ほどよくなれて気比祭/山本麓潮
腐れ鮓大津の宿の遅日かな/田中冬二
俳句例:121句目～
早鮓や出舟を呼ばる人の声/正岡子規
鯉はねる音を真近に一夜鮓/森尾仁子
鮓腹に吉野の山河帰りなむ/皆吉爽雨
芭蕉忌や残んの菊に鮓寒し/松瀬青々
鮒鮓に昼を酒酌み閑雅なる/田中冬二
つゝましき暮しながらに祭鮓/山中晋
鮒鮓や瀬田の夕照三井の鐘/正岡子規
鮒鮓や湖水を雨の渡る見ゆ/田中冬二
東の市干鱈/鮓など賣る女/筑紫磐井
松園の絵雛更けゆく温め鮓/大島民郎
筍や鮓の五月となりにけり/正岡子規
はや鮓の蓋とる迄の唱和かな/炭太祇
鮓売も人におさるゝ祭かな/横井也有
よせ席の鮓古くさき匂ひ哉/正岡子規
楽屋団欒して鮓圧せり夏朧/久米正雄
此宿や飛瀑にうたす鮓の石/飯田蛇笏
海凍る国に鮭鮓甘きかな/河東碧梧桐
われ愛すわが予州松山の鮓/正岡子規
濤声に簀戸堪へてあり鮓の桶/原石鼎
通し土間奥を灯せる鮒鮓屋/田中英子
俳句例:141句目～
鮒鮓やたずねて空気濃き入江/澁谷道
鮒鮓の桶のゆるびも十二月/草間時彦
燕とび喪服の婦人鮓購へり/宮武寒々
鮓切るや主客五人に違ふ皿/前田普羅
一夜鮓廬山を横に眺めけり/松瀬青々
鮎鮓や吉野下りて六田の宿/吉田冬葉
百韻の巻完うして鮓なれたり/森鴎外
砧うてば破れ了りぬ鮓の石/千家元麿
秋祭終の鮨つけ母逝けり/鈴木早通甲
紀の国のお頭つきの秋刀鮨/赤松郁代
鮓一つつまんで神楽面つける/松本旭
蒸鮨の浪速の湯気を雑踏に/藤村克明
諸子鮨八荒すぎし比良の相/水野好枝
鮓の石金輪際に据ゑにけり/前田普羅
遊学の子とお別れの鮨の宿/吉田きみ
釣瓶鮨ありと聞き来し町暑し/森田峠
世阿弥忌の乾びはじめし姿鮓/辻桃子
鮓の圧取れば小笹に風渡る/正岡子規
鮓の句を題す鮓屋の団扇哉/正岡子規
鮎鮨や吉野の川は水痩せて/佐藤鬼房
俳句例:161句目～
飯桶を伏せて鮎鮓休みの日/後藤夜半
鮎鮨や山を幾重にわが母郷/近藤一鴻
鮒鮨の桶の封切る春まつり/羽田岳水
鮒鮨の譜代伝はる重石かな/橋本鶏二
今少しなれぬを鮓の富貴哉/高井几董
蒸鮓に立てゝ寒さや膳の脚/増田龍雨
鮒鮨や槍屋と云へる古き宿/田中冬二
鮒鮨や瀬田の夕照三井の鐘/正岡子規
蒸鮓の浪速の湯気を雑踏に/藤村克明
蒸鮓や新派観にゆく話など/草間時彦
鮓のれん尻切蜻蛉来て止る/萩原麦草
鮨にぎる手がガラス越し春霰/桂信子
鮨を食うまで数々の武勇伝/田浪富布
鮨屋へのカレーの出前油照/山口恵子
鮨桶の中が真赤や揚雲雀/波多野爽波
鮓つけて同郷人を集めけり/正岡子規
天皇誕生日未明に鮨を匂はしめ/林翔
鱒鮨や火山の死活ならべ見る/菅裸馬
屋台鮓もすゑ早やに帰る河燕/久米正雄
山の家や留守に雲起る鮓の石/正岡子規
俳句例:181句目～
山女鮓汽車狩勝にかかりけり/田村木国
川床や法師の中を鮓運ぶ/長谷川零餘子
抱いて来て紫雲と題す鮓の石/中川四明
拳銃をさげ鮓買つてゐる巡査/田口恵子
月蝕や笹鮓のもう熟るるころ/山本右近
濱びさし松葉散り居り鮓の桶/幸田露伴
炉のはぜる音おほどかに蕪鮓/吉田朱鷺
熟鮓に声つよき鳥過ぎにけり/関戸靖子
燦として春の花ありちらし鮓/尾崎紅葉
琴やめて殿へ使ひのすもじ哉/正岡子規
碧梧桐の卷鮓虚子の柚味噌哉/正岡子規
笋の鮓を啼き出せほととぎす/内藤丈草
笹解けば真白き米や鮎の鮓/鈴鹿野風呂
精進につかへさうなり鮎の鮨/正岡子規
紅葉せり柿の葉鮓の柿の葉も/長谷川櫂
縁日の灯の中にある鮓屋かな/島田青峰
若葉かげ水冷やかに鮓を圧す/田中冬二
落ちし雷を盥に伏せて鮓の石/夏目漱石
蒸鮓を少しづつ食べ伏見なり/山西雅子
蟹鮓が歯にしみてゐる日本海/鈴木鷹夫
