俳句例:201句目~
魂迎へ故郷失ひゐたりけり/米沢吾亦紅
鯉ほどの唐黍をもぎ故郷なり/成田千空
鰯雲故郷の竃火いま燃ゆらん/金子兜太
さつま汁妻と故郷を異にして/右城暮石
鳥の巣や既に故郷の路にあり/石井露月
鳥居出て故郷のごとし穂麦風/香西照雄
麦藁の上に憩ひて故郷かな/池内たけし
そらまめの莢の猛々しく故郷/櫂未知子
ちちははの在せし故郷桐の花/大塚和子
つくつくと故郷萬里の年の暮/正岡子規
としの雲故郷に居ても物ぞ旅/広瀬惟然
どこをもて故郷となさむ朧月/中村苑子
なつかしき父の故郷月もよし/高浜年尾
むべ熟す母故郷に永あそび/近藤馬込子
もう訪はぬ故郷と思ふ雁渡し/西川五郎
もう降りることなき故郷麦青む/橋本紅
わが故郷藪漕ぎに次ぐ藪を漕ぎ/穴井太
七種や故郷遠からず近からず/中村苑子
事なき日故郷の雪を懐ひけり/会津八一
二荒嶺に秋雪父母の無き故郷/加藤親夫
俳句例:221句目~
人の世を故郷とせむ楸邨忌/小檜山繁子
今住むは曽祖母の故郷青葉木菟/豊田晃
傾城に鳴くは故郷の雁ならん/夏目漱石
冬山の深いところに棲む故郷/十河宣洋
原野はわが心の故郷榛の花/金箱戈止夫
双手浸す故郷の水や蝉の声/佐野青陽人
国なまり故郷千里の風かをる/正岡子規
夕凪や人は故郷を捨てて佇つ/小澤克己
大寒の一戸もかくれなき故郷/飯田龍太
干し干瓢故郷の山河ひらひらす/島みえ
故郷なり終夜群れをる誘蛾燈/江里昭彦
故郷につながれている蟻地獄/川端妙子
故郷に一人残りて展墓かな/神田美代子
故郷に住みて無名や梅雨の月/相馬遷子
故郷に墓のみ待てり枇杷の花/福田蓼汀
故郷の便り一行さくらんぼ/望月由紀子
故郷の大根うまき亥の子かな/正岡子規
故郷の家大きく貧し落葉積む/松本澄江
故郷の山しづかなる師走かな/吉田冬葉
故郷の山にしたしむ相撲かな/吉田冬葉
俳句例:241句目~
故郷の棚田の荒れて水鶏鳴く/高橋正彦
故郷の海見下して春菜摘む/川村ひろし
故郷の畑に散りけり芥子の花/正岡子規
故郷の目に見えてたゞ桜散る/正岡子規
故郷の闇あをあをと夜鷹鳴く/恩田洋子
故郷やいたはりて剥く桃の肌/佐野美智
故郷やどちらを見ても山笑ふ/正岡子規
峠から故郷に来し紅葉かな/稲垣暁星子
故郷を白くしたるは雪女郎/稲畑廣太郎
故郷喪失洗い髪のまま寝ては/対馬康子
故郷遠く一番星は蜘蛛の囲に/今瀬剛一
故郷遠し線路の上の青ガエル/寺山修司
故郷離れざるものわれと寒鴉/矢島渚男
新聞で見るや故郷の初しぐれ/正岡子規
旅寐九年故郷の月ぞあり難き/正岡子規
日本が故郷栗の林に栗満ちて/阿部完市
春の窓ふいて故郷に別れを告ぐ/大高翔
春山を越えて土減る故郷かな/三橋敏雄
春帽子畳に投げて故郷かな/佐藤さよ子
春服や親達にのみ故郷あり/中村草田男
俳句例:261句目~
春蘭や株ごとに持つ野の故郷/遠藤はつ
晩稲田の色濃き雨に故郷あり/宮津昭彦
朝市や故郷の青梅選び買ふ/小泉はつゑ
柳葉焼く学徒の唄に故郷あり/桂樟蹊子
柳葉焼く学徒や唄に故郷あり/桂樟蹊子
柿食うて移民に遠き故郷あり/目黒白水
桃ひらく故郷千代紙より稚く/植村通草
梨むくや故郷をあとに舟下る/飯田蛇笏
母ありてこそ故郷の盆をしに/豊田長世
母逝きてより初凪の故郷見ず/柏田洋征
母遺し雪降りかくす故郷発つ/福田蓼汀
法師子の故郷かたる焚火かな/伊藤虚舟
洗ひ顔の河砂利故郷の柿若葉/香西照雄
流あれば故郷めけよと柳挿す/佐藤念腹
港で編む毛糸続きは故郷で編む/大串章
父の日や夫に父あり故郷あり/小坂京子
父母と戻る故郷ながら秋の星/中島月笠
畑より西瓜貰ふも故郷かな/中田多喜子
白朮火やふと故郷の炉のにほひ/藤崎実
眉ひらく故郷三十二度とけふ/石塚友二
俳句例:281句目~
秋十年却って江戸を指す故郷/松尾芭蕉
誰彼に逢うて蓮の実とぶ故郷/伊藤京子
線路沿ひ枯れて故郷を遠くせり/大串章
草木瓜や故郷のごとき療養所/石田波郷
草餅や故郷出し友の噂もなし/寺山修司
荷ずれ傷つきて故郷の梨届く/前橋春菜
菅原葭原馬は故郷の青墓なり/阿部完市
葛の花次第にかなし故郷のうた/知世子
葱坊主どこふり向きても故郷/寺山修司
藍刈やこゝも故郷に似たる哉/正岡子規
藺田青き師の故郷の忌に参ず/伊東宏晃
蚊帳吊し中に故郷の夜のあり/小林景峰
蚯蚓鳴き故郷の夜道今も同じ/福田蓼汀
蹴り伏せて野菊水色なる故郷/永田耕衣
迎春花故郷恋しくありし日々/三木朱城
重心を低くして故郷にいる/一井真理子
長男がまもる故郷の餅届く/早乙女成子
雲の峰故郷のかたに立つ日哉/会津八一
雲海の高さに目覚め故郷たり/竹内秋暮
雲青嶺母あるかぎりわが故郷/福永耕二