傷を使用した俳句

俳句例:101句目~

遅き日の安宅の関の松の傷/神尾季羊

釣針の傷のふさがる春の鮒/山本紫黄

隆起せる傷跡撫づる寒の入/高澤良一

すさまじや柱に残る刀傷/五十島典子

雨のごとき映像の傷敗戦忌/木本陽一

雪折れの生傷癒す薄日かな/増田一灯

雲を嘲い濤の奈落で傷癒える/隈治人

女生徒の花傷兵の辺に赤き/細谷源二

雹の傷穂麦に白し没日冷え/大熊輝一

霜の菊傷つきし如膝重し/水原秋桜子

ただ寒い川が傷兵の眼に奔る/三谷昭

戦傷兵うつる卓鈴夏逝けり/宮武寒々

流されて雛の傷のなほふかし/原和子

如月や子規の机のうすき傷/山本洋子

威銃ひびきて何も傷つかず/工藤克巳

霜柱踏めば傷つきさうな靴/蘆田富代

青空に無数の傷や曼珠沙華/藤岡筑邨

水傷に好けん水灸五月雨に/内田百間

青簾やんはり庭の傷かくす/松本益子

青蜜柑個々颱風の傷を持つ/岩根冬青

俳句例:121句目~

風のなか傷の鴨だけがみえる/澁谷道

気まさりの東媼と傷ぐすり/三橋敏雄

地震の傷深き石仏冬ざるる/坂西千代

婚指環傷つき易しスキー行/品川鈴子

駒ヶ岳太刀傷のごと雪残る/山田春生

ももいろの一生傷も冴返る/辻田克巳

母の日や身体髪膚傷だらけ/村上妙子

籠の鮎鼻に傷ある二匹のみ/茨木和生

戦傷兵外套の腕垂らしたり/加藤楸邨

鰯雲こころの傷は誰も持つ/伊東白楊

桃の肌傷つき易し愛でて病む/早崎明

栗の毬心いつしか傷だらけ/品川鈴子

鵙鳴くや傷口に貼る血止草/白井爽風

子の声の傷無き若さ敗戦日/岡田貞峰

麦笛や傷痕友の頬に消えず/原田種茅

柏餅傷なき肌を見せにけり/岩田由美

子の胸の傷の五寸に菊の影/鈴木鷹夫

ラグビーの傷を頬にし薬喰/亀井糸游

戦傷兵征けり薄暑の映画街/宮武寒々

松葉杖傷兵銃のごとく擬す/横山白虹

俳句例:141句目~

宮入りの傷だらけなる御柱/棚山波朗

下萌を傷つけ老婆薪割れり/松村蒼石

九年母や土傷つくる馬の蹄/山口誓子

予備校の机の傷へ入学す/田川飛旅子

二月うらゝ傷兵鴎より白し/渡邊水巴

人さながら葉桜の幹傷多く/大井雅人

俎の傷の無数よ独活きざむ/有馬籌子

俎板を傷つけて割る冬林檎/今瀬剛一

松伐つて青嶺は傷の深々と/青木重行

傷あらぬ雪原に顔埋めたし/能村研三

手の傷も暮しの仲間雪青し/金子兜太

斧傷の一木に春来つつあり/友岡子郷

傷つきし心かくされ秋袷/片岡片々子

寝返れば傷口ひくと夜の秋/高澤良一

傷つきし馬に雪降る父の谷/大井雅人

傷つきし鯉に影して百日紅/澤村昭代

少年にブーメラン傷冬の雨/甲州千草

傷つきて楽しむもわれ秋桜/仙田洋子

朝市に鵜傷の鮎の並びけり/小林葭竹

傷つける獣のごとく三尺寝/岡田貞峰

俳句例:161句目~

月光帯びてあらわれ胸の傷/高澤晶子

月光の届かぬ傷の深さかな/吉野昭子

傷のごと山の額に残る雪/松本たかし

傷の指しづかに疼む秋の蝶/中島斌雄

傷ひとつなき邯鄲の骸かな/岸本尚毅

月まつる傷あと多き机かな/椎名書子

傷もまたかく育ちつゝ大夏木/上野泰

曼珠沙華わが満身に罪の傷/木下夕爾

暑に曝す少年の日の隠し傷/深谷雄大

工夫暑し古き枕木傷見せて/大井雅人

傷兵と子に噴泉の水は涸れ/岸風三楼

傷兵にヒマラヤ杉の天さむざむ/白虹

傷兵の妻らし子負ひ秋の雨/高濱年尾

昼月に傷あとあまた上り簗/鷹羽狩行

傷兵の食膳にふれ温室の花/横山白虹

掻傷の燦爛として會陽かな/塚本邦雄

傷口にあつまる鼓動梨の花/藤井淑子

傷口にひかり集める花の雨/五島高資

傷口も半年を経て枯葉いろ/高澤良一

傷心の外套といふ重きもの/桜木残花

俳句例:181句目~

傷心の彼の来てゐる秋の水/松山足羽

傷心は映さぬおぼろ夜の鏡/山田弘子

傷心を抱きて歩む花の道/雨宮とき子

傷心を散らすすべなし初嵐/福田蓼汀

彼岸花傷つきやすき空の紺/菖蒲あや

復活祭傷口なめて犬ねむる/菖蒲あや

鼬傷片目に受けし緋鯉かな/茨木和生

傷舐めて今も幼き冬の空/千代田葛彦

冬の山傷の如くに鉄路あり/柴原保佳

接木せり傷を舐めあう間柄/武田和郎

春の昼生傷をもち横たわる/森田智子

星夜毎傷つきあへり凍豆腐/倉石永夫

応仁の矢傷や梅雨の太柱/殿村莵絲子

初桜勝御輿とて深傷負ひ/石黒ナツ子

初蝉や見えねど深き戦傷痕/藤田湘子

剃刀で黒子傷つけ酷寒へ/田川飛旅子

創傷の抜糸を仕事始めとす/有泉七種

日輪に傷なし囮鳴いてをり/岩永佐保

掌に傷あり舟虫の岩へ寄る/金子兜太

向日葵や傷つきやすき地獄耳/仁平勝