俳句例:101句目～
父死して厠の寒さ残しけり/有働亨
冬風につるして乏し厠紙/飯田蛇笏
厠へ仏の足もとを通る/栗林一石路
初盆や厠にも吊る絵提灯/井上智子
夜々白く厠の月のありにけり/篠原
仮厠にて付けて来し草虱/茨木和生
厠より日鼻を晒す秋の風/小林康治
窓の向き厠を月見處かな/正岡子規
焼嗅し厠へ雨のおかめ笹/石川桂郎
人の肩借りて厠や水中り/森川暁水
秋行くや厠を出でゝ笹の上/齋藤玄
紋のごと寒の厠に土足跡/大熊輝一
武装して猟師厠を出で来る/飛旅子
橋もとや厠のそばの枯柳/正岡子規
冬ごもり厠の壁に処世訓/中神洋子
差掛に厠しつらへ春子山/斉藤美規
半夏生厠きれいな小半日/中山純子
卒業子厠をいでて方違へ/長谷川双
月の中の厠の中の嚏かな/野村喜舟
山荘の遠き厠や夜の秋/五十嵐播水
俳句例:121句目～
雛の家厠黄色き夕日さす/茨木和生
露月夜厠へ吾子の夢歩き/荒井正隆
風蘭も杉戸も寂びて上厠/県越二郎
高山や厠かくしに実南天/岡澤康司
厠かとおもへば納戸麦の秋/辻桃子
厠から寒肥汲んで古柘榴/滝井孝作
廊長き村の厠や枯木星/西牟田秀紀
麦秋の厠に白き頭巾かな/攝津幸彦
うすうすの二十三夜の厠窓/後藤寿美
どこよりも厠の温し大試験/国見敏子
どぜう屋の天保以来の厠かな/天谷敦
のどけかり残りし元を厠賃/仲安俊雄
ふるさとの春暁にある厠かな/草田男
まろび寐を跨ぎ春夕の厠ヘ/下村槐太
万緑の谿へせり出す厠かな/近藤一鴻
三伏の香焚きこめし奥厠/つじ加代子
五月雨や野厠出づる蓑の人/野村泊月
初暦厠にもあり死ぬ日あり/竹廣梨影
厠から応と声あり神楽の夜/神尾季羊
厠にも清水ながるる坊泊り/鷹羽狩行
俳句例:141句目～
厠にも鍬形虫の死んでゐし/茨木和生
厠の扉叩く子がゐて冬の月/松村蒼石
厠もる誰かのくさめ杉の花/鈴木鷹夫
厠より山々が見え冬ぬくし/藤岡筑邨
厠より川霧見るも湯治かな/鈴木鷹夫
厠より楢山見ゆる初音かな/青木重行
厠出て雨戸あくれば冬の月/正岡子規
寄せて居る厠廊下の十夜婆/河野静雲
厠紙辛夷明りに減りゆけり/長谷川双
報恩講厠の草履はきしまま/大西尚子
夜更けては厠洗へる裸かな/石塚友二
夜長さの厠三たびよ避難宿/近藤一鴻
大き帆船厠の窓に月ひと夜/金子兜太
大船に厠のありて千鳥かな/尾崎迷堂
天辺のやや吹雪きゐる厠窓/橋本榮治
女郎花關屋の厠やつれけり/正岡子規
安居寺厠草履のうすべつた/高澤良一
客あらば使ふ厠や秋の寺/五十嵐播水
時の日の正刻に入る厠かな/藤田湘子
山を見る厠の窓や今朝の秋/会津八一
俳句例:161句目～
山柴に木瓜咲く杣の厠かな/石原舟月
年の瀬の厠を洗ふ恋捨てゝ/小林康治
庭の雪見るや厠の行き戻り/正岡子規
放浪の厠にて聴く初鶏よ/堀井春一郎
料理屋の厠うつくし八重桜/正岡子規
旅籠屋の厠に鹿を聞く夜哉/正岡子規
明家や廁のかげの石蕗の花/正岡子規
明易の足を照らして厠かな/如月真菜
春日照る厠一戸も能登瓦/上田五千石
春暁の啄木鳥きゝつ厠かな/西山泊雲
松の雪見るや厠の行き戻り/正岡子規
梅落とす厠の屋根の騒ぎかな/辻桃子
歯朶活けて年入れ替る坊厠/高澤良一
水仙を活けて湯宿の木の厠/辻田克巳
法華寺の厠正しき暑さかな/攝津幸彦
深山霧厠にたまる無月かな/栗生純夫
炎曇いまわが家は厠のみ涼し/桂信子
目白鳴く厠つづきの家の中/飯田龍太
盲女来て野中の厠で瞠かん/安井浩司
短夜の厠に跼む父に侍す/田川飛旅子
俳句例:181句目～
石に反る厠草履や初比叡/波多野爽波
石灰をまいて夏めく厠かな/富田潮児
禅寺の厠手ごわき蚊の残る/土肥幸弘
立冬や音はねかへる厠下駄/大熊輝一
竹伐りにほどよき鶏鳴厠でて/中田剛
竹秋の厠明るき病起かな/島村元句集
竹聴いて居る春寒の厠かな/尾崎紅葉
総紅葉厠へ闇を追ひ籠めて/香西照雄
花曇をんなの厠混み合へり/佐藤洋子
藪柑子厠ごとにも作法あり/上野一孝
蠅遊ぶ厠の花を替へにけり/中島月笠
輪飾を掛け余り来て厠神/鈴鹿野風呂
遠鵙のこれの厠を覗くなり/石川桂郎
降る雪や厠が近くなりにけり/仁平勝
除夜の鐘父が厠へ足摺りて/皆川白陀
ペーパーが霧に湿れる外厠/品川鈴子
山百合やもの日に使ふ外厠/青木重行
青麦や軋る厠は舟さながら/友岡子郷
永遠にさそはれてゐる外厠/攝津幸彦
馬追に度肝抜かれし厠かな/市堀玉宗
