俳句例:201句目～
望郷歌身投げの崎に鴎群れ/江里昭彦
木枯や砂の消しゆく鴎の死/橋本榮治
木賊の日澄めり鴎の翼の下/木村蕪城
松納めはぐれ鴎の田に来たり/中拓夫
柱時計のなかの夕焼鴎の冬/中島斌雄
梅雨の航連れ添う鴎宜候と/高澤良一
歩道橋くぐる港の冬かもめ/大島民郎
数へ日の蜑を弔ふ冬かもめ/井上論天
水底は卯月明かりや鴎の死/中村苑子
永遠に中止となりぬ鴎かな/攝津幸彦
浜垣に鴎しけとぶ霰かな/楠目橙黄子
涅槃会のこゑの湖とぶゆり鴎/森澄雄
熔接の火走るを見よや冬鴎/佐藤鬼房
町なかに鴎のあそぶ彼岸かな/安住敦
母の忌や河口に数の冬鴎/八木林之介
白一途もて舞ふ冬の鴎かな/池田秀水
秋風や汚れて白きかもめ丸/遠藤梧逸
空と海の往復書簡夏かもめ/都筑智子
翁忌の羽音のつよき鴎かな/橋本榮治
翅たてゝ鴎の乗りし春の浪/鈴木花蓑
俳句例:221句目～
あるときは春潮の鴎眞一文字/飯田蛇笏
茅花の穂千の鴎となりにけり/西川織子
鴎鳴きぬ朝顔に滋き雨となり/久米正雄
鴎鳴き岬の四五戸は冬仕度/古賀まり子
鹿垣の檜原がかりは常陰かも/下村槐太
桟橋の先ぷっつりと冬かもめ/赤塚五行
かもめ呼ぶ少年とわが間薄暑/池田澄子
春潮に身ををどらせし鴎かな/伊藤清子
かもめ来る夕立あとの桟橋に/原島悦子
千両か万両か百両かも知れず/星野立子
虚室のかなた白尽し飛ぶ冬鴎/赤尾兜子
波乗りの鴎のむかし渡海僧/伊丹三樹彦
木枯に乗りて鴎となりにけり/草間時彦
裏富士は鴎を知らず魂まつり/三橋敏雄
冬鴎窓の景のみ吾にかかはる/木村蕪城
水呑んでよろめく鳥は百合鴎/岩田由美
なはしろに鴎追るゝ磯田かな/加舎白雄
なほ北へ行く船の白冬かもめ/赤塚五行
はわはわとクレーン休日の鴎は/毛呂篤
まぐろ船まひ飛ぶ鴎率て帰る/白川朝帆
俳句例:241句目～
冬鴎生涯拱手して立つ船台/米沢吾亦紅
朝はじまる海へ突込む鴎の死/金子兜太
をかしかろ名利のわれを鴛鴎/広瀬惟然
冬鴎海せまくする起重機船/内藤千鶴子
百丈の帯を解きたる百合鴎/古賀まり子
浮鴎たるまま干潟なせるまま/佐藤鬼房
海たかく街見通しに冬かもめ/飯田蛇笏
冬鴎乗りゆく背波背波の尖/鷲谷七菜子
一睡のゆめに磯長の春かもめ/高澤良一
雪の日の鴎がとぶや茅場町/大場白水郎
雪の日の鴎飛ぶなり茅場町/大場白水郎
水練の人や溺れし飛ぶ鴎/安斎桜カイ子
春服や武家町ふかく鴎来る/大峯あきら
春山のわれらを越ゆる鴎かな/佐野良太
雪中に白したたらす鴎の死/宇多喜代子
雪晴間鴎は低く波に触れず/鈴木真砂女
冬鴎どこへ飛んでも声落す/新谷ひろし
春光や鴎のつばさを風に耐へ/高濱年尾
風といて音なき我に冬かもめ/玖保律子
氷壁のおのがこだまの中に鴎/古館曹人
俳句例:261句目～
異人墓に冬の使ひの鴎来る/上田日差子
冬鴎このまま暮るること怖し/坂間晴子
食器冷え眩暈のごとく鴎ふゆ/中嶋秀子
春あけぼの磯の鴎が餌をねだる/樋笠文
水寒く寝入りかねたる鴎かな/松尾芭蕉
冬鴎いつのころより遠目ぐせ/菖蒲あや
白壁の街に売らんと鴎鳴かす/山中葛子
冬霧や漁船離れぬ群かもめ/葉狩てる子
冬芝にシアトルの鴎遊びをり/高濱年尾
冬浪のひかり鴎となりてたつ/桑原志朗
百合鴎少年をさし出しにゆく/飯島晴子
日に駕つて海立つ春の鴎かな/幸田露伴
百合鴎浜より翔ちて伊勢の方/高澤良一
海士の家の鴎にしらむ夕べ哉/与謝蕪村
冬かもめ都へわたる眼鏡橋/柴田白葉女
百合鴎道中は手を愛しめる/宇多喜代子
冬かもめ波の牙のみ暮色溜め/河野南畦
惜春や波間の鴎一トならび/五十嵐播水
冬かもめ汚れる印刷工の眼に/中山純子
海行かば鴎の抜羽額に享く/八木三日女
俳句例:281句目～
眼が裂けてをる炎天の鴎かな/石田勝彦
水派にたまる鴎や冬晴るゝ/金尾梅の門
鴎かけて砂丘の古墳春暮るる/飯田蛇笏
秋の暮鴎は高く日を負へり/米沢吾亦紅
秋晴れて鴎も眉毛あるごとし/川端茅舎
港まで追ひ来る鴎鰤大漁/梅島/くにお
川に来て昼をすなどる冬鴎/上田五千石
汲んでゐる鰊を盗む鴎かな/石田雨圃子
鴎の目ついと流れて安房小春/高澤良一
鴎ひくし回轉焼に日があたり/横山白虹
鴎ひとつ舞ひゐて春の風邪心地/安住敦
鴎より白く杜氏は海を来し/金箱戈止夫
小降りして鴎に春ゆく清見潟/飯田蛇笏
寒風にとびとどまれる鴎かな/京極杞陽
沖に鴎仲仕焚火の燃え上る/米沢吾亦紅
冬うらら空より下りて鴎どり/三好達治
鴎乗る水のさし来つ背戸の桃/高田蝶衣
鴎啼き肩のつめたき立夏かな/小池文子
鴎忌のわれもひとりを海の邊/高橋睦郎
妻病みて旅つづくなり冬鴎/水原秋桜子
