俳句例:101句目~
水仙や端渓の硯紫檀の卓/内藤鳴雪
書き初や向ふ硯に松の影/井上井月
子規の忌の埃を払ふ硯箱/深川知子
洗ひたる硯のせ行く掌/赤星水竹居
子規堂の硯の乾く春の昼/浅見優子
洗ひたる机洗ひたる硯哉/正岡子規
参籠や硯の氷る日頃なる/尾崎迷堂
筆とるは硯やほしき児桜/服部嵐雪
窪みたる硯の月日洗ひけり/森緑葉
芍薬は散りて硯の埃かな/正岡子規
芋の露硯の海に湛へけり/正岡子規
硯面の歳月の疵洗ひけり/藤井凌雪
硯箱若葉影さす座机に/小川濤美子
小硯に金泥かわく夏書哉/正岡子規
書初や父の遺愛の硯箱/萩原まさえ
十二月小筆の増えし硯箱/伊東一升
初硯雪になる夜の墨匂ふ/銀林晴生
山眠り寺の硯の大凹み/大峯あきら
葉柳や硯をあらふ水浅し/会津八一
吹き晴れて硯の水と蜆汁/攝津幸彦
俳句例:121句目~
春さむや燈下に一つ硯筥/飯田蛇笏
滝壷に硯彫る石拾ひ来る/矢花作一
水仙に蒔絵はいやし硯箱/正岡子規
葱汁に筆硯甚だ多祥なり/田森柳渓
春暁の星響りやまぬ大硯/黒田杏子
蓬莱にテーブル狹き硯哉/正岡子規
千尋あれ硯の海も年の波/松岡青蘿
春灯や盆にのせくる筆硯/橋本鶏二
硯洗ふ良寛自得自在たり/田中水桜
訃ののちの日数を氷る硯かな/上村占
あをば木莵硯の海の涯かな/岡井省二
いで来たる硯の蝿の一つかみ/炭太祇
遺されし筆硯座右に初句会/星野立子
うき草に硯洗へり鵜匠の子/飯田蛇笏
うす墨の硯の沖に雪来つつ/和田悟朗
那智遅日硯作りの店に佇つ/植地芳煌
鈍きもの先氷るなる硯かな/高井几董
きさらぎの墨滓固き硯かな/飯田蛇笏
きさらぎの月も望なる硯冷/百瀬美津
鉄線花硯池に三片真悲しや/今井竜蝦
俳句例:141句目~
けさの秋硯に筆のすべり哉/正岡子規
雪折やてのひらにのる風字硯/上村占
露草の露をいただく土佐硯/黒田杏子
額の花硯彫る身の前のめり/荒井正隆
高僧のかたみの硯洗ひけり/星野立子
すり癖の残る硯を洗ひけり/福田寿子
ひとひらは硯の海に花見席/石崎素秋
ものを書く硯の海に冬灯/真下喜太郎
一滴の水に香のあり初硯/小澤満佐子
仲秋の硯師の爪伸びやすし/黒田杏子
何は置き硯を洗ひ清めんと/高木晴子
光悦が筆硯の間の茶立虫/玉置かよ子
初天神欠けし硯に欠けし墨/草間時彦
初日さす硯の海に波もなし/正岡子規
初硯奈良の古墨の香りけり/奥村治夫
初硯母にしづかな刻ありて/永方裕子
初蝶に硯の水のあふれけり/岡本喜子
去来忌を乾く硯の海と陸/鈴木六林男
命名のための硯を洗ひけり/三村純也
因幡より硯を運ぶ雁のころ/鈴木鷹夫
俳句例:161句目~
在原雛の調度の料紙硯箱/高橋淡路女
埋れ木のふところ硯井月忌/西本一都
塾閉ぢし妻の洗へる硯かな/綾部仁喜
墨の香の殊に匂ひて初硯/中川喜久栄
夕顔に旅と名のつく硯かな/正岡子規
夜の秋の硯を濡らす一滴/櫛原希伊子
大望を捨てんと硯洗ひけり/村松紅花
天に河地に川硯洗ひけり/飯沼三千古
子の名前薄れし硯洗ひけり/下間ノリ
子規堂の一机一硯冴返る/伊吹ぬい子
宋硯の青やむらさき更衣/加藤知世子
客のあと硯開きぬわが二日/石塚友二
少しづつ山遠ざかり硯洗ふ/折井紀衣
山水の迅きに洗ふ硯かな/大橋越央子
巌に灯して硯洗ふや女の童/会津八一
年つまる夜を心占む古硯/下村ひろし
徐霞客の暴に洗ひし硯かな/尾崎紅葉
御秘蔵の硯を洗ふ小姓かな/鈴木苔花
我が生涯綴るに大き初硯/小川原嘘帥
手枕のそばの無月の筆硯/阿波野青畝
俳句例:181句目~
摺り減りし硯洗へり業のごと/絵馬寿
旅硯庭の桔梗は咲きにけり/正岡子規
日のあたる硯の箱や冬の蠅/正岡子規
早苗饗の唄つづくなる筆硯/石川桂郎
明け易し硯離れぬ使ひ墨/秋元不死男
春愁や硯に海といふくぼみ/有川葉子
書初や墨磨り了へし硯三ツ/市川鬼蔦
朝寒の硯たひらに乾きけり/石橋秀野
朝顔や夫が呉れたる筆硯/石田あき子
朱硯に散りしむ墨や庭若葉/内田百間
朱硯に葡萄のからの散亂す/正岡子規
松風のおちてゆだちや筆硯/小林康治
柿の花硯に水の盛り上がり/長谷川櫂
梅が香や英治遺愛の大硯/寺崎美江女
楸邨忌硯の海を満たしをり/細田恵子
毛氈に据ゑて二日の硯かな/中村祐子
洗ひたる硯に水の澄んでをり/上野泰
洗ひたる硯を磨れば墨の虹/三星山彦
洗ひもせで帳場硯や二十年/升本翠華
洗硯の後棒硯の事あらむ/相生垣瓜人