硯に関連した俳句の例をまとめました。
硯を含む俳句例
大西洞老坑水巌初硯/飴山實
蜩や硯の奥の青山河/加藤楸邨
水させば硯喜ぶ翁草/村山古郷
雪信が蠅うち拂ふ硯かな/蕪村
徒に凍る硯の水悲し/寺田寅彦
けし垣の内や硯の小町形/万里
筆多き硯の箱や冬籠/正岡子規
書初や硯の水も伊勢の海/元夢
福寿草硯にあまる水かけん/晩得
五月雨や硯箱なる番椒/服部嵐雪
居籠や屏風の裾の筆硯/清原枴童
書初や硯に映じ梅薫ず/寺田寅彦
年々や硯を洗ふ墨の滓/佐藤紅緑
梶の葉に硯はづかし墨の糞/無腸
硯の上水迸る思ひごと/石田波郷
水滴を待つ硯あり雪曇/石川桂郎
きくの露受て硯のいのち哉/蕪村
弘法の水硯海に初写経/高杉悟泉
手を洗ひ耳洗ひ硯洗ひけり/柏禎
火燵からおもへば遠し硯紙/沙明
俳句例:21句目~
月詠みし重硯を洗ひをり/上村占
硯箱に秋海棠の蒔繪哉/正岡子規
遺愛とて露も置くべき丸硯/林翔
志存して洗ふ硯かな/池上浩山人
硯海の三滴賀状三枚分/宮田和子
藪入や父が遺愛の硯箱/沼澤石次
初硯命毛に墨滲みゆき/河府雪於
菊咲くや草の庵の大硯/正岡子規
早春の硯に匂ふ水の色/白井恭郎
初硯知足常楽筆太に/村地八千穂
初硯磨りつつぞ声緊りゆく/楸邨
初硯筆に朱墨を染ませけり/龍男
雪解や湖舟に洗ふ旅硯/西島麦南
若水や硯の湖に花の雲/水田正秀
朱硯へ花瓶の水や冬籠/会津八一
雁のへだてぞ佳けれ筆硯/齋藤玄
名月や此の松陰の硯水/黒柳召波
縁側に七夕紙と硯かな/高木晴子
城趾の菊に硯の瓦かな/正岡子規
春風や書院の棚の大硯/正岡子規
俳句例:41句目~
曉の氷すり碎く硯かな/正岡子規
物好や硯洗ふて鮓の圧/尾崎紅葉
姿よく能なき硯春の塵/星野立子
橙の花入れてある硯箱/岡本清子
万葉の歌の赤駒初硯/布施まさ子
寒凪や硯の海の忘れ墨/疋田秋思
硯彫る店暗からず竹の春/富田潮児
硯師の一服春の山を見て/森田公司
硯匠雨宮弥兵衛昼端居/上野さち子
硯より心を洗ふ一苦労/後藤比奈夫
水涸の水を硯の写経かな/尾崎迷堂
硯の陸風蘭の香は漂うか/赤尾兜子
盆栽の梅散りかゝる硯哉/正岡子規
手に重き遺愛の硯冬座敷/梶浦恭子
横丁に硯学隠れ墨とんぼ/加藤郁乎
生涯の一つ硯を洗ひけり/綾部仁喜
振袖をしぼりて洗ふ硯哉/正岡子規
撫でたくて小春の硯洗ふなり/林翔
狐火や一滴もなき大硯/大峯あきら
髪梳いて硯を洗ふ歌娘/鈴鹿野風呂
俳句例:61句目~
すぐ乾く硯の水や青嵐/田中幾久子
高階に硯を洗う鈴の空/鈴木六林男
高田石硯となれり梅匂ふ/宮津昭彦
文月や硯にうつす星の影/正岡子規
風鈴や硯の海に映りつゝ/鈴木花蓑
雲の峯硯に蟻の上りけり/正岡子規
文机と硯箱のみ葭障子/経谷一二三
雛をさめ炬燵の上の筆硯/木村蕪城
院々の古き硯やけふの月/五車反古
本の山硯の海や冬こもり/正岡子規
新米や瓦硯をとりいだし/野村喜舟
ゆく年の硯を洗ふ厨かな/三好達治
遺影とは硯に映る柳かな/長谷川櫂
遅き梅座に仰ぎもし硯職/木村蕪城
一籠の硯にまじる根芹哉/正岡子規
主なき硯あたため尾花の日/上村占
詩の舟や硯を洗ふ春の水/会津八一
行燈の下に舞月の硯かな/籾山柑子
行春や硯にならぶ蕪村集/正岡子規
桃青忌朱硯ひとつ欲しと思ふ/槐太
俳句例:81句目~
行く春の硯に印す梅の花/正岡子規
若楓祖父と硯を並べけり/及川隆夫
六人に硯一つの寒さかな/会津八一
凍解けや硯の水もつかふほど/蝶夢
澄雄来て硯咄や菊びより/巌谷小波
日雷写経の硯すぐ乾き/河野美保子
墨おきて硯の海も水の秋/鷹羽狩行
花榊ひらきて夜の筆硯/藤田あけ烏
筆硯や病にかてぬ初便り/石川桂郎
春風や石に字を書く旅硯/正岡子規
多過ぎし二百十日の硯水/鈴木鷹夫
浄机百筆硯も百炉は一つ/山口峰玉
筆硯や新草離離と垣の内/下村槐太
印刀をとぐ硯の裏や冬籠/高田蝶衣
大硯の海干る風や簟/菅原師竹句集
筆硯の正しく置かれ青簾/本岡歌子
筆硯につもる埃や竹の秋/野村泊月
滝殿のしぶきや料紙硯箱/正岡子規
洗硯す晩年はかく寂びたらむ/林翔
初硯天の青さを映しけり/長倉閑山