俳句例:101句目~
猫の子の箱より覗く印刷機/秋尾敏
底深き箪笥覗かる蟷螂に/石川文子
邯鄲を覗き込みては胸薄し/岸田稚
お隣の句座を覗きぬ雨の萩/岸田稚
初蝶に開封の文覗かるる/石川文子
山頂にわが顔覗く鏡なし/津田清子
水清く鱒を覗くや湖心亭/角田竹冷
送り火や顔覗きあふ川むかひ/太祇
葛練や山の肩より山覗き/高澤良一
踊笠いくつ覗けば妻をらん/飴山實
赤子泣く家を覗きて雪女郎/石嶌岳
後園の接木を覗く散歩哉/正岡子規
御湯殿の窓から覗く葵哉/正岡子規
貝売に窓覗かれし雛かな/野村喜舟
覗き行く明家の軒や枯忍/羅蘇山人
恋人の肌覗きけり二日灸/川合仙子
懐に密書が覗く菊人形/大久保和子
覗き行く夕餉の家や鰯賣/正岡子規
我影のそれかと覗く若葉かな/智月
袖垣の上より覗く春の水/野村泊月
俳句例:121句目~
廃鉱を覗く秋風うしろより/有働亨
鮪糶る男の世界覗きけり/鈴木真砂女
鳥の巣を覗く少女の下通る/加藤佳彦
子が妻が覗く図上の露の家/木村敏男
あぶな絵を脇より覗く春の暮/石嶌岳
子等の後僧も覗けり春の鮒/鈴木鷹夫
孑孑の水覗きゐて生れし詩/山田弘子
孑孑や大空を覗くかはる~/庄司瓦全
家内して覗からせし接木かな/炭太祇
寒紅や心の闇は覗かれず/鈴木真砂女
うそ寒や障子の穴を覗く猫/富田木歩
寮生の出て覗きけり春の水/川崎展宏
小窓より覗く聖菓の家の中/辻田克巳
小鳥来て句帳覗かる一茶像/小林満子
山僧の昼寝を覗く狸かな/矢ヶ崎奇峰
山寺に書院を覗く桔梗かな/尾崎迷堂
山本の小屋を覗けば添水哉/正岡子規
山里は土筆摘む子が覗く雛/林原耒井
川覗く人に加はる初秋かな/高尾峯人
平凡な暮し覗きに小鳥来る/柚山悦子
俳句例:141句目~
年始客孕み羊の牧舎覗く/千田あき子
さし覗く別の寒さの座禅堂/後藤夜半
さし覗く舞子の顔や立版古/後藤夜半
さゝ鳴を覗く子と待つ雑煮かな/水巴
弁当を覗かれている秋曇り/平山道子
彼岸会の眼玉覗けば山暗し/鈴木湖愁
捕はれし鼬を覗く春の雨/宮原イツ子
掴まりて覗く水位や秋出水/岡本緑也
攝待の湯槽を覗く若葉かな/幸田露伴
旅の暮魂祭る家を覗きけり/高田蝶衣
日も月も葛晒す水覗くなり/白岩三郎
日和空覗かせて滝凍てにけり/森田峠
早乙女の弁当を覗く鴉かな/正岡子規
春塵やオゾンの穴を覗き見る/森須蘭
春愁や覗く鏡にほつれ髪/高橋淡路女
月光に胸の中まで覗かれし/片山泰山
月覗き吾子も混りて厨忙し/香西照雄
木下闇太き手支ふ井戸覗き/大石鉄也
木隱れて目白の覗く雀かな/正岡子規
ふらここを漕いで隣の街覗く/湯川雅
俳句例:161句目~
檐燕覗く炉棚に刻む「時」/林原耒井
母の墓にて覗く魔法瓶の内部/上月章
五加木垣都の客を覗きけり/高井几董
汗垂れて春窮の陰覗かるゝ/小林康治
海女の子の母の負籠の中覗く/上野泰
涅槃絵を覗きし鵙の声ならん/徳弘純
深き雪神馬の機嫌覗くかな/野村喜舟
満月あかるくて毛皮店覗く/中山純子
源五郎天を覗きて沈みしや/村山三二
火口覗く生死の生の側に吾/津田清子
片蔭の家の時計を覗きけり/橋本鶏二
犬も来て覗くや籠の紅葉鮒/鈴木公二
猪居るが如く覗きし猪の罠/稲葉房子
甕の中覗きて寒し又覗く/山崎ひさを
用覗く人に加はる初秋かな/高尾峯人
痩法師師走の質屋覗きけり/渡辺香墨
白日の閑けさ覗く余寒かな/渡辺水巴
白菊のさし覗けるに水走る/石塚友二
白靴の一団お釜を覗き見に/高澤良一
ランチ見本覗く老人冬日向/嶋田麻紀
俳句例:181句目~
碍子より覗くもありて寒雀/石塚友二
磯の井の覗けば深し秋の暮/酒井美幸
一断崖ありて覗かず朝の朴/寺田京子
磯鴫や順ゆづらるる覗き穴/吉田明子
秋風の幼稚園とは覗きたく/後藤夜半
中年の逢瀬を覗く青とかげ/前山松花
稗蒔に近より覗く眼鏡かな/高浜虚子
亀覗く澱む形代掻き分けて/原口絹枝
竜の玉覗かば老の貌見えむ/遠山和子
竹馬の職員室を覗きをり/松浦沙風郎
縄綯へば吹雪の雀覗きけり/田中正信
聖人の脳味噌覗く柚味噌哉/会津八一
井戸覗く幼ごころに花菖蒲/石川桂郎
亡き犬に犬小屋覗く寒さ哉/正岡子規
聖書棚覗く懸巣も眼鏡して/堀口星眠
胴熊の先づ覗くらん春の艶/内藤丈草
花ちるや覗き合たる岩の穴/内藤丈草
花柊こころ誰にも覗かせず/山田瑞子
華やぐを葬列の一人が覗く/星野昌彦
何くはぬ顔して覗け嫁が君/井上井月