俳句例:101句目～
一戒を破り即ち蝿叩く/堀前小木菟
蝿叩鬱々としてわが端坐/加藤楸邨
一点の早蝿清浄白牡丹/阿波野青畝
一点の蝿亡骸の裾に侍す/石田波郷
蠅打つて掌熱きまで痛む/斎藤空華
蝿叩遺品のごとく扱へる/高澤良一
三井寺や諸人参詣道の蠅/尾崎迷堂
手折々蠅に動かし盲ひ僧/河野静雲
渓の岩蠅を点じて颱風期/下村槐太
蝿叩持ちつゝ談話湯治人/高澤良一
抄物の皮籠や古き蠅の糞/会津八一
蝿叩五十迎ふる顔なるか/清水基吉
蝿叩一閃したる新居かな/岸本尚毅
昏睡の病者と吾を蠅結ぶ/相馬遷子
腸のひつかかりゐる蝿叩/右城暮石
蝿交む女患者の香の中に/川畑火川
晩夏晩年角川文庫蠅叩き/坪内稔典
暖かや仏飯につく蠅一つ/飯田蛇笏
而うして蝿叩さへ新しき/高浜虚子
竃冷えて蝿爽かに遊びけり/原石鼎
俳句例:121句目～
蝿をうつ首も厳しや関の人/炭太祇
蠅叩棕櫚の命のまだ青く/高木晴子
残る蝿蝿取紙の方へ行け/佐々木六戈
残る蝿蝿捕紙の方へ行け/佐々木六戈
あら浪に蝿とまりけり船の腹/炭太祇
殺生河原硫黄育ちの蝿勁し/矢島久栄
空青き大岩に蝿生まれけり/山西雅子
いで来たる硯の蝿の一つかみ/炭太祇
毛越寺飯に蝿くる嬉しさよ/金子兜太
蝿の貌ほどの霰や潰れ降り/永田耕衣
鳩車の屑もて手編み蠅叩き/西本一都
しばらくは蝿を打ちたり韓退之/其角
じたばたと蝿取紙の蝿の脚/高澤良一
馬蠅の鏡すべり飛びにけり/室生犀星
馬蠅の吾にうつるや山の道/子規句集
馬の蝿牛の蝿来る宿屋かな/夏目漱石
洪水の光に生れぬ蠅の王/高野ムツオ
つと蠅がつるむ炎夏の顔の前/三谷昭
食甚や蝿の声する樫のもと/下村槐太
顔に来る夜寒の蠅をゆるしけり/林翔
俳句例:141句目～
顔にくる螫蠅ふえぬ極曇来/森川暁水
額に来る蠅の一人居るなり/小澤碧童
はるかぜや玄関番の蝿一つ/永田耕衣
蝿にくしこゝろの先へたち廻り/暁台
露白の脳髄の蝿びいきかな/永田耕衣
露白の脳髄の蝿びいきかな/永田耕衣
鉄屑の中行く蠅を背に集め/右城暮石
釣宿に帽子と掛かる蝿叩/椙本千代子
金蝿の乾ける音をたてつるむ/辻桃子
海の上人住めば置く蠅叩き/林原耒井
身構えて飛ぶ落日の北京蝿/神山姫余
身ほとりに何も叩かぬ蠅叩/手塚美佐
身に余る羽を重ねて蝿生る/平畑静塔
石を替ゆ蠅と退屈同士かな/高澤良一
買物にかひそへ持てる蠅叩/河野静雲
ガラス戸の緑の中に捕虜の蠅/上野泰
襖をはづしそこへ置く蠅帳/喜谷六花
蠅集ふ長病む老を好むかに/相馬遷子
蠅遊ぶ厠の花を替へにけり/中島月笠
蠅生れ早や遁走の翅使ふ/秋元不死男
俳句例:161句目～
頭の蝿に僧のあげたる塗扇/河野静雲
蠅生れて寺の人出を嘉しけり/大串章
バスの旅倶にし岩手県の蠅/高澤良一
蠅生る化粧を剥しゐる道化/星野紗一
蠅生まれ早や聖痕の白衣装/沢木欣一
蠅打てしばらく安し四畳半/子規句集
一日は永きもの哉蠅生まる/高澤良一
一遍踊る我ら句作る蝿たかる/辻桃子
蠅憎き世の懐かしや畳撫す/高澤良一
世に遠きものの一つに蝿叩/児玉南草
事多き果てや残暑の蠅取紙/中山純子
蠅帳の裡の翠微や胡瓜もみ/吉屋信子
二等船室隣より来る夏の蠅/高澤良一
蠅多き花菩提樹を仰ぎけり/下村槐太
湿原に飛びて大きな蠅の音/高澤良一
蠅叩餘計な死後を作りたる/中原道夫
人いきれして船室に蝿生る/柏井季子
人の居ぬ部屋力なく蠅叩/成瀬正とし
人を憎み深夜も蠅を憎み打つ/三谷昭
人探すことも忘れて蝿叩く/田沼文雄
俳句例:181句目～
生まれたる蠅を一滴雪柳/百合山羽公
蝿生る化粧を剥しゐる道化/星野紗一
再犯の金蠅なれば許さざり/高澤良一
蝿生る何彼と言ひて妻太る/清水基吉
小さき蝿我へ移りぬ瓜の花/岩木躑躅
喧嘩の非吾にもありぬ蠅叩/河野静雲
夕餉待つ眼悲しく蝿を打つ/巌谷小波
祝福もなしに無数の蠅生まる/三谷昭
山小屋の窓辺に蝿の一頓死/高澤良一
山川に流す蝿捕リボンかな/富安風生
営々と蝿を捕りをり蝿捕器/高浜虚子
蝿生れ赤子の涙吸いにくる/中村和弘
蠅もゐず屍の羊灼き尽きむ/小池文子
蝿打てば即ち蟻の罷り出づ/川端茅舎
蝿打つてつくさむと思ふ心かな/成美
営々と蠅を捕りをり蝿捕器/高濱虚子
帷子や蝿のつといる袖のうち/炭太祇
虻はまだ蝿はまだなり厩出し/森田峠
薫風や蝿取蜘蛛の一二匹/島村元句集
干鮎の蠅を吹くなり南風/廣江八重櫻
