鉄を使用した俳句

俳句例:201句目~

鉄皿に葉巻のけむり梟の夜/飯田蛇笏

鉄砧の睡りはあるか雪解靄/佐藤鬼房

厚鍔の南蛮鉄ぞ鵯ひゞく/水原秋櫻子

鉄積みし男手に解く粽かな/中田勘一

鉄臭き巨船過ぎゆく冬の葦/橋本榮治

鉄色の曠野をわたる年の暮/石田波郷

鉄輪の灯紅葉にうつり顔に又/之房/

吹かれゐる夏の欅の鉄火肌/高澤良一

鉄運ぶトラック洗ひ年終る/菖蒲あや

鉄運ぶ足が大きく鉄を踏む/嶋田洋一

鉄鉢に棗盛りたる厨かな/五十川茶村

鉄鉢に荒磯の匂ふ參寒土用/斎藤梅子

鉄鉢のすがたと思ふ朧にて/岡井省二

鉄鎖垂る苔咲く岩場迦葉山/加藤一誠

鉄鎖垂れ一巌の凍極まれり/荒川文雄

塵さわぐ七つの鉄の橋の上/夏石番矢

夏の河赤き鉄鎖のはし浸る/山口誓子

夏の海鉄打つ響き得て展く/椎橋清翠

鐵はこぶ人の體臭のゆきかへる/篠原

鐵鉢に味噌もる寺の師走哉/正岡子規

俳句例:221句目~

鐵鉢の中へ落ちけり雁の聲/正岡子規

雲水の捧ぐ鉄鉢銀杏散る/久保田重之

夜を学ぶ少年鉄の匂ひ持つ/木田千女

露草や鉄桶なして暴と悪/百合山羽公

青芝生低き鉄鎖をもて隔つ/館岡沙緻

大寒や鱗のごとき鉄の錆/木村里風子

大瑠璃や渓に鉄泉硫黄泉/鈴木麻璃子

婆羅門の鉄鉢に盛る蕉実哉/会津八一

風が鳴る銀河へ船の鐵梯子/中島斌男

風花や座右のひとつに鉄兜/岸風三樓

風蘭のほのかに白し鉄燈籠/正岡子規

鳥渡る父の浮名も鐵砧も/河原枇杷男

黒南風や燭盡きたれば鐵の針/竹中宏

寒梅の一枝を鉄の壺に挿す/館岡沙緻

守衛鎖す宵の鉄扉や冴返る/慶伊邦子

無人燈台鉄扉鉄鎖の冬の色/宮慶一郎

屋上に鉄のにほひの花菫/岡武十六夜

蜂の巣や鉄扉を閉づる葵門/秋田卯子

輪飾を鉄扉に掛けて堰守る/岩永草渓

雪来るか鉄扉の結露地に滲み/岡本眸

俳句例:241句目~

岩頭に陽炎/揺れる鉄梯子/小原康司

峰雲や鉄に喰ひこむ一打鋲/近藤一鴻

音立てて鉄扉下り来る雛の前/岡本眸

帰省子に鉄の翅擦る源五郎/高井北杜

幹どこを叩くも鉄の音や冬/橋本榮治

扉閉づ鉄門露にひたりけり/飯田蛇笏

打つ鉄の火色褪めゆく葛嵐/岸原清行

撃鉄を起こす蛙の目借時/阿部風々子

旋盤の鉄くず匂ふ五月闇/野田ゆたか

明けわたる水に水馬の鉄脚/高澤良一

春一番鉄の匂ひの漢くる/矢野さとし

春暁の大河を跨ぐ鉄の橋/松本案山子

三冬や鐵鐵となるおのづから/高橋睦郎

あけぼのや鉄床なせる春の雲/川崎展宏

日傭の鉄を鋳て居る大暑かな/尾崎紅葉

雪解風牛は鉄輪を鳴らし食む/鈴木貞雄

鉄の香の雨国橋の西日かな/渡邊千枝子

父の一句鉄風鈴に吊しけり/吉田ひろし

かいつぶり鉄砧しばし火の雫/友岡子郷

かぶとむし一糸は鉄の枷以上/鷹羽狩行

俳句例:261句目~

きさらぎや雪の石鉄雨の久万/正岡子規

露けくて鉄に触れば鉄にほふ/長谷川櫂

熊の子が飼はれて鉄の鎖舐む/山口誓子

斑雪嶺をささふ穂高の鉄沓屋/宮坂静生

文鎮の鉄の手ざわり冬はじめ/小熊秀子

糸替へて鉄の風鈴よく鳴れり/川越昭子

野晒の鉄ほとぼりぬきりぎりす/岸田稚

鉄を打つ一瞬カンナ黄に眩み/三橋鷹女

はせを泣き蘇鐵は怒る野分哉/正岡子規

文鎮の木菟南部鉄木菟が呼ぶ/田仲了司

敗戦忌据ゑし遺品のみな鉄塊/小泉小泉

鳥発つて氷湖傷つく鉄の刃/田川飛旅子

ふらここの鉄の匂ひの夕心地/佐藤公子

鉄を断つ青き火花に冬立てり/池田博子

徹夜稿灯へこほろぎの鉄脚よ/友岡子郷

まくなぎの柱の下に鉄腐る/榎本冬一郎

鉄を食ふ鉄バクテリア鉄の中/三橋敏雄

鉄亜鈴と揺れの大きな白芙蓉/川崎展宏

鉄傘の大つばさ影青き芝に/大橋櫻坡子

カンナ秋幼な馴染が鉄を打つ/三橋鷹女

俳句例:281句目~

鉄兜射ぬかれありき忘れ得ず/片山桃史

三越の鉄扉小暗しほたる買ふ/石橋秀野

清く寒き磨滅の鉄と木縁習船/大高弘達

十五夜の工場鉄扉とざしたる/菖蒲あや

パイプ椅子鉄の灰皿棕梠の花/木下夕爾

パンジーの鉢鉄階の上に置く/池田秀水

鉄削る黍の空地を職場とし/秋元不死男

一切凍てて鉄がくぎりしこの空間/楸邨

一月や鉄をきりだす鉄の鋸/磯貝碧蹄館

一点を見つめ鉄切る春闘経て/増田達治

夏野来ぬ鉄路止めたる鉄の鋲/中野文夫

亀産卵海は鉄鎖のごとく満つ/対馬康子

大試験重き鉄扉を押し開く/栗田やすし

荒梅雨や鉄の刄鉄を切り落す/手塚酔月

二日より深雪に飛ばす鉄火かな/齋藤玄

人の手に撓む枯野の鉄搬ぶ/軽部烏頭子

鉄いろに背をひからせて冬の蝿/瀧春一

水門の鉄扉をかすめ夏つばめ/田口紅子

佐渡見えぬ日に鉄鉢に雪積る/磯田光次

修道院花野に鉄の扉を鎖せり/品川鈴子