俳句例:101句目~
椎の実や卵塔並ぶ苔の上/寺田寅彦
岩角や火縄すり消す苔の花/炭太祇
七五三日蔭は苔の匂ふなり/岡本眸
巌苔に十一月の水游ぶ/星野麥丘人
香もそれも寂光院や苔の花/飴山實
秋風の苔尊さよこの庵/大峯あきら
秋風裡謀議の漏るる光苔/都筑智子
題目や髭に花咲く石の苔/正岡子規
幹に苔つく方が北木下闇/高橋笛美
鞘堂の鞘の日数に苔の花/深谷雄大
銭苔を剥ぐと全身神経図/寺井禾青
其骨に苔の咲くなり小紫/正岡子規
庭石に何時よりの苔朝の霜/桂信子
山寺の石の苔はむひたき哉/中勘助
露地草履一葉拾へば苔厚し/及川貞
絶壁の苔厚うして大旱/佐野まもる
雪汁のぬくみいそげよ苔の花/智月
老杉の木肌苔むす天宥忌/伊藤啓泉
錦木や去年の恋は苔の花/正岡子規
艮に棲めば眼窩に光苔/高野ムツオ
俳句例:121句目~
金閣や金箔はげて苔の花/正岡子規
梅散て苔なき庭の夕寒し/正岡子規
西行の腰かけ岩や苔の花/正岡子規
惜春の情石に苔水に苔/後藤比奈夫
苔白く舌を覆へる二月かな/龍岡晋
落下傘部隊の墓や苔の花/沢木欣一
打水に小庭は苔の匂ひ哉/正岡子規
花曇小雀の嘴の苔一片/島村元句集
西行庵これが栖か苔清水/氏家頼一
旅人へ苔あをあをと冬泉/加藤耕子
苔寺にふり溜りゐる秋の雨/京極杞陽
苔寺の戸樋に日当り秋の雨/京極杞陽
犬槇の苔いまは粉や春旱/中戸川朝人
苔寺の苔の絨毯あまがえる/池田勝之
苔寺の苔の花見て旅にあり/高橋紫風
白老のチセの茅屋根苔茂る/岡本敬子
白鳳のみ足すすがせ苔しみづ/中勘助
苔寺や遅日の縁のたばこ盆/橋本鶏二
石塔もはや苔づくや春の雨/向井去来
竹落葉渓の苔岩乾るまなき/飯田蛇笏
俳句例:141句目~
笹鳴や思惟の手解かぬ苔仏/三橋迪子
紅葉散りて夕日少し苔の道/正岡子規
苔くさき坊の昼湯や蝉の声/吉田冬葉
苔つけし松横はる二月かな/前田普羅
苔の国葬送音楽流れやすし/鈴木伸一
苔の蟻石の蟻とはかゝはらず/森田峠
苔の香や午睡むさぼる杣が眉/原石鼎
苔ふかき庭に沈みて石ひとつ/桂信子
苔埋む蔦のうつつの念仏哉/松尾芭蕉
苔庭も烏揚羽も焦げてゐる/柿本多映
わく如き滴りにして苔の面/高浜年尾
苔掃くや椎の花ふる臨川寺/村田橙重
苔涼し平泉先生の白緒下駄/桂樟蹊子
一幹の苔のめくれる梅の花/関森勝夫
万両の実は沈み居る苔の中/高浜虚子
苔芝を出づる蛍の羽音かな/内藤丈草
苔青き天心塚を撫でて辞す/伊藤京子
不良のごと石垣の苔冬青く/宮坂静生
夕立に古井の苔の匂ひかな/正岡子規
乗り苔の庇いづれも鮎の宿/後藤夜半
俳句例:161句目~
茅舎忌の緑凝りたる石の苔/蟇目良雨
谷風/銭苔鶏鳴石神水無限/高柳重信
五月雨や苔むす庵の香の物/野澤凡兆
井戸水の苔の微香の砂糖水/菅原義信
何が世捨人苔色の春服著て/塚本邦雄
何代の苔むす石が雪のした/正岡子規
俳聖殿苔生す萱に小鳥来る/川浪玲子
倒れ樹に蒼苔むせり閑古鳥/幸田露伴
走り根も苔も露置く平泉寺/藤井樹声
道をしへ法然院の苔に消ゆ/田島和生
鉄鎖垂る苔咲く岩場迦葉山/加藤一誠
銭苔のうすきみどりの冬木なる/篠原
冬の日や苔に水打つ法善寺/青木重行
閑古鳥靄明るめる苔の階/柴田白葉女
冬の苔巴里は電信柱も無し/小池文子
陽炎や苔にもならぬ玉の石/正岡子規
雪国の苔の青さに一葉落つ/大島民郎
冬苔の生きて彩もつ賞花亭/小山繁長
冬苔の睡りを添へて石十五/鈴木鷹夫
雪融くる苔ぞしもとぞ山始/芝不器男
俳句例:181句目~
初冬の苔うすうすと鐘の下/岸本尚毅
霊芝あり苔香る所清水わく/寺田寅彦
青苔に山茶花にほふ神迎/水原秋櫻子
青苔に足をおろせる庭草履/綾部仁喜
咲き残る蓮に相寄り苔の浪/石塚友二
音もなく紅葉散りゐる苔筵/杉山青風
音速を絶ち神々のひかり苔/佐藤鬼房
囀りや苔盛り上がる小町塚/巽恵津子
國破れて山の香はあり苔の汁/中勘助
風の盆水苔の香のうぐひ酒/細見綾子
塚の霜われも苔にはちかき身ぞ/成美
風蘭や神代の苔のむした松/正岡子規
風蘭や神代の苔もついた松/正岡子規
鱒がいて苔の波紋の樅の国/和知喜八
鷽下りて雪沁む苔を啄める/黒木夜雨
黄落の奈良には苔の道多し/小寺正三
一鳥の掃苔終るまで去らぬ/村越化石
別々に来て掃苔の夫とわれ/加藤晴子
苔くさい雨に唇泳ぐ挽肉器/赤尾兜子
寒竹の子が一本や苔の庭/上林白草居