銀/しろがねを使用した俳句

俳句例:201句目~

一本の華やぎ晩年の銀の匙/伊丹公子

七月や銀のキリスト石の壁/大野林火

不知火を待つ銀漢の鮮かに/渡辺安山

銀漢や史記にて絶えし刺客伝/日原傳

銀漢や千里の果に妻子寝て/長谷川櫂

二月の銀の純度を量りをる/岡本信男

仁丹の銀まろび落つ春の土/高橋敦子

猫に買ふ銀の小鈴も盆支度/桑原立生

玉虫の飛翔は銀の翅つかふ/児玉南草

白木蓮の滾りて銀の宙にあり/八村廣

八月の銀を伸べたり太刀の/石塚友二

六面の銀屏に灯のもみ合へる/上村占

白絣銀のごとく着てをれり/火村卓造

銀婚の式はせずとも軒の梅/鈴木花蓑

冬の星わが鬢髪に銀を差す/中島斌男

葭障子銀瓶ひとに過去ありき/及川貞

秋海の銀に五体を投ぜんか/大口元通

蒙古塚夜は銀漢を掲げけり/岸原清行

秋澄むやひろげて銀の舞扇/藤村克明

銀屏に萩を焚く火や光悦寺/橋本鶏二

俳句例:221句目~

凍蝶を埋む銀砂のひと握り/島田節子

秋澄んで銀燃ゆる蜘蛛の糸/石塚友二

銀屏風紅葉の風に立揺らぎ/京極杞陽

稜線を銀にかがりて秋入日/加藤耕子

立秋や銀の茶釜の市に出る/寺田寅彦

初蝶や銀髪額へかげを生み/原コウ子

立雛や袴の銀のさびまさり/野村喜舟

十錢の銀を銅貨に両がへて/正岡子規

銀の笛ほし滝しぶき虹となり/桂信子

米櫃に銀の紙貼り秋の母/磯貝碧蹄館

銀婚やかがよう妻の髪の霜/橋本夢道

銀漢や死すれば踰ゆるいろは坂/春樹

銀さびて片蔭をゆくひとの帯/原俊子

銀漢や馬房に馬の数足らひ/石田勝彦

銀木犀文士貧しく坂に栖み/水沼三郎

銀漢や馬柵をこえ発つ登山隊/金子潮

鉄線花壁をこぼるる銀砂子/野村喜舟

銀燭の更けて露けし貸小袖/伊藤松宇

鈴虫や銀器触れ合ひ唯の音/香西照雄

夏霧に銀だちて野猿の毛/甲斐すず江

俳句例:241句目~

夕月の銀のさばしる鳥総松/飯田龍太

銀盆に熟柿の揺れの静まりぬ/日原傳

しろがねの水蜜桃や水の中/日野草城

夜の秋の理髪店より銀の音/十時海彦

夜歩きの名残銀漢烟りけり/中島月笠

蛞蝓の銀かわきたる酒船石/羽田岳水

銀積みし港の跡や秋の蝿/磯貝碧蹄館

天もるる日や銀竜草が発光す/近藤忠

銀竜草滝の飛沫の結晶めく/毛塚静枝

銀竜草鵺の忘れし笛かとも/堀口星眠

銀綴る帯の桔梗の雨の背/中戸川朝人

銀線を曳くなめくぢと奴隷船/糸大八

銀蘭や汝も黙せる明るさに/花谷和子

蜻蛉生る多摩の金泥銀砂子/久米正雄

子と摘みにゆく銀の蓬かな/山西雅子

蝙蝠や沙漠に銀の飛翔線/加藤知世子

銀閣の銀の砂より牡丹の芽/鈴木育子

金鶏も銀鶏も秋風の中/野見山ひふみ

金蝶の眠り過せしが銀蝶か/田中芥子

銀ぶらも絶えて久しや鰯雲/吉田久子

俳句例:261句目~

雪女郎銀の半襟してゐたり/原田青児

銀漢やおとこ斃れてなお長身/澁谷道

山の蛾がふらす銀粉九月果つ/桂信子

霜柱銀にはなやぐ父の死後/平井照敏

山撓宝珠銀の蕊吐き秋風に/木村蕪城

銀の匙に麦粉そなへん漱石忌/中勘助

幸木に編まれて光る銀の鶴/深川知子

露の他省き尽くして銀沙灘/高澤良一

麦の穂を挿しある銀の花瓶かな/篠原

黄葉ふる風に銀狐の逆毛立つ/瀧春一

襟巻の銀狐獣の爪をもてり/岸風三楼

しろがねの刻を研ぎ出す暁の虫/林翔

愛情は秘むべし柳の裏葉銀/香西照雄

しろがねの水を束ねて寒晒/伊藤敬子

銀の城わが国に生れる言葉/阿部完市

描初の金泥を溶き銀を溶き/奥野素径

放埒は銀木犀の花に始まる/福富健男

しろがねの湖に真向ふ琴始/白柳淑子

銀屏の古鏡の如く曇りけり/高浜虚子

しろがねの能郷白山花の上/清水弓月

俳句例:281句目~

新涼や金眼銀眼の猫とゐて/宮川喜子

旅櫛の銀のよごれや紅薊/島村元句集

しろがねの葬花八月十五日/猿山木魂

日陰れば芒は銀を燻しけり/米岡津屋

明星の銀ひとつぶや寒夕焼/相馬遷子

しろがねの雨が走れる青芒/池田苦茗

春の漁密かに四五尾銀の鮎/飯田蛇笏

銀漢の声はるかなり抱影忌/熊谷恵子

遍照光家陰に霜の銀を敷き/香西照雄

しろがねの買ふ秋の小漁港/野澤節子

春宵や菓子鉢銀のいぶしいろ/及川貞

銀漢の結氷の音すゝむなり/小川軽舟

一枚の湖しろがねや大旦/中村けさ子

遠き日の鮎は銀器の残光を/吉田紫乃

一羽鳩腋しろがねに年新た/野澤節子

春灯や菊勇のかげ銀屏風に/田中冬二

春雷やかの日の銀の耳飾り/坪内稔典

あつまりて像歪めあふ銀器の秋/渋谷道

あはあはと銀漢面影は消えず/福田蓼汀

紙を追ひけだかき銀にたぢろぎぬ/林翔