俳句例:201句目~
胸襞を水照りに透す十三夜/石原八束
花支度さだかに茶垣十三夜/亀井糸游
茶の花に約るひかり十三夜/下村槐太
葛の葉を流るる靄や十三夜/原田青児
わが影の真中がうすし十三夜/西山睦
血行よき吾も樹の性十三夜/星野明世
見納めが母の口癖十三夜/田邊えりな
誦し馴れし母の戒名十三夜/山田弘子
誰もゐぬ家に戻りし十三夜/狼谷道子
路地路地に十三夜月見てもどる/槐太
軒並に老人が居て十三夜/荒井とし子
一ト塩の鰯焼きけり十三夜/野村喜舟
一兵の遺影は二十歳十三夜/鈴木信行
透かし見る卓上の疵十三夜/小林幹彦
通るとき二階が開きぬ十三夜/岡本眸
一本の竹のみだれや十三夜/中村汀女
一枚の雨戸あけあり十三夜/田中冬二
酒盛りのひとり声高十三夜/川崎展宏
野良猫ハ潔白デアル十三夜/高橋京子
三十七が姉の一期や十三夜/嶋田麻紀
俳句例:221句目~
釜めしの次々噴いて十三夜/石川桂郎
串の鮠枯るゝひかりの十三夜/碧雲居
釣人に橋の灯あはき十三夜/木下由美
門川の障子にひびく十三夜/愛須真青
隅田川渡り来にけり十三夜/福田蓼汀
隣家へは杜一つおく十三夜/原田青児
交番に出前のとどく十三夜/三井静女
雲切れて庭に影濃き十三夜/加藤道子
人の世の灯の煌々と十三夜/青木重行
電話機の鳴る前の息十三夜/谷口桂子
霧晴れて落葉松寒き十三夜/内藤吐天
人立ちて鏡ほてりぬ十三夜/須原和男
仲見世に軽き靴買ふ十三夜/都筑智子
面影の薄れ行くなり十三夜/藤野艶子
頬杖の頬のぬくみや十三夜/野澤節子
鹿鳴いて猫は夜寒の十三夜/服部嵐雪
麦蒔をしてきし一家十三夜/高野素十
信号の赤浴びつゝや十三夜/高柳重信
麻薬うてば十三夜月遁走す/石田波郷
円き石あれば腰掛け十三夜/原田清正
俳句例:241句目~
黒谷の和紙を漉きをる十三夜/石嶌岳
凄まじき深山の月の十三夜/石塚友二
初霜の奈良田の宿の十三夜/田中冬二
人の子の十三詣り礼し過ぐ/千賀静子
人の子の花の十三詣かな/松根東洋城
十一面観音雨戸して十三夜/野呂春眠
十三詣の子の振袖も花の風/平松/泉
豆を煮る豆殻を焚く十三夜/萩原麦草
ななかまど十三葉の露涼し/西本一都
ふつくらと長女十三花ぐもり/小島健
一斉に牡丹散りけり十三片/渡辺水巴
不二颪十三州のやなぎかな/蕪村遺稿
人の子の花の十三参かな/松根東洋城
修羅修羅と十三ななつ蛇苺/鳴戸奈菜
出水禍の石段のこす階十三/福田蓼汀
十三夜ほとほと白き人の骨/松井国央
十三畳半の落柿舎冬支度/工藤芝蘭子
夕雲雀落ちて揚らず十三砂山/岸田稚
弾初や十三弦のゆるみなき/大西正子
挨拶の尼僧ころがる十三月/攝津幸彦
俳句例:261句目~
十三夜乏しき星の光り出づ/澤木欣一
施餓鬼会や十三僧の経時雨/仲田藤車
明易や八十三の母刀自に/大橋櫻坡子
水桶や蓮の葉うかす十三日/小澤碧童
十三夜夜着一枚を重ねたり/田中冬二
水鳥翔つ十三湖の上に日本海/神蔵器
法臘は十三にして冬紅葉/瀬戸内寂聴
十三夜姉を攫いに来る蝶か/斎藤愼爾
石鹸玉ひと吹十三七つほど/鈴木鷹夫
葦生より碧落淡む十三の方/成田千空
蜜柑黄なり庵原八十三ケ村/津田桂影
遍路婆八十三の赤ゆもじ/鈴鹿野風呂
十三夜山歩みくる歩み去る/黒田杏子
青芦に風吹きつのる十三湖/依田安子
青葉うるむ税の滞納十三萬/塚本邦雄
驢に騎つて十三載や神の春/会津八一
父と子と十三詣ひそやかに/松田芒趾
十三夜暗く混み合ふ喫茶店/石川文子
十三夜月のまはりし権太坂/清水基吉
十三夜枝豆醜にしてうまき/木津柳芽
俳句例:281句目~
十三夜柱に憑きし蝶のあり/斎藤愼爾
十三夜椎の小蛇に猫戯るる/宮武寒々
十三夜母の記憶は風ばかり/國定義明
十三夜母子針箱それぞれに/鈴木栄子
十三夜注がれて酒の淡き青/本宮鼎三
十三夜胸の温みが指伝ふ/殿村莵絲子
十三夜花鳥の壺に花満たす/勝亦年男
十三夜蔦の落葉の緑かな/大谷碧雲居
十三夜遺品のザイル壁に影/福田蓼汀
十三夜音立てて神めぐる水/北川泰子
十三夜駅のベンチに黒衣人/伊藤京子
回廊をめぐる足音も十三夜/黛まどか
垣間みしものに憑かれて十三夜/間石
塵籠に露むすびをり十三夜/西本一都
墨磨れば墨の声して十三夜/成田千空
夜も素き白樺や乗鞍十三夜/北野民夫
大皿に蟹のけむりぬ十三夜/村上鬼城
大都とは霧たちのぼり十三夜/原石鼎
天平のいしずゑ蒼き十三夜/長谷川翠
失いしことに指折る十三夜/川嶋隆史