厨を使用した俳句

俳句例:101句目~

鮟鱇をふりさけ見れば厨かな/其角

初雀厨のもの音より鋭し/原田種茅

初音せり厨の妻は聞かざらむ/林翔

厨窓躍り出る猫や椿照る/清原枴童

母寝ねて雪の厨に皿ひとつ/桂信子

緑さす厨を今も手離せず/横山房子

鮎の香の厨小暗き吉野建/高橋好温

この家の厨に近く大炉あり/上村占

北海の鮭あり厨貧ならず/正岡子規

を獲し貧厨の灯や秋の風/会津八一

新雪をまぶしむ朝の厨窓/杉本則江

卯の花や厨の灯今は消し/山口青邨

厄日果つ厨に水を荒使ひ/菖蒲あや

母と子の初髪匂ふ厨ごと/石崎静女

鬼灯の市の裏なる夜の厨/有馬朗人

厨いま青山椒を煮つゝをり/飴山實

黴厨匙きらきらと密集す/目迫秩父

髪握つて厨へ妻や鰆見に/富安風生

月涼し今日の終りの厨水/木下夕爾

枝豆や雨の厨に届けあり/富安風生

俳句例:121句目~

飲食や梅雨の底なす外厨/石川桂郎

音ばかり立てて男の寒厨/栗原碧水

立冬の厨に乾くかまど神/黒米満男

悠々と厨飛翔の蠅ひとつ/相馬遷子

稲妻のおよぶ限りの厨窓/和泉千代

霜降やスリッパ厚く厨事/井沢正江

合点の新豆腐ある厨かな/高浜虚子

唐黍や扁額かけて寺厨/楠目橙黄子

枝蛙見下して居る厨かな/正岡子規

祭髪結うてひねもす厨事/転馬嘉子

霜の華咲かす厨の妻の唄/杉山岳陽

祝祭のように焼く空の厨/伊丹公子

雪除の裾泌み出づる厨水/西山泊雲

喪の家の厨屑なる葱坊主/亀井糸游

四五本の葱を束ねて船厨/井桁衣子

雪しきり厨に凍つるの膚/野澤節子

土戀へる厨の葱や春の雨/西山泊雲

土用蜆厨は水の匂ひかな/成瀬松涛

金縋を置く寒厨の片隅に/伊東宏晃

土筆摘み母に出番の厨事/城台洋子

俳句例:141句目~

短日や制服のまゝ厨ごと/平尾春雷

里若葉ゆふべの厨焼ける/田中冬二

厨の手休めて祈る原爆忌/小谷久子

輸飾や厨のうちの岩清水/野村泊月

塩漬ただよう厨月満ちて/伊丹公子

真白なる厨の卵僧自恣日/宮坂静生

夏の果て病の果ての厨妻/今泉貞鳳

皿に萍厨に妻の箱庭あり/高澤良一

末枯のはじまつてゐる厨口/飴山實

貧厨に鯨肉配給雪が降る/山口青邨

貧厨に葱噛む昼の鼠かな/尾崎紅葉

春暁の湖に皿洗ふ厨かな/飯田蛇笏

師の病篤く芹古るわが厨/森川暁水

白に厨の水がかゝりけり/萩原麦草

蝿遊ぶ三艸書屋の厨窓/深見けん二

木耳や引窓明いて厨の日/島田青峰

春昼や厨に匂ふ山椒味噌/田中冬二

蜩や立たねばならぬ夕厨/水口つゆ

春愁や水ほとばしる夕厨/羽畑幸子

ゆく年の硯を洗ふ厨かな/三好達治

俳句例:161句目~

蛤を炭火に泣かす土間厨/影島智子

厨より妻も出句や初句会/宮下翠舟

厨より始まつてゐる忘年会/平松綾

蛤の雀鳴きする夜の厨/木本たけ子

厨より見ゆる家鴨の水温む/樋笠文

蛤のことりと動く夜の厨/石丸泰子

厨事するも寄進や親鸞忌/田原紫城

蚕豆をむく厨より鹿島槍/朝野歌子

蚊柱やこげし匂ひの厨口/岡田和子

厨出て夕焼烈し蓼を摘む/桜井亜石

拭きあげて広き厨や油虫/岩本初子

厨口から出て玉簾咲く小径/飴山實

夕臥せば寒厨に菜を洗ふ音/桂信子

厨口鈴鳴つてゐる豊の秋/田中裕明

夕野分厨に筧ほとばしる/木村蕪城

葱きざむ妻は厨に一生を/田村了咲

葉桜の風が厨の中とほる/長谷川櫂

厨夫踏む帯のやうなる初日向/静塔

病葉の一葉落ちけり厨裏/町田和子

朝涼の厨はじめの水硬し/古賀雪江

俳句例:181句目~

落葉期厨に空の瓶ふゆる/横山房子

水甕をせめて豊かに寒厨/山口波津女

水鳥や舟の厨の皿の音/長谷川零餘子

汗拭ふ貧厨トマト浸しあり/岸風三楼

油虫跋扈厨に隣る妻の閨/磯貝碧蹄館

泥葱の束つんのめる厨口/秋山美智子

渋鮎の着きし厨の真暗がり/前田普羅

灯を入れて一厨二室年の花/古舘曹人

煮凝やニッケル製の厨匙/左右木韋城

父娘して蕗むく雨の厨かな/菖蒲あや

玉葱の厨に芽吹く孤独かな/野崎宮子

から臼の厨に響く時雨かな/藤野古白

珈琲を挽く香の厨弥生尽/大野雑草子

くすくすと蜆が笑ふ夜の厨/内田白女

皿割れし音に厨の秋深む/上田五千石

こほろぎに寄りて流るる厨水/桂信子

こほろぎや俄かに落つる厨水/森田峠

秋の雲浮かべてやがて厨水/吉屋信子

秋めくや厨の小鉢触るる音/今泉貞鳳

秋立てり朝風入るる厨なか/磯野貞子