俳句例:201句目~
蜆汁人の死と壁一重かな/小林康治
松とれし下田や遺る海鼠壁/貞弘衛
水たごに寒菊ゆゆ竈壁/大阪-荘人
荒壁に虻狂ひをる西日かな/富田木歩
入学すイエスの渇き壁に見て/岡本眸
八月や壁に自愛の眼据ゑ/村松ひろし
冬こもり煙のもるゝ壁の穴/正岡子規
暑気中り窓に隣の壁がある/福田蓼汀
荒壁に日の差してゐる薄氷/桑原三郎
晩夏なり壁土ねつてゐる所/細見綾子
冬天や嘆きの壁は紙片噛み/柚木紀子
冬浅し曲りてもまた海鼠壁/芝山吉宣
聴衆の壁の中にて盆の笛/百合山羽公
冬蝿や十燭光の壁に生く/冨田みのる
昼の虫人棲みて壁汚れけり/辻田克巳
冷房や一僧壁によりかかり/岸本尚毅
夏料理壁に芋銭の河童掛け/川村紫陽
夏誰か尺八一管を壁に立て/金子兜太
凩に壁塗る足場揺れやまず/平間彌生
夕がほや物をかり合ふ壁のやれ/麦水
俳句例:221句目~
聖燭祭尊き使徒ら壁に古り/西東三鬼
守宮など出る頃階段脇の壁/高澤良一
夕月や蜈蚣這ひ出る庵の壁/正岡子規
聖女学院薔薇ありて壁に傷/辻田克巳
夕顔やあら壁落ちて琴の腹/正岡子規
幽き壁夜々のまぼろし刻むべく/篠原
剥落の壁の天使や青き踏む/山本歩禅
聖壁を毀ち麦秋の空濁す/下村ひろし
羅漢寺は巌を壁とし秋の風/田村木国
弛むとき厚着の麗子壁にいる/澁谷道
繭玉の影濃く淡く壁にあり/高浜年尾
あら壁に蔦のはじめやかざり縄/乙由
宮庁の冬帽かかる壁よごれ/古沢太穂
十三夜遺品のザイル壁に影/福田蓼汀
夜の壁に故人の鏡雪や来る/渡邊水巴
家々の壁てふ断面西日受く/高澤良一
橇ゆきし奥処夕澄む火口壁/小林碧郎
家も長寿壁に野菊の裾模様/香西照雄
柳絮触れ洛陽の壁あかきかな/日原傳
いな妻や壁を迯げさる蜘のあし/几董
俳句例:241句目~
南米地図壁に茨の実卓に挿す/及川貞
板壁や馬の寝兼ぬる小夜しぐれ/史邦
うけとめて胸壁はあり日雷/福田蓼汀
文武校地震支へせし冬の壁/西本一都
うづみ火や壁に翁の影ぼふし/蝶夢/
鷄頭や雨の夕日の壁を漏る/正岡子規
かけものの壁に跡あり冬ごもり/涼莵
古壁がぶつぶつ喋る開拓港/伊丹公子
鳥しづむ邑には白き壁多し/熊倉啓之
古壁に菜の花咲くや浄土寺/正岡子規
古壁に華やぐ衣や衣紋竹/高橋淡路女
古壁の隅に動かずはらみ蜘/正岡子規
古壁や炬燵むかうのはつ暦/小林一茶
家中の壁に崩れていく花火/対馬康子
台風の水禍ここまで壁の線/田中康雄
鰡とんで鼠のぞける河口壁/山本春海
魂棚に壁のひま漏る夕日哉/正岡子規
からくりの壁裏返る嚏かな/小澤克巳
髪が枯れ俳句三昧壁炉愛づ/飯田蛇笏
粗壁に蓑ひとつ吊る鵙日和/橋本榮治
俳句例:261句目~
粗壁に夕日が射して甘藷煮ゆる/柏禎
騎初の馬上に火口壁めぐる/向野楠葉
餅花の壁影消して人立てり/西山泊雲
風の月壁はなれとぶ干菜影/西山泊雲
唐黍のうしろに低し寺の壁/正岡子規
面壁の影ゆるぎなし遠雪崩/吉沢卯一
青葭の壁や釣舟呼び合へる/井口秀二
噴烟の捲き湧く火口壁凍る/石原八束
噴煙のある火口壁霧氷濃し/平野竹圃
囀や大寺の壁に肖像画/長谷川零餘子
寄書を壁に狭しと避暑の荘/山田弘子
粉壁や芭蕉玉巻く南京寺/芥川龍之介
国分寺すが洩り跡の堂の壁/日守むめ
大寒や巌のごとき壁に凭る/河野南畦
籐椅子や海の傾き壁をなす/山口誓子
寒の星みな立つ天の北の壁/山口誓子
新樹透く夕陽や奈良の粗壁に/桂信子
こほろぎや隣へ移る壁の穴/正岡子規
青簾下げて歎きの壁とせむ/鈴木栄子
青楼の壁に牡丹の詩を題す/正岡子規
俳句例:281句目~
青年の背丈に竜の壁炎ゆる/古舘曹人
大寒や身ゆすり祈る哭壁に/有馬朗人
稻妻や壁のくづれの生駒山/正岡子規
青壁の天を支ふる余寒かな/平井照敏
霜消して天の青壁武者幟/百合山羽公
寒薔薇や磔刑の図を壁にかけ/岬雪夫
霜枯や壁のうしろは越後山/小林一茶
稻妻の壁つき通す光りかな/正岡子規
壁くれや鼠行き達ふみそさざゐ/暁台
壁こぼつ埃の中や今年竹/月の本為山
春雨や人住みてけぶり壁を洩る/蕪村
稲妻や一時にあかき壁の穴/寺田寅彦
霜原や窓の付たる壁のきれ/内藤丈草
壁つゞる傾城町やくれのあき/炭太祇
壁と壁嘆きあひけり蓬餅/河原枇杷男
せきれいや壁土こぬる畔のうへ/磨盤
壁にさす小溝の刎ね竹枕/秋元不死男
秋風や壁のヘマムシヨ入道/小林一茶
秋風や壁にはためく書一軸/石井露月
そのあとの壁青々と雛納め/小林波礼