俳句例:101句目~
雨蛙嘘いつはりのなきこゑか/飯田龍太
露天商の本音も嘘も果大師/辰巳あした
青天と辛夷とそして真紅な嘘/三橋鷹女
鰯雲男女に嘘の織り交ざる/河野多希女
鷽鳴くや男の嘘とをんなの嘘/吉田未灰
ソーダ水男の嘘の解きやすし/谷口桂子
一生の嘘とまことと雪ふる木/寺田京子
三鬼昇天嘘にはあらず蟻歩む/岸風三樓
人間の嘘生きはしる空つ風/能村登四郎
六月の晴連れだちて嘘聞きに/渡辺民子
冷酒や老いて達者に嘘もつき/赤尾恵以
初秋の富士に雪なし和歌の嘘/正岡子規
別れ路や嘘実かたみに冬帽子/石塚友二
口にして嘘いきいきと台風裡/内田美紗
ソーダ水心ならずも嘘を言ふ/内山泉子
嘘すぐに見抜かれさうな冬日和/上村占
嘘ついて軽く葡萄の種吐きぬ/菖蒲あや
嘘つかぬ舌も真つ赤ぞかき氷/橋本榮治
嘘のやういまは墓参も攝待も/田中裕明
嘘の壷抱いてのろのろ蝸牛/小泉八重子
俳句例:121句目~
嘘ばかりつく男らとビール飲む/岡本眸
嘘ひとつ言ひし間に蟇うごく/谷口桂子
嘘をいふ息の白さの澱みなく/鈴木貞雄
嘘を実に替ふ神親し鷽を替ふ/駒木逸歩
嘘を言ふシヨール臙脂に雪ぼたる/龍太
嘘一つつけぬ夫ゐて四月馬鹿/東川弘子
嘘多き世に唐辛子赤きかな/成瀬櫻桃子
嘘見抜く目は左利き鳥おどし/村上澄子
嘘言はぬ北の白さの牛の舌/平井さち子
嘘言へぬ顔向日葵が覗きをり/岩波竹渓
嘘言へば嘘がまことや竹煮草/今井和代
四月馬鹿人の死に嘘なかりけり/安住敦
国宝に触るるべからず嘘の秋/和田悟朗
多忙の身春愁なしといふは嘘/山田弘子
夜の梅小さな嘘を聞き流す/成澤たけし
秋風にひとり歩きの嘘往けり/高澤良一
春光に嘘ひとつなき馬ぞ立つ/横澤放川
暖かや母をなだむに嘘すこし/川村紫陽
朧夜の嘘が大きく育ちをり/藤原たかを
死ぬといふ嘘を重ねて生身魂/石垣幸子
俳句例:141句目~
浮世とは下戸の嘘なり花に酒/正岡子規
炉話の嘘もまことも尽きて春/橋本榮治
町中が嘘のトマトを信じてる/河西志帆
病む人に嘘を重ねて水中花/亀尾よりえ
病む人に白き嘘言ふ朝ぐもり/堀口星眠
病む友に嘘ばかり言ふいわし雲/林民子
病人へ嘘いくたびや棕櫚の花/嶋田麻紀
白菜をむさぼり嘘を吐かぬ男/林原耒井
目の前を大きな嘘のやうな雪/高澤良一
福笑ひ嘘うつくしき京ことば/角川春樹
空にまで嘘をつかれて万愚節/菅生一文
紅葉に誓つてこれが最後の嘘/福本弘明
いま言ひし嘘がかなしきソーダ水/岡本眸
曼珠沙華真赤な嘘でかたまれり/伊藤敬子
うそつきの嘘を待ちをり凌霄花/仙田洋子
外套重し受話器の底の嘘を聞く/松村多美
嘘こそ愛松葉牡丹は箱に咲き/山口素人閑
お十夜の法話に嘘を交へけり/武田無涯子
きぬかつぎつるり嘘つく夫の舌/熊谷愛子
ぢかに踏む渚嘘つぱちな女の夏/菖蒲あや
俳句例:161句目~
花にかなしをとこの嘘も真実も/谷中隆子
御神火へ嘴下げて辞儀初嘘鳥/平井さち子
嘘から出て遠き蘆生にわけいる駒/竹中宏
嘘いふて歯を抜かれたる瓢かな/佐藤紅緑
ひとの嘘よく見ゆる日や菊膾/本庄登志彦
花火師が棲む島みつけ嘘をつく/阿部完市
べつの蝉鳴きつぎ母の嘘小さし/寺山修司
草に露きれいな嘘がありました/坪内稔典
よき父として嘘に乗る三鬼の忌/橋本榮治
りんだうに別れ寸前寸後の嘘/赤松ケイ子
ゐのこづち生徒一人が嘘を言ふ/益永涼子
菜の花のきのふの雪は嘘なりし/田中裕明
木瓜の花まかり通りし嘘もあり/荒田勝代
葱きざむ子の嘘許すべかりしや/西村和子
嘘言ひし口淋しくて新茶汲む/宍戸富美子
悴みてすぐ知れる嘘ひとつ吐く/山田弘子
干飯や中州まで嘘もちこたえ/石田よし宏
悴みてちひさな嘘が言へぬなり/香西照雄
嘘愉し春の果実を買ひ来ては/千代田葛彦
蓮開くとき音立つと嘘のよき/宇多喜代子
俳句例:181句目~
父子二人裸となりて嘘もなし/細木芒角星
牡丹育てて子を念はずといふは嘘/安住敦
玉葱や嘘も上手につけなくて/鈴木由里子
嘘質すべきか椿の真くれなゐ/稲垣きくの
生ひ立ちにすこし嘘ある団扇かな/樅山尋
嘘少し薬にまぜて風邪の子に/野口たもつ
子の嘘を聞きをり紅き夜の林檎/伊藤孝一
扇風器嘘と知りつゝうべなふも/玉野文蔵
薄墨桜/きれいな嘘を下さいな/松本恭子
病む人へ嘘いくたびや棕櫚の花/嶋田麻紀
南畝の忌嘘をまことの種として/高澤良一
医師の嘘信じて日傘ひらきけり/矢野聖峰
見抜かれし嘘にたじろぐ葱坊主/田中洋子
白玉や愛する人にも嘘ついて/鈴木真砂女
女の嘘牡蠣とレモンを胃に染ませ/三谷昭
目つむりて嘘と本当と曼珠沙華/福神規子
人の世の嘘に汚れし白ハンカチ/下山宏子
真夏日のライスカレーは嘘つかず/鈴木明
鉄錆びてたとえば嘘の匂いかな/南村健治
陶肌の雛の唇から嘘つぎつぎ/文挟夫佐恵