俳句例:201句目~
蝉穴に残夢整理の水注ぐ/流ひさし
春暁の夢の土橋の故里よ/高柳重信
短夜の色なき夢をみて覚めし/麦南
夢にまで浪音重ね年詰る/伊藤京子
山吹に夢の又夢求めゆく/和田悟朗
短夜の夢の白さや水枕/鈴木しづ子
夢にも人に逢はぬ峠の夕桜/島田柊
短夜の夢の満身創痍かな/森田公司
春雪に黒き足跡夢疲れ/小檜山繁子
夢に似てうつゝも白し帰り花/蓼太
短夜の夢に極彩色の鳥/片山由美子
山桜切にひと日の夢の色/田沼文雄
短夜の夢にはあらぬ穂高見ゆ/民郎
短夜の夢なら覚めな樽碪/尾崎紅葉
青写真少年の夢育ちをり/山田聴雨
睡蓮の紅白妻も夢保て/中村草田男
眼にもせぬ蠍を夢に島泊り/上村占
春近し一人歩いて夢探す/岩瀬鴻水
春秋と移る夢路や雁の声/松岡青蘿
盆の夢大きな川をかたはらに/黛執
俳句例:221句目~
白髪に蜜光りけり夢の秋/攝津幸彦
亡き人の夢の短し春一番/細川良子
夢に舞ふ能美しや冬籠/松本たかし
夢に色あらば淡墨桜かな/西川五郎
形代に桃色人に夢多き/後藤比奈夫
現とも夢とも古代蓮の色/河本遊子
猫の夢上に胡蝶の狂ひ哉/正岡子規
夢に触れし父の荒髭露晨/福永耕二
残月やと化したる夢さめて/中勘助
夢のいろのうす紅や花林檎/及川貞
父と子の夢食ひ違ふ心太/高橋悦男
父が夢の煉金薔薇霧暗し/内藤吐天
夢のまた夢に覚めけり櫻鯛/石寒太
まだ夢に父に蹤く母萩の門/杉本寛
滝壺にゐて真白き夢を作す/松澤昭
年の夜の夢に入りたる山の雨/澄雄
湯婆の都の夢のほの~と/高浜虚子
清衡が夢みし花の仏国土/高澤良一
年寄の夢の淡さよ宝船/後藤比奈夫
涼しさや夢もぬけ行く篭枕/乙/由
俳句例:241句目~
海流は夢の白桃のせて去る/桂信子
一炊の夢のくさぐさ雪霞/深谷雄大
夢の端に拘つてゐる白絣/根岸善雄
亡き夫の声又夢に明易し/石川靖子
浮寝鳥夢は渡りの幾山河/吉田文伍
櫻貝母と拾ひし夢に見し/羽野蕗村
夢の辻曲り違へて蜷の昼/柿本多映
流鶯や夢の扉は半開き/河原枇杷男
一炊の夢たづさえて雪虫来/豊口陽子
一炊の夢のわれかも桃の花/原コウ子
一睡にもの食ふ夢や年の暮/小川軽舟
一睡の夢に疲るる四温かな/植村久子
邯鄲の夢はじまりし水中花/橋田憲明
逆巻ける怒濤立浪草の夢/後藤比奈夫
七十路は夢も淡しや宝船/水原秋櫻子
蜆汁母在りし世を夢かとも/三森鉄治
走馬燈母の夢にも早瀬あり/齋藤愼爾
昇天の夢や見るらん春の風/正岡子規
木枯や眠れば暗き夢ばかり/松尾金鈴
上官を殴打する夢四月馬鹿/沢木欣一
俳句例:261句目~
不忍や水鳥の夢夜の三味/河東碧梧桐
不忍や水鳥の夢夜半の三味/正岡子規
覚めて夢眠りて宇陀の大桜/橋本榮治
世の中の夢は夢見る胡蝶哉/正岡子規
朧月セピヤの彩の夢紡ぐ/岸/あい子
嬰は夢に大空_み辛夷の芽/田所節子
裏白や野山歩きし今朝の夢/滝井孝作
亀鳴くや夢は淋しき池の縁/内田百間
予言者の哄笑耳の夢ほぐす/春海教子
蝶しばし舞ふや翁の夢の上/正岡子規
子の嘘は子の夢岩を縫ふ蛍/成田千空
亡父の夢覚めて懐かし鉦叩/河津紅子
朝顔のむらさきの夢の谷間/桑原三郎
朝霧や繪にかく夢の人通り/蕪村遺稿
子の夢の数ほど飾り聖誕樹/山田弘子
人様の夢に出て春全うす/佐々木六戈
蛇になる夢の廣野の若葉哉/会津八一
今ここに在るは夢なり蝸牛/澤井我来
蚊柱に夢の浮はしかゝる也/榎本其角
虫吐きし夢と香炉に明易き/宮武寒々
俳句例:281句目~
朝寝して白波の夢ひとり旅/金子兜太
余生にも夢の掛橋夏の旅/木寅美津子
余生にも託す夢あり初暦/小島シズ子
薄氷も夢やそよそよ秘晩年/永田耕衣
薄明の夢のすさびや雁渡る/鈴木慶子
蕗の薹ほどの夢もち甲陽忌/村越化石
僧兵の夢を育てた谷に雪/牧田正太郎
新秋や女体かがやき夢了る/金子兜太
蓮さいて親子は夢のわかれ哉/中勘助
八千草も夢猫も夢妻も夢/後藤比奈夫
六月の夢の怖しや白づくし/岸風三樓
明易の夢の出口が見つからぬ/伊藤格
蒼天の夢を淋漓と筆始め/すずき波浪
冬の水明け方は夢あまたみて/徳弘純
葱煮るや還りて夢は継ぎ難し/森澄雄
明易し夢継ぎたして母に逢ふ/渡辺昭
葱きざむ還りて夢は継ぎがたし/澄雄
明易し夢に入りくる鳥の声/西澤厚子
冬海や念の夢の伊良古崎/松根東洋城
冬瓜や改造農家夢肥やし/百合山羽公