俳句例:101句目~
俗界を離れし夢を白芙蓉/古市絵未
薄氷と水の間の夢ごこち/折井博子
月白く柿赤き夜や猿の夢/正岡子規
その人の夢路も花の明りかな/辰下
天落つる夢虹渡る夢涼し/藤井彰二
谷冷えの紅葉せかるる夢が淵/原裕
兵疲れ夢を灯しつゝ歩む/片山桃史
夢違てふ春愁の観世音/下村ひろし
傾城の夢に殿御の照射哉/正岡子規
夢違観音仰ぎ年惜しむ/市野沢弘子
誰が夢の骸骨こゝに枯芒/正岡子規
雑に置き米塩の類夢の類/大木石子
ちると見し夢もひとゝせ初桜/几菫
黄沙降る少年の夢語れ語れ/今井豊
手まくらの夢ハかざしの櫻哉/蕪村
天高し夢に梢を踏み歩く/岩田由美
嫩草や石工の夢の橋残り/三浦健也
松籟に夢や通へる僧昼寝/松藤夏山
はつ夢や正しく去年の放し亀/言水
見残した胡蝶の夢や遅桜/正岡子規
俳句例:121句目~
金屏の裡の泊りに父の夢/木村蕪城
妊れる事の怡しき秋の夢/久米正雄
骨の犬薄に夢の月が出て/和知喜八
金婚の夢となりたる初暦/武田道子
沼枯るる茫漠夢と境無し/宮津昭彦
菊畑や夢に彳むむ八日の夜/千代尼
菊枕二つ重ねて夢もなし/手塚美佐
出歩けば即刻夢や秋の暮/永田耕衣
初夢の夢の叶はぬ足袋をはく/径子
初夢や夢一ぱいの帆かけ舟/龍岡晋
体内の白の目が夢に来る/和知喜八
初蝶を夢の如くに見失ふ/高浜虚子
花鳥もおもへば夢の一字かな/成美
何もかも夢も抜けたり籠枕/森澄雄
沈酔に夢も夏野のしかいふな/多少
汗の旅夢で橋白鳥となり/友岡子郷
宝船夢の名残もなかりけり/安住敦
宝船敷寝の旅に夢もなし/福田蓼汀
十萬の髑髏の夢や草の霜/正岡子規
半身は夢半身は雪の中/宇多喜代子
俳句例:141句目~
卒寿にもいささかの夢更衣/保津操
花をやる桜や夢のうき世もの/すて
原稿も夢も累々たる九月/折井紀衣
暗き波ばかりの夢の桜鯛/鈴木鷹夫
口中に枯野ある夢断続す/栗生純夫
古沢や月に涼しき鷺の夢/正岡子規
古衾古人の夢もなかりけり/原抱琴
只の夜の夢の枕や月の昼/上島鬼貫
只の時も吉野は夢の桜哉/井原西鶴
号外や昼寝の夢を驚かす/正岡子規
暁暗にはや地一つの夢紛れ/松澤昭
暁の夢のつづきや雁渡る/市堀玉宗
水鶏聞て今見し夢を淋しがる/紅緑
蘭五千鉢の匂ひて夢心地/後藤弘子
旅に病で夢は枯野をかけ廻る/芭蕉
国境へ夢の速さに水流れ/対馬康子
船火事の夢覚め朝の馬冷す/皆吉司
土筆生ふ麻酔の夢の滑稽な/斎藤玄
水鳥や榮華の夢の五十年/正岡子規
膝にふる木のはを夢や馬の上/梅室
俳句例:161句目~
暁の夢かとぞ思ふ朧かな/夏目漱石
昼顔の夢の渚へ歩み入る/岸原清行
酒さめて楓橋の夢霜の鐘/正岡子規
夏雲や夢なき女よこたはる/桂信子
夏雲や草千里とは夢千里/岸原清行
羊飼夢を抱きて霞みけり/野村喜舟
羅を着て茶を點つる暁の夢/及川貞
罌麦の露を夢る日方かな/尾崎紅葉
綿虫や晩年むしろ夢多き/宮下翠舟
終の夢さめて応ふる鐘もなし/宗坤
水鳥や夕べの夢を浪の上/水田正秀
紅葉山夢のとおりに道迷い/渋谷道
紅梅の夢白梅のこころざし/大串章
籠枕眞晝の夢はすぐ忘れ/吉屋信子
夢いくつ一夜に重ね覚めて秋/林翔
夢いくつ並べて消えて獺祭/斎藤翠
籠枕並べて夢のすれ違ふ/土生依子
小夜の雪酒屋が夢を破りけり/笑石
藪入りの夢や小豆の煮える中/蕪村
竹奴夢に七賢と遊ひけり/正岡子規
俳句例:181句目~
竜胆のこの径夢に見たる径/橋間石
水鳥の夢宙にある月明り/飯田龍太
空泳ぐ鯨の夢をハンモック/芹沢保
少年のゆめ老年の夢竜の玉/森澄雄
空に夢航空館のひな飾り/安西秀子
稻妻や一聲鳥の夢に鳴く/正岡子規
少年の夜々の夢なる兎罠/石塚友二
少年の夢のシグナル蛍籠/中村智子
冬休み少年鳩と夢育て/土田祈久男
夢で叱る先生のをり秋桜/橋本榮治
秋風や夢の如くに棗の実/石田波郷
水鳥の夢は真昼の雲の中/川井玉枝
面白さ皆夢にせん宵の春/正岡子規
大寝坊夢は時雨にほとびけり/可躍
青鬼灯ふくみ幼き夢戻る/川元安子
夢をみるための手枕春隣/信濃小雪
夢ながら蝶も手折や花戻り/千代尼
黒板と靴下同じ夢を見き/攝津幸彦
短夜や夢も現も同じこと/高浜虚子
一声は夢よりはかな時鳥/正岡子規