俳句例:201句目～
息自く訪うて雑寝の歌枕/萩原麦草
今朝いかに鼠かみつく枕の秋/露泊
仏法僧枕並べし他郷かな/菅原鬨也
打返す枕に虫の遠音かな/井上井月
故郷の虫の浄土に枕並べ/成宮紫水
旧端午探りの宿り歌枕/長谷川/裕
明易き枕本尊ありにけり/尾崎迷堂
春の暮かりねの枕はつれけり/雪居
春深し耳あてて寝る仮枕/宮武寒々
兄達の枕はさくら熊野灘/夏石番矢
春眠の枕大きく婚期過ぐ/菖蒲あや
春眠や旅の枕に水ながる/原田豊子
春雨や心のまゝのひじ枕/井上井月
六月や枕高くて怯懦なる/河野南畦
春雪の悪霊乗りし夜の枕/小林康治
昼の鳶高きに賢治記念館/藤田枕流
昼を寝て枕の固き西東忌/田中荒砂
暖や寐足りし枕はなれ時/渡辺波空
曲て寝る枕も痩て老の秋/横井也有
月雪もふるき枕にとし暮れぬ/杉風
俳句例:221句目～
木犀に一睡ほりす枕かな/河野静雲
末枯の近江に枕重ねつつ/柿本多映
あいの風松は枯れても歌枕/巌谷小波
露の夜の枕三つや相寄せて/岸風三樓
あやめさく畦を枕に戦死かな/森鴎外
露の夜に黍殻枕軋み寝る/百合山羽公
浮寝鳥うすき枕をうら返す/木村虹雨
雪林の静謐をこそ除夜枕/千代田葛彦
あるは又松の根枕ひるね人/西山泊雲
宝舟さざなみ打てる枕かな/渡辺恭子
春雨を枕に耳をあてて聞く/京極杞陽
春暁の夢は枕に封じ込む/ふけとしこ
寄れ枕ふり海鼠になりし鼠かな/秋色
紙枕がわがわと鳴る坊夜寒/向野楠葉
うそ寒や黒髪へりて枕ぐせ/杉田久女
雪国の闇に置きたる枕かな/黒田杏子
雪の夜を当つる枕は白鳥か/三橋敏雄
雨脚の見えて明るき桜桃忌/藤田枕流
明け易き枕邊の蟻潰しけり/内田百間
春愁や派手いとへども枕房/飯田蛇笏
俳句例:241句目～
寒夜さめふと枕燈に霧の笛/赤尾兜子
雨聞いて枕につきぬ花の宿/清原枴童
枕へと朧を通ひつめにけり/杉野一博
雨月かな河原に枕近すぎし/鳴戸奈菜
桃さくや李白は樽を枕にて/正岡子規
きり～す鳴くや雨夜の腕枕/井上井月
闇涼し灯影ちらつく枕ばし/正岡子規
長き夜の頭をきらふ枕かな/桑原三郎
こがらしをゆめに躱すかさし枕/郁乎
昼過ぎの枕はたけば草蜉蝣/永末恵子
篭枕軽き頭をのせにけり/天河真佐子
銀河濃し枕に頬を埋め寝る/星野立子
寝冷子の抱へし枕大きかり/金田咲子
朝の間や蚤に寐ぬ夜の假枕/井上井月
笹の葉に枕付けてやほしむかへ/其角
朝の日の障子にとゞく枕かな/上村占
枕香の梅をみよとの旅路かな/炭太祇
せせらぎを枕の下に昼寝覚/石井龍生
ぜんまいの強き渦見し夕枕/永島靖子
邯鄲につかれ忘れる枕かな/正岡子規
俳句例:261句目～
軒つばめお紺の枕灯し見る/宮武寒々
竹の花うなづきゆけば白枕/夏石番矢
そろばんを枕の旅人春の蚤/宮武寒々
たましひの枕してゐる烏瓜/柿本多映
熟睡せり梅雨禽声に枕して/堀口星眠
枕邊のものゝ形や初明り/鈴木洋々子
燈籠の暗き畳に枕かな/長谷川零餘子
短夜のみ枕北にわが父たり/岸風三楼
畦塗りし脛のほてりに足枕/太田土男
表裏なき枕蛙の目借時/長谷川久々子
枕蚊帳に通ふ風あり針仕事/島田青峰
渡り鳥船の枕に日の匂い/相原左義長
螳螂の石を枕にはてにける/正岡子規
枕膝に肱にせむ哉月ひと夜/加舎白雄
蚊喰鳥この緋枕のみる夢は/後藤綾子
ひときはは凩ちかきひぢ枕/三好達治
竜胆の夜風枕に眠るかな/中西美華穂
枕にもなれよ旅寐の春の鹿/松岡青蘿
ひと夜さの枕を味方袋角/正木ゆう子
父よりも子の靴大き雪解風/藤田枕流
俳句例:281句目～
立冬や父の枕の重かりき/片山由美子
ぶりぶりやあるは添乳の枕にも/重厚
蚊を打つや枕にしたる本のかさ/其角
蚊の居らぬ月見て沖の楫枕/正岡子規
竈馬来て独りの枕渡り過ぐ/小坂順子
稲雀風をくゞりて枕みけり/松藤夏山
虫声の海が枕を引きに来る/川崎展宏
昼すぎの枕はたけば草蜉蝣/永末恵子
薬飲むさらでも霜の枕かな/松尾芭蕉
月落ちて枕にひゞく砧かな/羅蘇山人
みえてゐる枕一つや泉殿/加藤三七子
枕立て狐の声を恋ひわたる/後藤綾子
母よりは祖母の匂ひの篭枕/島田恒夫
枕灯消し牡丹の香に眠る/橋本真砂子
薪割の枕出でたる雪間かな/茨木和生
蕎麦殻を枕につめる夜寒哉/寺田寅彦
蓬髪の枕にもつれ夜ぞ長き/高濱年尾
わが枕には山姥の木の葉髪/品川鈴子
葉がくれの枕さがせよ瓜ばたけ/蕪村
押入れに使はぬ枕さくらの夜/桂信子
