過去に関連した俳句の例をまとめました。
過去を含む俳句例
過去永く行手短かし稲光/石塚友二
川上に一燦の過去竹煮草/飯田龍太
塩田も造船も過去鳥雲に/山下美典
過去未来なき今熱し玉子酒/籏こと
櫻貝過去の人ほど鮮かに/古舘曹人
石愛し過去を語らぬ懐手/千賀静子
寒詣過去は谺の割れる先/首藤基澄
落椿煌と地に在り既に過去/楠本憲吉
白靴に男の過去は匂はざる/行方克巳
瞬きて過去よりもどる細雪/福永耕二
花冷や過去映すまで鏡拭く/有馬朗人
消炭の過去の又燃え上りけり/上野泰
未来より過去の遠しよ粥柱/吉田順子
過去よりも短き未来春の雲/西田静子
過去は右へ右へ朧の絵巻物/岡崎桂子
晩節や遠き過去より一螢火/齋藤愼爾
羅や逢はざる過去が甦る/河野多希女
冬萌や過去も未来も一炉辺/加藤楸邨
蜜豆や女は過去を語らざる/野村汀老
葭障子銀瓶ひとに過去ありき/及川貞
俳句例:21句目~
浅蜊椀無数の過去が口開く/加藤楸邨
片蔭に過去の片蔭終戦日/百合山羽公
過去苦く柘榴一粒づつ甘し/鷹羽狩行
筍山西へ行くほど過去深し/脇本星浪
廃屋の藤過去の少年和解せず/仁平勝
春の雲ほうつと白く過去遠く/富安風生
春泉にかがめば過去の顔々々/橋本榮治
落葉降る数過去となる時の数/新明紫明
昼のこともう過去となる月見草/星野椿
時の日や鸚鵡は過去を饒舌に/矢崎硯水
蛇を見し午後を過去とし夜の帯/岡本眸
蜩の声より過去となりゆけり/油布五線
胸中に過去の明るし白地着て/櫻岡素子
谷底へ過去張りついて青芒/河野多希女
美しき過去となりつつ虹消ゆる/長田等
どの庭も柿を育てて過去の景/和田悟朗
細い蛇落葉の谷へ過去埋めに/中島斌雄
満月に一夜足りない過去未来/登石詩子
赤蜻蛉父ゐし母もをりし過去/嶋田一歩
過去に又過去重なりぬ福寿草/加藤国彦
俳句例:41句目~
わが過去へ流るゝ如し天の川/山内山彦
過去はみな鏡のごとし秋の風/柴田白陽
過去へ向く己れ宥せず冬夕焼/河野南畦
過去忘じがたくそうろう夏の雲/黒木俊
過去未来つなぐ花野に旅立てり/島みえ
水の過去水の未来に温みそむ/稲畑汀子
過去未来一縷は朱で春の闇/河野多希女
一切は過去と云うても敗戦忌/高澤良一
過去諸仏未来諸仏や火を埋む/尾崎迷堂
過去遠くなるばかりなる更衣/岡安仁義
遠蛙過去を語れば過去明るむ/楠本憲吉
鏡割り過去亀甲に乾きをり/秦野智恵子
雪嶺に立つ父の過去子の未来/京極紀陽
雪洞の過去花に浮き人に浮き/蜷川露子
黄昏の白梅過去となつてゐし/角谷昌子
初晴れや戦は遠き過去とせむ/城谷登美
十人の過去は十色に針供養/町田しげき
千本の過去は知らざり針供養/石山正子
照り返えす過去黍畑に雄の馬/金子兜太
古暦過去を捨て去るごとく捨つ/戸田豊
俳句例:61句目~
夏服の皺や男は過去燃ゆる/米澤吾亦紅
夕霧に過去のごとくに町沈み/村松紅花
大冬木叩いて過去と訣別す/清武夫美子
大試験茫々過去の中に去りぬ/山口青邨
太陽の旺んなる過去晰蜴出づ/白岩三郎
梅雨の藪要塞地帯過去ばかり/桂樟蹊子
屈葬の過去も冬日を母として/有馬朗人
捩花親の因果は過去のこと/磯崎ゆきこ
男物裁つ寒色の過去ひろがり/寺田京子
炎上を過去に金閣かぎろへる/今井妙子
楪の互ひに知らぬ過去のあり/溝口博子
押花の菫見てゐて過去が冷ゆ/鈴木鷹夫
沖縄の片蔭過去をのみて濃し/沢たか女
日脚伸び過去語るとき人亡ぶ/丸山嵐人
籐椅子にある父の過去我の過去/松尾白汀
花嫁の輿来る過去の花野より/文挟夫佐恵
花夕焼過去まぼろしの如くかな/高田自然
この山の過去世の桜咲きにけり/角川春樹
花冷や母泣かす過去いくたびも/田中立夫
すみれ濃く茫々たるや過去一切/内藤吐天
俳句例:81句目~
わが過去に角帽ありてスキーなし/森田峠
わが過去の双六に似て行き戻り/伊東白楊
米研ぎつ過去へさらさら冬の山/安井昌子
月天心過去を流してジヤズ流す/近藤安子
月見草夕べを過去としてしぼむ/甘田正翠
秋草に跼みしこともすぐ過去に/野路斉子
爆じけたる過去ほろ苦き山椒の実/安田孝
水涼し過去一切を惜しみなく/柴田白葉女
過去未来触れぬ会話や夜半の春/谷口桂子
今つぶすいちごや白き過去未来/西東三鬼
秋灯を消して一事を過去とせり/中村堯子
秋嶺に手帳失ひ過去なきごとし/岡田日郎
冬の河さびしき過去の翳もてる/伊東宏晃
初夏や憂き出来事もいつか過去/高木晴子
春潮や過去がほどける夢つれて/宮崎敦子
忘れ雪未来はなやぎ過去うする/西本一都
烏蛇みるまに過去のものとなる/横山白虹
蒲の穂の鈍色人に知られぬ過去/青木千秋
虫籠や財過去のもの愛とても/鈴木真砂女
悲しさも少しづつ過去毛糸編む/林千恵子