俳句例:201句目～
しのゝめの窓の燈を消す薺かな/高橋淡路女
雨のまま暮れて瞼の植田を消す/林田紀音夫
夫帰りて灯を消す厨や虫淋し/長谷川かな女
晩雪を掌に受くのぞみ消すまじや/細谷源二
浮浪児が土に描く絵を消す野分/加藤知世子
ショーのあと消す氷盤に水撒きて/津田清子
新樹の中の訓話をやさしい風が消す/穴井太
青年医師の靴跡雪舞ひ下りて消す/野澤節子
新涼の絵図に消す山一つづつ/長谷川かな女
オホーツクの霧歯舞消し色丹消す/津田清子
燭の火をーつずつ消し帰雁を消す/中島斌雄
大文字のあな点きし雪洞を消す/稲垣きくの
晩涼のいまを惜まむラヂオ消す/篠田悌二郎
山葵沢みる間かき消す霧を怖る/稲垣きくの
消すまじき育つるまじき火は埋む/京極杞陽
わが消す灯母がともす灯明易き/古賀まり子
火なき炉の灰に秋風と書きて消す/大野林火
鬱の日のさき行く轍消すはわたし/米元元作
鳥雲に文字消すキーと覚えたり/太田美沙子
夜の新樹書いてまた消す追悼記/つじ加代子
俳句例:221句目～
疾風沐雨ひとりの灯消す秋の蚊帳/石塚友二
萩刈りてすこしづつ消す萩明り/後藤比奈夫
灯を消すや障子の裾に及ぶ月/阿部みどり女
朧夜の消しゴムで消す我が名かな/有馬朗人
日蝕のシナリオ戸籍を消すことも/畑井貴晶
ただよへる梅雨蝶山雨打つて消す/福田蓼汀
隣り家も灯を消すころやすがれ虫/村山古郷
地上では旅人なりと冬の灯消す/田川飛旅子
黒牛の瞳を消すまつ毛冬ぬくし/赤松けい子
朝の灯の消すには早し慈姑糶る/為成菖蒲園
ダビデの死まで読みて消す夜長の灯/宮脇白夜
レグホンの汚れ月消す死を誰が消す/香西照雄
百足虫走る飛び火消すごと叩きけり/半澤清隆
かげろふをまたしても消す犬ふぐり/下村槐太
ともしびを吹消すあとの時雨かな/水原秋櫻子
虹の環を消すまじと子のおとなしき/内藤吐天
蚊帳くぐる妻の消す灯をわれ消して/田村了咲
てのひらに手をかさねつつ罪を消す/大西泰世
青葉木菟いつせいに消すお山の灯/つじ加代子
見てをれば風が消すなり縞めだか/八木林之介
俳句例:241句目～
キャンプ更け残り火を消す山の雨/坂本山秀朗
車庫に入りバスが灯を消す十三夜/猿橋統流子
時雨るると立ちて灯を消す湖畔の夜/吉年虹二
野火を消す咒文や臼に伏せにけり/廣江八重櫻
たま来ると夜半の焚火を靴で消す/長谷川素逝
病む友は如何に吹雪の消す浅間/鍵和田ゆう子
ぼそぼそと/声消す婆の冷たい粥/江村おの江
草刈りしにほひ消す雨降りにけり/成瀬桜桃子
われを消すものほうほうと蓮枯れて/手塚美佐
山に眼の見てをると消す涼しき灯/篠田悌二郎
少しづつ虹消すパンを千切りをり/本庄登志彦
もやすでも消すでもなふて蚊遣り哉/横井也有
いとど跳ぶ旅の灯を消す身のうしろ/豊長みのる
いまはむかし壺で炭火を消すことも/長谷川照子
落ちし火を消す役もゐて修二会かな/ふけとしこ
蜜柑摘むランプ一つを消すごとく/小田木弥栄子
すこし眠って思い出も消す蟹獲り老人/伊丹公子
いちにちを老いし灯を消す夜のちちろ/新明紫明
あめんぼうの生まれては消す水輪かな/水口ひろ子
翠巒を降り消す夕立襲ひ来し/杉田久女「杉田久女句集」
俳句例:261句目～
海底に降り積む雪は青年を眠らせてわが画面を消すも/黒瀬珂瀾
日に向きてまぶしみ眠る老猫の春の記憶を消すすべもなし/武市房子
あかときの雪降るまえの寂かさとおもいて卓にともる燈を消す/三枝浩樹
