俳句例:101句目~
十年もゐる顔をして蟇/今瀬剛一
十月や冷たき蝿の顔へ来る/古巌
炎天に別れ役者の顔忘る/石寒太
行年や何に驚く人の顔/尾崎紅葉
草叢の猫も顔あげ薪能/星野一夫
各各の水洟顔や金の事/会津八一
苗代やうれし顔にもなく蛙/許六
芽木太し年少教師顔赧らむ/子郷
芹匂ふ顔白むまで雲を見て/子郷
花冷の顔ばかりなり雲の中/波郷
花の前に顔はづかしや旅衣/園女
賀茂祭潰れた顔の牛童/京極杞陽
楪葉や遠い昔の父の顔/山本敏倖
甘藍の畑に犬の顔高し/岸本尚毅
桜鯛持て来弁慶顔をして/辻桃子
月光に篝に顔のなき踊/西本一都
顔といふ凹凸の有り春鏡/乾澄江
死顔は人の輪の中鰯雲/古舘曹人
水底を見て来た顔の小鴨哉/丈草
罪深き顔の多さよ桜狩/正岡子規
俳句例:121句目~
百姓の訴訟顔なる蛙かな/毛がん
繭玉や父を忘れし母の顔/岸田稚
大年の我顔惜む鏡かな/大谷句仏
朝寝して餅花かざす顔の上/林翔
大般若老若男女菩薩顔/熊谷喜一
大衆真鱈の顔の冬親し/高澤良一
筍の尖きが笑へる仏顔/河野南畦
朝鵙や吾健康の顔洗ふ/羽村佳川
竹匠の星に向く顔釣忍/斎藤夏風
鵜の顔に暁の風吹きつけぬ/船山
文債や鏡の中に寒い顔/福士光生
穴子漁船待ち顔の嬶衆/高澤良一
水団扇水散点す顔の上/正岡子規
稲光顔の山脈瞳の海よ/高原耕治
秋風を我もの顔や旅袋/上島鬼貫
秋風や顔虐げて立て鏡/飯田蛇笏
秋風や童眸におく顔隠/古舘曹人
秋風や天守閣より妻の顔/岸田稚
秋風の天守閣より妻の顔/岸田稚
秋風に安住敦の渋い顔/高澤良一
俳句例:141句目~
将門が顔して神田祭衆/愛澤豊嗣
村中の先生顔や稻の花/正岡子規
秋深し長病む父の佛顔/町田敏子
山氷りくぐつの顔に薄埃/上村占
祭衆ひとりは朝日顔に浴び/信子
檜扇の葉に漏る顔や燕子花/嵐山
行春や放菴の牛ひとの顔/上村占
海鼠突巌の如き顔をせり/大串章
人顔も旅の昼間や神無月/炭太祇
硝子戸に夏山睡り父死顔/中拓夫
三人の斜めの顔や祭笛/高野素十
己を視むと梟の顔廻す/大島雄作
布子著て淋しき顔や神送り/去来
砂町に顔洗ひをり露葎/石塚友二
浮世絵の女房顔に更衣/京極杞陽
枝豆や月明かに人の顔/石井露月
幼な顔残りて耳順更衣/本田豊子
短日の顔ふりむけば陽の虜/原裕
枯木山顔も洗面器も洗ふ/小澤實
ちゝはゝの顔秋嶺の深刻み/原裕
俳句例:161句目~
短日の顔ふりむけば日の虜/原裕
御影講や顔の青き新比丘尼/許六
蝋色の顔のゆき交ふ椿山/桂信子
盆の道万博呆けの顔浮かす/原裕
活の顔に疵あり春の宵/岩井如酔
息災の一つの顔も夏木立/上村占
襟巻の狐の顔は別に在り/高濱虚子
髪はえて容顔蒼し五月雨/松尾芭蕉
むさき雲迷惑顔に望の月/高澤良一
人の顔俄にさむし鶫とぶ/右城暮石
頬冠りとれば苗代寒の顔/名見崎新
掌に顔を隠して涅槃泣く/古屋秀雄
春愁や鏡に沈むおのが顔/日野草城
ここぞ命顔淵が命夏の月/山口素堂
むづかしき顔して蝗負ふ蝗/山口速
面脱げば赭顔の農夫梅祭/福田蓼汀
逃亡の果の鼬の小さき顔/二村典子
七本立厚物菊のここが顔/高澤良一
癆咳の顔美しや冬帽子/芥川龍之介
香煙に顔数多浮き初閻魔/和田冠峰
俳句例:181句目~
首巻に顔包む人や梅の花/正岡子規
養父入の顔けばけばし草の宿/太祇
面に化す驚愕の顔寒の雨/平井照敏
送り火や顔覗きあふ川むかひ/太祇
入学の顔の輝き揃ひけり/稲畑汀子
掛香や扇は顔の玉すだれ/井上井月
物言はぬ顔となりけり冬籠/山田人
旅人の顔洗ひ居る清水哉/正岡子規
春山の上に顔出す湯治客/前田普羅
何事もおどろかぬ顔秋の暮/桂信子
風鈴をつるす忽ち顔一つ/小池文子
風邪顔が鏡の奥に停年後/河野南畦
青田道来て礼拝の顔揃ふ/谷島/菊
採寸の児のすまし顔春隣/村山/良
送り火や顔覗あふ川むかひ/炭太祇
三椏の花に顔あげ古りし山/上村占
風神の青き顔ある除夜詣/岸本尚毅
露店の傘負け顔や五月晴/正岡子規
三椏や百姓の顔ねむく過ぎ/岸田稚
霰降る隣の戸口顔が出て/川崎展宏