俳句例:201句目~
寒晴るる鏡に心覗られたり/辻蕗村
夏蝶の葉陰に揺るる水鏡/坂内恒郎
月の妻月が鏡を口癖に/後藤比奈夫
夢捨てぬ限り青春初鏡/安河内登志
大寒の鏡影のみよぎりたり/桂信子
春隣る鏡の奥の竹明り/柴田白葉女
水鏡かの家にいまも桐一葉/上村占
島蔭に吊して海女の初鏡/小林俊彦
水鏡してゐる如き鹿涼し/岩崎照子
学寮や祖師の鏡のあぶり喰ひ/召波
鏡中に西日射し入る夕立あと/誓子
水鏡はなれて蓬原のあり/柿本多映
鏡中に飛ぶ雪激し髪染むる/加藤紅
春愁や鏡に沈むおのが顔/日野草城
鏡中に鵙きく概ねひとりにて/房子
鏡中のおのれに対ふ弓始/星野恒彦
卒業子等身鏡より出発す/能村研三
南天の出荷作業や鏡ぞら/高澤良一
春愁や楽屋鏡に眉落とし/足立靖子
己が顔ふと他人めく初鏡/西尾照子
俳句例:221句目~
一湾の鏡びかりに秋高し/池田秀水
風鈴売鏡の中を通りけり/加藤耕子
水鏡見てやまゆかく川柳/田捨女/
立秋の鏡の中に風が吹く/橋本寅男
水鏡見るそだちなし蜆取り/千代女
夏帽子かぶり鏡の奥へ旅/大塚邑紅
いまだ序曲鞄の中の鏡の宿曜/林桂
日盛や鏡のごとき父の墓/西野晴子
年経れば月日短し初鏡/神山登美子
大きくて鏡の如き露のあり/上野泰
うち向ふ楽屋鏡に花疲/中村七三郎
睡蓮や鬢に手あてゝ水鏡/杉田久女
秋風に嶽の日は金ン水鏡/石原舟月
姿鏡に映る楓の夕日かな/井上井月
美人老て疎影の痩を水鏡/椎本才麿
苗代の秋田こまちに水鏡/高澤良一
太陽は卑弥呼の鏡栗の花/熊谷愛子
新樹光届かぬ城の鏡の間/山田弘子
蜻蛉のおのが影追ふ水鏡/星野立子
名月に鏡磨ぐなり京の町/藤野古白
俳句例:241句目~
そよぎだす早苗田の青昼鏡/桂信子
蜻蛉生れ阿蘇千枚田水鏡/小浜光吉
文金の合せ鏡や風ひかる/正岡子規
寒い夜の鏡の中にまた鏡/今瀬剛一
河骨は星のごとしや鏡池/皆川盤水
太平洋鏡の如き小春かな/浜/万亀
一葉忌鏡の底にある不安/江森子陽
啄木鳥や鏡睡らぬ森の家/堀口星眠
啓蟄や鏡の真中より曇り/百瀬美津
我宿はかづらに鏡すゑにけり/是楽
もう母のうつらぬ鏡更衣/八染藍子
ゆひ髪や鏡はなれて朝涼/上島鬼貫
貌鳥や消えては戻る水鏡/平川雅也
わが映る鏡無惨や春の暮/相馬遷子
郭公にこだま白樺に水鏡/宮津昭彦
一葉忌鏡吊る釘深く打つ/河野南畦
夕方の鏡は嫌ひ木の葉髪/白石峰子
年越や鏡の前の胼ぐすり/皆川白陀
我が魂と対す我が目や初鏡/上野泰
噴井の穂つね打つところ冬鏡/原裕
俳句例:261句目~
河骨の黄は星のごと鏡池/皆川盤水
山頂にわが顔覗く鏡なし/津田清子
文楽の楽屋訪はむと初鏡/若江千萱
古鏡厄払はれし老女かな/安成路台
壁鏡冬木が遠く身震ひする/桂信子
山笑ふわが顔避けて鏡傷/河野南畦
山の日は鏡のごとし寒桜/高濱虚子
万緑に蒼ざめてをる鏡かな/上野泰
夏に入る等身鏡の吾に喝/長友千穂
渚鏡走る千鳥よ影さして/鈴木花蓑
湯ざめして鏡の奥の狐顔/仙田洋子
漁れる海鼠百貫石鏡海女/宮田正和
灯しても鏡奥晦し雪起し/山口草堂
炎天に鏡きらめく神輿哉/正岡子規
炬燵して鏡に對す夫婦哉/寺田寅彦
古鏡磨き込まれし河鹿宿/渡辺恭子
夜光虫古鏡の如く漂へる/杉田久女
泉殿鏡面消えし古鏡吊る/橋本鶏二
三重の餅や又なき大鏡/広江八重桜
煤拂ひ鏡かくされし女哉/正岡子規
俳句例:281句目~
蜆舟点じ古鏡のごとき湖/小林康治
立秋の鏡の中の次の部屋/辻田克巳
冬枯や鏡にうつる雲の影/正岡子規
玄関の鏡に空や雛まつり/藺草慶子
理髪店の鏡日傘のいま通る/桂信子
夏痩の頬骨さする鏡かな/会津八一
来し方のくもり拭ひて初鏡/加藤浩
病院の廊下鏡の夜半の夏/中村汀女
白蒲団鏡の如く干されあり/上野泰
毛皮店鏡の裏に毛皮なし/中村汀女
白靴まで少女全容鏡に満つ/大串章
白鳥の胸の截りゆく沼鏡/村上光子
百千鳥映れる神の鏡かな/川端茅舎
相撲部屋に一つ小さき鏡かな/竹釆
丹念に雛の小鏡拭き清む/山田弘子
寫し見る鏡中の人吾寒し/正岡子規
短夜や鏡の面の蛾の卵/東洋城千句
石像に蝿もとまらぬ鏡哉/正岡子規
年ごもり鏡の中にすわりけり/暁台
秋あつし鏡の奥にある素顔/桂信子