俳句例:201句目~
今生の母の爪切る聖夜かな/道川貴
旅記す八十路の母の初暦/前田和子
介添もいらぬ初湯の母八十路/民郎
一握の母の白髪明易き/村松ひろし
一族の真ん中に母山笑う/伊関葉子
秋の風鈴母の忌の母の家/内田美紗
鳥帰る母の黒髪怖ろしき/宗田安正
八十の母が来て居り菊膾/向笠和子
一月や母の薬に木の匂ひ/中林長生
まだ夢に父に蹤く母萩の門/杉本寛
母に乞ふ父の形見の秋袷/石田仁子
八十の母が采配大茶摘/衛藤きく女
母好む東枕に梅ほころぶ/川村紫陽
母の日や母は病むとも紅の花/林翔
仏桑華母なる河の常濁り/山本歩禅
まづ母に証書手渡す卒業子/林昌華
祭帯結ばる老母の力もて/品川鈴子
母わかき日の簪に似て椿/鈴木鷹夫
母のせて舟萍のなかへ入る/桂信子
一条の火を曳く螢母の国/佐川広治
俳句例:221句目~
父支へ母解く包母の日ぞ/香西照雄
祝婚の母跼まれり夏至の海/石寒太
鱧幟濡手となれば母若し/香西照雄
祈るかに母は鶴折る星月夜/林昌華
石竹や母思ひなる姉妹/大橋麻沙子
母の句に甘き選者や春星忌/安住敦
一茶秀句母の日に母偲ぶ/高野力一
母よ弟は骨壺にみたず/栗林一石路
父恋が母恋なりき梅白し/永田耕衣
枯葎母の和服の黒澄めり/羽田貞雄
種袋一つ一つに母の文字/大政光子
けさ秋や母にさばしる鶉豆/齋藤玄
まろび寝の小さき母や夜の秋/蓼汀
母はわが顔の夏痩のみを言ふ/篠原
けふ母が来るやうな風青簾/角光雄
柊の花咲く頃か母の忌日/伊藤敬子
一葉忌母の羽織の裏紋に/田中英子
母の顔消えて岬に春ともし/石井保
八十の母の焚火の勢ひ立つ/桂信子
星祭母の仮名文字美しく/山本紫園
俳句例:241句目~
母に似て細き面輪や秋袷/三橋鷹女
春の山母のみの聖観世音/松村蒼石
柚の花やゆかしき母家の乾隅/蕪村
頬白や故山の土に母還し/手島靖一
眠るたび母に近づく櫻かな/石嶌岳
春の蕗母金色に煮てくれぬ/脇祥一
七五三勤めの母は勤め居て/楠節子
父も母も家にて死にき吊忍/岡本眸
父みとる母居眠りて去年今年/遷子
真青に蕨沈めり母の水/小檜山繁子
春めくや母の好みし鯨尺/浦川哲子
炎天の鹿に母なる眸あり/飯田龍太
仕舞湯の母に大きな軽石を/仁平勝
父はもう母を叱らず冷奴/栗坪和子
鯉幟濡手となれば母若し/香西照雄
むらさきは母の面影杜若/佐藤吟秋
鯉幟子を制しつつ母紅潮/香西照雄
仲秋や母に明るき仏の灯/西島麦南
七月の葉騒や母の産み力/古賀淡水
餅花の柱も遠し母も遠し/石田波郷
俳句例:261句目~
七種や母の火桶は蔵の中/黒田杏子
春寒や俄に鳴れる母の三味/岸田稚
休日の母娘でつくる桜餅/野畑節子
春山の底なる母の骨思う/金子皆子
春嵐夜は逃げやすき母の脈/金子潮
七草や母の丈こし男の子/長谷川櫂
母在るはさみし嗄れる夏蓬/穴井太
栄転も母には別離秋の雲/中村稔子
益母草や夜ただ物見る窓の前/清淇
春愁や明治の母の飾り櫛/三谷道子
もう母のうつらぬ鏡更衣/八染藍子
母在りて米寿や凜と白障子/森武司
母在りし如く言かけ北塞ぐ/菅第五
盆礼や妻の母なる大原女/柴田只管
母の魂梅に遊んで夜は還る/桂信子
父の樫母の桐わが椎若葉/中山一路
母在らば砧の話もう少し/鈴木鷹夫
母の炊く豆飯の豆柔かし/藤間蘭汀
母の杖遺つてをりし迎馬/松林朝蒼
父の恋翡翠飛んで母の恋/仙田洋子
俳句例:281句目~
青簾母働かぬことのあり/外川飼虎
皹は母似父より医業継ぎ/土屋巴浪
さ月音に我蓑虫や母恋し/服部嵐雪
八十の母は光源薄暮を縫う/隈治人
栗飯や忘じて遠き母の顔/岸風三楼
母の忌を修し鳴門の涙渦/橋本夢道
頂上は銀河に近し母に近し/西尾苑
校庭の大向日葵に母の会/深川路子
春満月産湯に母を過てり/齋藤愼爾
海藻の青さ眼にしむ母なる地/原裕
しんしんと母に年立つ鰹節/原田喬
父の忌の空蝉母の忌の螢/齋藤愼爾
檀の実まぶしき母に随へり/岸田稚
百歳の母の音頭や福は内/高島和子
母の手の温もり伝ふ蓬餅/太田常子
百歳の母のゆるりと花衣/栗下廣子
すぐ母と解る足音竹落葉/菅野清童
百日紅百日前は母在りし/渡辺恭子
母の忌の赤根を太く春野菜/下田稔
靖国へ母の代参除夜詣/吉田飛龍子