俳句例:201句目~
屋根に雪野武士のごとき貨車一輛/椎橋清翠
若き軍馬貨車に積まれて怒る反る/細谷源二
黒き貨車夏野を分かちはるけしや/福田和子
遠くゆく貨車に師走の日のさせる/成瀬桜桃子
覆われて貨車に角ばるもの北風へ/田川飛旅子
遠花火闇よりくらく貨車ねむる/鍵和田ゆう子
白日傘貨車を数ふることもなし/鍵和田ゆう子
東風の山は冷めたい夜の貨車を包む/藤後左右
いづくより雪かぶり来し貨車すれちがふ/篠原
ながきながき春暁の貨車なつかしき/加藤楸邨
ひえびえと手摺見おろせば犇く貨車/古沢太穂
貨車あまたちらばり凍てて歳去りぬ/片山桃史
むし暑く馬のにほひの貨車でゆく/長谷川素逝
アネモネを貨車がゆるがす友の下宿/酒井弘司
行きつ戻りつ貨車組む小駅雪の信濃/桜井博道
レール若し貨車を雪国より発たす/磯貝碧蹄館
冬雲に向けてえいえいと貨車を押す/加藤楸邨
港のはづれ貨車とかならず荒地野菊/宮津昭彦
卒業歌貨車からは豚がおろされる/加倉井秋を
大兵を送り来し貨車灼けてならぶ/長谷川素逝
俳句例:221句目~
貨車の間にかたまりコレラ注射受く/亀井糸游
春月の貨車にゆつくり抜かれけり/田川飛旅子
貨車がこぼした麦を夕陽があたためる/穴井太
貨車疾走/寒いすすきが引火する/増田まさみ
貨車つなぐ響き枯野へ抜けにけり/寺島ただし
貨車の扉を開くる手力飛び飛ぶ雪/田川飛旅子
積乱雲野に湧き野に湧き貨車灼くる/相馬遷子
海霧の縞日漁港路線に貨車あらはる/石原八束
貨車過ぐるひびきのつたふ雪の宿/鈴木しづ子
貨車遠くひびく藤の実たれきそひ/土岐錬太郎
東風の樹を都に送り貨車は冷めたい/藤後左右
機翼の屑貨車に溢れて灼けつつ過ぐ/原田種茅
東風の樹を貨車に積み込み眠れぬ山/藤後左右
東風の山よ夜具から貨車が這出したよ/藤後左右
炭切る母貨車にひかりを奪はれつゝ/磯貝碧蹄館
東風の山の羽がひに貨車は身を振はす/藤後左右
東風の山の山ふところに泣き寄る貨車/藤後左右
東風の山に覆はれ貨車の覚めたけはひ/藤後左右
トラックにのり貨車にのり日の盛/久保田万太郎
氷雨伝う玻璃ごしに貨車よれよれに/田川飛旅子
俳句例:241句目~
田ひばりの地をゆるがせて長き貨車/伊藤いと子
山は覚めて寝てゐる貨車を静かに看る/藤後左右
つき放す貨車コスモスのあたりまで/深川正一郎
貨車いくたび過ぎし枯野の雨やまず/柴田白葉女
キャラメル工場を出る一輛の灼けた貨車/穴井太
枯野来ていつもの貨車とすれ違う/佐々木はるを
つきはなす貨車コスモスのあたりまで/深川正一郎
かをりやんの上ゆく貨車の屋根にも兵/長谷川素逝
蒲公英や貨車下ろしたる炭俵/原月舟、長谷川零餘子編
貨車が影絵のようにとまつていてぬくい冬の夜霧/吉岡禅寺洞
中年の男は不意に年をとる貨車ゆっくりと昼の遠景/岡部桂一郎