俳句例:101句目~
夏羽織渺々と我世つゞきけり/中島月笠
夏羽識羽織て立ちて外出めき/高濱年尾
杣が羽織着し日の心鳥渡る/中塚一碧樓
秋の灯や二人の一人羽織なし/野村喜舟
好者の羽織飛ばせし涼みかな/前田普羅
山笑ふ藁麦が羽織を着てゐたる/龍岡晋
羽織着て門の雪掃く女房かな/黒柳召波
老どちは秋彼岸会の薄羽織/高橋淡路女
老骨をばさと包むや革羽織/芥川龍之介
肩重モや冬着に羽織面倒な/松根東洋城
脱ぎすてし夏の羽織に風孕む/正岡子規
身にからむ単羽織もうき世哉/榎本其角
茶羽織を衣桁に残し舂けり/平井さち子
草虱羽織脱がせる河原の陽/稲垣きくの
菊日和羽織をぬいで縁に腰/大橋櫻坡子
薄物の羽織や人のにやけたり/正岡子規
軍配上る時羽織飛び帽子ふる/正岡子規
浜の子の綿入羽織日に羽摶つ/藤木倶子
長き日を羽織着ながら寝たりけり/几董
曾我染の羽織心や虎が雨/安斎桜カイ子
俳句例:121句目~
潮風に吹かれたかぶり夏羽織/日野草城
雁かへる雨夜汗ばむ羽織かな/岡本松浜
年月の重石のききし夏羽織/小檜山繁子
父方の遠くなりけり羽織着る/田村了咲
帯の柄すけて見えをり夏羽織/要永柳女
山駕籠や膝にたゝみし夏羽織/吉田冬葉
夏羽織その人の性透けていし/鳥居曼珠子
夏羽織琵琶湖の風に吹かれけり/正岡子規
夏羽織買ふほど富まず寧かりし/白川京子
病臥なほ壁の羽織の裏あかき/鷲谷七菜子
夏羽織露月は医者になりにけり/正岡子規
紫陽花や黒の絽羽織しつとりと/渡邊水巴
あととりや人と成りたる夏羽織/鈴木花蓑
夏衣いや珍しき羽織見ん/信徳「万歳楽」
いつか花に小車と見む茶の羽織/山口素堂
いつきても風を孕むか絽の羽織/正岡子規
夜長とも夜寒ともある羽織かな/野村喜舟
羽織のみ着替へし母が柚子の釜/岡井省二
春の夕かのきぬ羽織着たりけり/蕪村遺稿
いつきても風孕むなり絽の羽織/正岡子規
俳句例:141句目~
居流れて田を遠景や薄羽織/長谷川かな女
手をふれて肩のぬくとみ春羽織/飯田蛇笏
田楽や脱ぎし羽織を袖だたみ/高橋淡路女
畦を来て羽織にほふや詣で人/大峯あきら
病めば訪はる羽織重ねて臥戸出で/及川貞
おきな忌や茶羽織ひもの十文字/飯田蛇笏
羽織着の死者に持越す不幸なし/安東次男
羽織紐結びつ解きついひわけし/吉屋信子
お羽織屋障子を立てて緩みなき/関森勝夫
羽織着て気分なにがし角張りぬ/金井大松
ぬぎ捨てし客の羽織や灯取虫/島村元句集
脱いで置く夏の羽織や芝居茶屋/正岡子規
棺被う見おぼえ新らしき羽織/相原左義長
花かるた湯ざめの羽織うち重ね/清原枴童
形見とて着るあてのなき夏羽織/番平保枝
花冷といふほどでなし羽織著て/高濱年尾
河岸をゆく羽織たらりと霜日和/飯田蛇笏
春羽織老いて金糸をちらしたる/林原耒井
着る時の羽織裏鳴る淑気かな/能村登四郎
羽織だけ著替へ賀客を迎へけり/星野立子
俳句例:161句目~
菊の香に羽織の紐をむすびけり/田中冬二
ゆつたりと八十路迎ふる夏羽織/今井松子
著せられて借りし夜寒の羽織かな/白水郎
着古せし羽織に春の寒さかな/高橋淡路女
薄羽織たゝむ灯に来し竃馬かな/中島月笠
薄羽織ぬいでたゝみぬ椿餅/阿部みどり女
薄羽織空濃きいろに着て病まず/野沢節子
祝ぎにゆく風塵はらむ薄羽織/殿村菟絲子
裏あかき羽織着てをり産後の日/中山純子
西鶴忌いくとせ羽織はおらざる/石川桂郎
訪ひて羽織をぬぎぬ柿の秋/阿部みどり女
誰が紋をつけて見やうぞ夏羽織/正岡子規
贈られし羽織きて見る小春かな/中川四明
羽織着て出かゝる空の時雨かな/高井几董
絽羽織の似合ひて別れ惜しかりし/星野椿
座を立てば畳み置かれぬ夏羽織/小杉余子
気に入りの紐見つからず夏羽織/薗部庚申
武家紋の羽織でありし法事客/猪俣千代子
長日を羽織着ながら寐たりけり/高井几董
長羽織着て寛瀾の二月かな/久保田万太郎
俳句例:181句目~
冬羽織ぬげばうしほの匂ひせり/熊田侠邨
初冬の膝に羽織を仮だたみ/阿部みどり女
合歓咲くや絹裂羽織の裾みじか/尾崎紅葉
革羽織とりかくされて火燵かな/中村史邦
吹きつけて痩せたる人や夏羽織/高濱虚子
顔見世に行く羽織とて縫ひ急ぐ/岩本千代
哀しからずや白き短き羽織着て/林原耒井
四十未だ絽羽織たたむ膝を容れ/関戸靖子
四日はや常の羽織を着せられて/遠藤梧逸
山繭の香の羽織着て参賀かな/田上さき子
薄羽織路に別れていづこかな/長谷川かな女
梅雨の雨きのふの羽織ぬぎにけり/木津柳芽
ぬぎ掛けし羽織が赤く風邪の床/八牧美喜子
はつしぐれ濡れて淋しき羽織かな/五車反古
別ればや笠手に提げて夏羽織/芭蕉「白馬」
ひつかけて行く衛も知らず夏羽織/会津八一
身のおちめかばふ絽羽織着たりけり/高橋潤
わが好きな羽織の冬のはじまりぬ/山田千城
軒に下る毛虫の糸や羽織ぬぐ/長谷川かな女
世話方といふいでたちの夏羽織/広瀬ひろし