俳句例:201句目~
いさゝかの借もをかしや大三十日/村上鬼城
きぬきぬの持たれて戀の大三十日/正岡子規
ろくでなの年にてありし大三十日/富浪夏風
今日までの今日を雨降る大三十日/臼田亜浪
汗の子と胎の子とわが三十路なり/市川千晶
寺ともりて死ぬる人あり大三十日/村上鬼城
極月や三十日のなげきとことはに/石塚友二
振り返り三十路は夏のごと炎えし/松田雄姿
父祖の地に闇のしづまる大三十日/飯田蛇笏
白露の三十日経し子の瞳にひかる/杉山岳陽
行き逢ふてそ知らぬ顏や大三十日/正岡子規
君が代やめでたくすねて大三十日/正岡子規
日焼けして目の下乾く三十路かな/谷口桂子
迎火や三十路なかばのかゝりうど/小林康治
三十路たつわぎもが春の小袖かな/西島麦南
毛虫焼く吾子も三十路の愁眉もつ/渡部良子
三十のゑがかぬ眉にしぐれけり/鷲谷七菜子
常磐木の冬きよらかに三十路来ぬ/伊東宏晃
句修行の三十路に入りぬ獺祭忌/水原秋桜子
三十路駈け来てげんげ田に息制す/伊藤敬子
俳句例:221句目~
三十年前のクレオパトラも木枯妻/橋本夢道
はだれ野をい行きて己れ三十九/鈴木しげを
ふと読めて三十年後の秋である/小檜山繁子
うつつなく三十路の恋や木の葉髪/小坂順子
岩戸朝涼素面三十路の神々たち/平井さち子
三十路には三十路の祈り八重椿/鍵和田ゆう子
夜番の柝ひとの年譜の三十路の項/田川飛旅子
麦笛や三十路の齢といふもひととき/福田蓼汀
着膨れて児に唱合はす三十路はや/木附沢麦青
モヴィールの鳥は睦まぬ三十路かな/福島国雄
富士見ゆる日を重ねきて初三十日/藤沢紗智子
亡夫はいつも三十萱が枯れ初むる/北原志満子
『ファウスト』講じ三十五年初筑波/加藤慶二
はづかしき三十路の素足ほめられて/岩田由美
はじまりし三十路の迷路木の実降る/上田五千石
白菜括ると胯倉歩きに三十路嚊/赤城さかえ句集
闇にただよふ菊の香三十路近づきくる/中嶋秀子
三十や雪には雪の踏み応へ/甲斐遊糸/『冠雪』
止まれば淋漓と汗や今日より三十路なる/奈良文夫
チエロ弾くに似合ふは三十路枇杷の花/和田耕三郎
俳句例:241句目~
貧乏桜よ春の雲かよ三十二キロの放射雲/橋本夢道
三十年痛むは神隠しに逢ひたるごとし/糸山由紀子
いつ来ても秋の、三十三回目きよう通る/荻原井泉水
銀三十枚の頭にはあをさぎのとまる淋しさ/加藤郁乎
染浴衣三十路の負め浅かれと/『定本石橋秀野句文集』
はらからに三十路の果の秋扇/『定本石橋秀野句文集』
形影相弔ふこと三十八年あらおもしろの浮世哉/日夏耿之介
三十五六年の危機が黒龍江へ形容のできない侵略圓を流れる/橋本夢道
あと三十年残つてゐるだろうか梨いろの月のひかりを口あけて吸ふ/河野裕子
三十分前の十坪位いなわが家をすでに忘れて巨大な建物へ雪を曲つてゆく/橋本夢道