杯(盃)を使用した俳句

俳句例:101句目~

春塵も置かず遺愛の杯並べ/稲畑汀子

桂郎忌部厚き酒杯選びけり/富田直治

田遊の嫁大杯で御神酒受く/川越蒼生

秋分の酒杯の微塵親し恋し/原子公平

菊の杯酌み重ねつゝ健康に/高浜年尾

初灯博多どぶろく盃に注ぐ/中村阪子

別盃や新そばの笊全円に/平井さち子

夜番より戻りし膳の小盃/南出白妙女

奈良粥に盃重ねたり良弁忌/倉持嘉博

小萩散れますほの小貝小盃/松尾芭蕉

尼さまの月の盃のせたる手/高野素十

延寿盃庭燎の埃たふとけれ/木下眉城

徐々に徐々に狢近より小盃/栗生純夫

拜領の盃屠蘇を飲み初めぬ/正岡子規

春潮が湧く大盃に金蒔くに/古舘曹人

梅の寮運ぶ盃洗チリと鳴る/久米正雄

献盃やいますが如き御容貌/比叡禽化

盃にあふれしものは春愁か/鈴木鷹夫

盃にうつろふ顔や春十とせ/尾崎紅葉

盃にうれしい顔があふれる/住宅顕信

俳句例:121句目~

盃にかつ散る紅葉好し下物/尾崎紅葉

盃にすくふてのむや春の水/正岡子規

盃に遠世のごとし獅子の笛/川端火川

盃の周りのけむり蓬生ふ/磯貝碧蹄館

盃の流るゝはなの絶間かな/松岡青蘿

秋鯖や夫より受くる小盃/上田千穂子

盃の鶴のゆらゆら屠蘇の酔/鈴木鷹夫

盃や花押しわけて流れけり/内藤鳴雪

盃をのせて出したる団扇哉/正岡子規

盃中に秋思の翳の移りけり/京極杜藻

盃洗に散る影うつる桜かな/井上井月

盃洗に金粉泛いてゐる寒さ/鈴木鷹夫

知らぬ人に盃強ひる桜かな/正岡子規

管物の盃咲きの濃むらさき/高澤良一

紅葉茶屋大盃といふもみぢ/松藤夏山

菊の雫盃に受けたる如かりき/原石鼎

蜂の巣の盃ほどや酬恩庵/原田しずえ

蝿帳に透けて盃あるはよし/亀井糸游

返盃や会うこともなき山彦に/仁平勝

酒豪なる僧の返盃神の留守/都筑智子

俳句例:141句目~

金泥の鶴や朱塗の屠蘇の盃/夏目漱石

錆鮎やいたはられゐる小盃/石田波郷

雛納めたる盃のうつろかな/小林康治

颱風がくる盃をふくみあふ/萩原麦草

人は酒杯へ終の一滴滴りよ/香西照雄

梅さくやうときもおりに小盃/松岡青蘿

大杯にうつさふべしや大文字/村田橙重

この小さき盃にして淑気満つ/山田諒子

月花の情濃く杯をあげにけり/西島麥南

としわすれ盃に桃の花書かん/浜田酒堂

曲水の雨や朱杯にふりそゝぐ/渡辺数子

のさものに盃かくせむめの花/立花北枝

曝涼の色鮮やかに瑠璃の杯/龍頭美紀子

ゆりの木の花の緑盃風溢れ/山田みづえ

秋旅の舟に酒盃やありにけり/高濱年尾

秋風の能登に買ひたる小盃/山口耕太郎

献盃や差貫の音のゆきかふて/大谷句佛

盃にみつの名を飲む今宵かな/松尾芭蕉

元朝や朱盃に盛らる御饌の酒/藤井佳子

初伊勢や素焼の盃の神酒甘し/巽恵津子

俳句例:161句目~

手作りの杯持ち寄りて月今宵/宮脇白夜

春宵のまだ盃を伏せしまゝ/今井つる女

伊良胡崎新酒の杯を洗ひけり/松瀬青々

年の豆我が盃中に落ちにけり/相島虚吼

惜春の酒一二杯虚子を恋ふ/成瀬正とし

献盃式果てゝ白むや菱燈籠/名和三幹竹

菊膾白磁の酒盃澄みにけり/甲斐すず江

廻し酌む形見の酒杯素十の忌/小路紫峡

虫聴くや盃中に澄む灯は一ッ/久米正雄

盃の無明に草木私語しきり/林田紀音夫

盃の中に咲かせん壺すみれ/伊賀-示蜂

山杯にしろり明けたり業平忌/加藤郁乎

山頭火が飲みし盃冬に入る/相原左義長

小雪聴く金を蒔きたる馬上杯/黒田杏子

盃に怒濤のひびく炬燵かな/佐藤南山寺

元旦の塵ごと朱杯いただきぬ/永井龍男

大杯のあと覚えなき年酒かな/岡本圭岳

寒禽の鶸の辺に酌む盃うすし/森川暁水

大盃を加賀万歳は飲み干しぬ/細川加賀

国ぶりの海雲和へとて杯重ね/杉原竹女

俳句例:181句目~

大盃にざぶと酒つぐ壬生狂言/陣場直雄

鉱炉まぶし鞴祭の盃受くる/槫沼けい一

炬燵あつし酒利きつもる小盃/飯田蛇笏

大文字浮かべ盃かわしけり/中井又一郎

盃を止めよ紅葉の散ることよ/高野素十

盃洗にさゞなみ立つや扇風機/芝不器男

咲き揃ひ金の盃石蕗の花/阿部みどり女

鳥羽殿の遊びを今に盃流す/大石よし子

海鼠腸や亡父の好みの小盃/二階堂英子

大杯に花びら受けて職を辞す/小林梢月

齢高き父より受くる屠蘇の盃/福田蓼汀

月落ちて吾が白濁の馬上杯/小枝香穂女

月青く沈めて酌みぬ夜光杯/桑野美智子

几董忌の盃を伏せ眠らんか/深見けん二

杯をふせて追羽子見るとなく/石橋秀野

冱てる夜や妻にもしひる小盃/森川暁水

治昼酒を酌めよ木米の盃に/阿波野青畝

泰山木花の玉杯かたむけず/上田五千石

玉杯の碑の刻みより山椒の香/茂木憲夫

盃にとくとく鳴りて土瓶蒸/阿波野青畝