俳句例:201句目～
宵のくちなしの花を嗅いで君に見せる/尾崎放哉
焼け香嗅ぐ胸もかばかり冬の月/飛鳥田れい無公
フリージアの香を嗅ぎ分けて病よし/大間知山子
若き医師なればサイネリヤ嗅ぎて見る/大野林火
ぼうたんの咲けばついつい嗅いでみぬ/高澤良一
燻る炉をはなれず梅を嗅ぎにけり/長谷川かな女
かくも近くはまなすを見る嗅ぐ触る/宇多喜代子
お彼岸に妻子を遣りて雨嗅ぎし/飛鳥田れい無公
薔薇を嗅ぎ火中を去りてゆくごとし/小檜山繁子
そこらぢゆう落ちゐる厄を嗅いで犬/波多野爽波
看護婦は花ばかり嗅いで夜は寝て/飛鳥田れい無公
乾草の香の腋を嗅ぎ愛永し/星野石雀「乾草物語」
たらの芽をわかきけもののごとく嗅ぐ/能村登四郎
嗅ぎよりぬ亡母が挿木のつゝじの芽/長谷川かな女
差し入れの菊嗅げば生れ故郷の雲がある/橋本夢道
家までを消えぬ焚火のにほひ嗅ぐ/飛鳥田れい無公
起き臥しに嗅ぐ焼け土の春となり/飛鳥田れい無公
はまなすを嗅いで議論を打ち切りぬ/鍵和田ゆう子
ほのかなる草花の匂を嗅ぎ出さうとする/尾崎放哉
Artisanなり薔薇嗅ぐ仕草大げさに/寺山修司
俳句例:221句目～
じつとして馬に嗅るゝ蛙哉/一茶/文政八年乙酉
夜の雪のひとひらうけて嗅ぐあそび/飛鳥田れい無公
としよれば犬も嗅ぬぞ初袷/一茶/文化十二年乙亥
冷房を絶つ業病の母嗅ぐため/神宮司茶人「神々の餐」
議論して帰り薄暗い妻子を嗅ぐやすけとう鱈/橋本夢道
嗅で見てよしにする也猫の恋/一茶/文化十二年乙亥
薬嗅いで暖かな思ひ幼なけれ/東國/泉天郎、岡田葵雨城編
手から手へまたたびの花まはし嗅ぐ/永田由子「雉俳句集」
ガスのにおいを嗅いで街の夜をすてきれない人たち/吉岡禅寺洞
やわはだの匂いも汗して夜はしんしんと平和な肉體への嗅覚/橋本夢道
老臭は死臭の稀釈みづからに嗅ぎつつ慣れむ死にあらかじめ/高橋睦郎
