俳句例:101句目~
ビール酌むことに心の横すべり/高澤良一
ビール酌む男ごころを灯に曝し/三橋鷹女
乾杯のためのビールは泡多く/高浜喜美子
交し飲むビールの琥珀胃の琥珀/高澤良一
冷えすぎてビールなさざり夕蛙/石川桂郎
うたかたのビールの泡と了ふ一日/高澤良一
すぐ席をはづせる位置に麦酒酌む/鈴木栄子
ほろにがき昼の麦酒や男の子得て/橋本榮治
一座席ビールの占めてリフト行く/宮田俊子
ビール酌み嘘も真も聞きながす/福永みち子
生ビール氷河のごときセロリ食む/松山足羽
ひとり酌むビールを余す夕べかな/高澤良一
ひとり飲むビールの泡の多かりし/竹田小時
ひとり飲むビール妻子に何頒たむ/石塚友二
もり上るビールの泡はあたゝかし/高木晴子
アメリカの大を語らひビール酌む/大橋敦子
麦酒のむ椅子軋らせて詩の仲間/林田紀音夫
天上大風麦酒の泡は消えやすく/佐々木有風
ビールあげよ市民に燃える遠い戦火/三谷昭
ビール飲む腰を痛めたぺリカンと/小西昭夫
俳句例:121句目~
悲しみの席にビールのある事も/岡林知世子
病院のエレベーターに乗るビール/紅谷順子
ビールなら頂くワイン駄目だけど/山田弘子
白夜の燈溶けゐるごとし白ビール/関森勝夫
ビールのむ時間上手に使ひし日/嶋田摩耶子
ビール飲む雑寝の床をまくしあげ/椎橋清翠
聞き役となりてビールを勧めらる/水原幸子
ビール飲む友に山羊髭いつよりぞ/平賀扶人
ビールー本夢に飲み干し楽しみな/高濱年尾
ビール乾しさて俳論に入る気配/木野なほみ
ビール乾し辺りの風がぬるくなる/高澤良一
ビール先づすゝめてくれる倅あり/中谷今子
ビール呑み先輩もまた貧しかりき/栗原米作
蚕豆とビールの胃の腑美しからむ/鈴木鷹夫
ビール壜砕かれありアイヌ酔泣きしか/林翔
敗れたりきのふ残せしビール飲む/山口青邨
逢へばすぐ繋がる月日ビール酌む/山田弘子
ビール積み耶蘇島渡船日に一度/小原菁々子
地ビールや阿蘇の連山昏れかかる/中村温子
阿蘇人と阿蘇をたたへてビール抜く/上村占
俳句例:141句目~
ビールの泡鼻の辺りでぷつぷつと/高澤良一
汗の香の職餓鬼ばかりビール酌む/小林康治
地ビールや星をゆたかに珊瑚浜/長谷川閑乙
山の夜のビール四五本女郎花/久保田万太郎
同じ傷舐めあひて酌むビールかな/芦沢一醒
浅草の暮れかかりたるビールかな/石田郷子
大衆にちがひなきわれビールのむ/京極杞陽
涼風の星よりぞ吹くビールかな/水原秋桜子
恋せしひと恋なきひととビール汲む/辻桃子
ビール酌む未来を少しづつ減らし/鈴木鷹夫
不確かな父の座ぬるいビール飲む/川辺幸一
独り生く何時かビールの味おぼえ/江口久子
黄昏れてくるまでビール我慢しぬ/高澤良一
ビール酌む夜をつかれし足ぞ垂れ/細谷源二
喪に服すこころ毒舌なくビール/吉村ひさ志
生ビール内地の人よと云はれ酌む/高澤良一
ビールだコップに透く君の大きい指/北原白秋
この道にビール飲まさんと跼みけり/永田耕衣
ブリューゲルのビア樽男ビール酌む/高澤良一
悔なき生ありやビールの泡こぼし/鈴木真砂女
俳句例:161句目~
ひとりにて人を恋ひのむビールかな/野村喜舟
地ビールにステーキ木目の顕てる卓/高澤良一
ネクタイの呪縛をときてビール酌む/近藤伸子
ビール泡だつ夕焼劫火の日の如く/榎本冬一郎
ビールつぐ髪にハイビスカスを挿し/千原瀟湘
太宰の碑濡らせしビール頒けて飲む/山口誓子
教会風の屋に向き月下ビールあふる/金子兜太
ビールよく売れてアルバイトの初日/竹澤/聡
ビール飲み乾す黒人と目が逢ひて/殿村莵絲子
ビール酌むやときに険しき女の眸/稲垣きくの
何故と問ふこと多き世の麦酒かな/高橋恵美子
ビール注ぎ何を言ひ出すやも知れず/山田弘子
ビール園神神もかく屯せし/平畑静塔「漁歌」
歩きつつ地ビール「独歩」喇叭飲み/高澤良一
夫逝きて麦酒冷やしてありしまゝ/副島いみ子
ビール酌むすててこ季となりにけり/高澤良一
大宰の碑濡らせしビール頒けて飲む/山口誓子
生きてゐる価値の一つに生ビール/河西みつる
生ビール友ゐぬ日なく我ゐぬ日なく/石川桂郎
一里先きの鵜舟明りやビール上ぐ/佐野青陽人
俳句例:181句目~
一人置いて好きな人ゐるビールかな/安田畝風
安堵とはこんなにビール飲めるとき/坊城中子
誰もつぎくれざるビールひとり注ぐ/茨木和生
空ジョッキ上げて追加のビールかな/小林翠岱
軽くのどうるほすビール欲しきとき/稲畑汀子
覇気のなき今となってはビール乾す/高澤良一
遠近の灯りそめたるビールかな/久保田万太郎
ビール酌む高原の夜や生きゐてこそ/森川暁水
ビール酌む腹のくびれに眼を落とし/高澤良一
ビール酌む礼文カスベエむしりつゝ/高澤良一
こんな日はビールが佳けれ酢のものに/高澤良一
つぎくれしビールの心伝はり来/岡安仁義「藍」
ビールのほてり闇を圧して山の星/阿部みどり女
ビールよく減る日の我が家活気あり/月足美智子
ビールうましおばこ唄へば褒めらるる/皆川白陀
桜は白いビールの空函がたくさん来た/北原白秋
三田伍長黄泉にもビールありますか/船木/幸人
ミユンヘンのビールにしばし禁酒解く/稲畑汀子
戦後といふ分母もちわれらビール干す/玉城一香
福引のみづひきかけしビールかな/久保田万太郎