俳句例:101句目～
初写真ベツドの母をとり囲み/宮谷昌代
初写真紅き幼児を膝に載す/佐久間かよ
初写真素直に笑顔生れけり/小川原嘘帥
初写真遠まなざしのまま撮られ/塩崎緑
初写真高き鳩より眼を戻す/磯貝碧蹄館
卒業やモンペの並ぶ古写真/大塚とめ子
古写真出してもてなし盆の客/前島節子
古写真出して笑ひぬ夜は長し/高木晴子
大仏を写真に取るや春の山/河東碧梧桐
大御所と呼ばれて座る初写真/島田澄江
日本髪の母の写真に鶴が来る/田中櫻子
子と並びゐて逃られし初写真/深谷雄大
帯解の二人が待てり写真館/井ヶ田杞夏
座布団の滑りやすくて初写真/工藤弘子
座敷まで正月の陽差兵の写真/川崎展宏
成長の写真見てをり端午の日/川村甚七
抽出しの写真つめたし年の家/宮坂静生
故人のみ昃る写真芦は青し/中戸川朝人
日光写真片頬ぬくきおもひごと/糸大八
朝の顔して涼やかに写真撮る/高木晴子
俳句例:121句目～
横向の子規の写真を祀りけり/遠藤小鹿
水仙に写真のライト年忘れ/百合山羽公
水温む写真の隅に母見えて/藤田あけ烏
爆心地のモノクロ写真月渡る/木佐幸枝
父の写真子の愛遠きゆゑ厚着/香西照雄
白黒の写真を伸ばす鳥曇り/岡田カヨ子
秋湿り写真在中の便り手に/青木つね子
秋風の写ってをりし写真かな/田宮良子
聖五月見合い写真に眼鏡なく/広瀬敦子
聖樹にも誤爆写真の子供の眼/松浦敬親
あたたかや旅の写真を整理して/森本啓太
絵のやうな写真のやうな豊の秋/水見壽男
緑蔭の写真くらくてわれに似ず/相馬遷子
夏の婚の一族写真誰もはなびら/伊丹公子
いわし雲亡き子の写真古びゆく/横山房子
新居まだ片づかぬ間の初写真/上田日差子
しぐれ今晴れしと並び初写真/佐々木民子
なまはげと旅の記念の写真とる/安斉君子
びつしりと青蔦おほふ写真館/佐久間俊子
卒業のひとり横向く写真かな/大橋櫻坡子
俳句例:141句目～
新樹並びなさい写真撮りますよ/藤後左右
初写真妻子をつつむさまに立つ/久保田博
初写真五十路となりし三姉妹/島津きぬ代
虚子の忌の写真の虚子の薄笑ひ/大野朱香
土佐なれや闘犬入れて初写真/佐藤恵美子
入学写真いつも誰かがよそ見して/樋笠文
初写真老いと幼なを芯に据ゑ/平塚まさ子
冬支度ヌードの写真寒さうな/前田野生子
五ミリにもみたぬ胎児よ初写真/河内協子
陽炎へるものの類ひの写真館/正木ゆう子
写真館裏で明治の日暮に遇う/室生幸太郎
写真集ひらく/銃口が向いている/成島狗
死顔の写真いでゝ紙かくれたり/渡邊水巴
贈り来し写真見てをる炬燵かな/高浜虚子
妻あらぬ今年のわが家初写真/後藤比奈夫
日光写真の少年なりし日向ぼこ/原子公平
太宰忌や三分写真にポーズして/下山宏子
返り花乙女らの写真色うつらず/中島斌男
写真見る昔ふとりしきぬかつぎ/高浜虚子
流氷の写真沖までささくれて/田川飛旅子
俳句例:161句目～
埋み火や古き写真の反りに反り/渡辺純枝
写真術開祖の咲かす濃あぢさゐ/高澤良一
カウベルを鳴らして入る写真館/中山美樹
雷雨去り少女スターの写真見る/坪内稔典
写真の子が乳房吸いだす広島忌/古田/海
写真師の髪パンパスの穂と孰れ/石塚友二
写真師の生活ひそかに花八つ手/飯田蛇笏
日光写真笑ふと寒き母ならむ/磯貝碧蹄館
オホーツク海を背に負ひ初写真/櫂未知子
犬なだめせかれしポーズ初写真/本西慶子
春愁の吾を写真に撮るといふ/波多野爽波
春水をへだてゝうつす写真かな/野村泊月
皺くちやな写真をのばす盆の月/小浜六茶
写真ほど白鳥真白にはあらず/宇多喜代子
着ぶくれて見る難民の写真展/仲島/四郎
りんご煮てお写真を立て青邨忌/黒田杏子
手配書の写真が貼られ狩の宿/高須のぶを
あつまつて写真撮り寒く別れた/栗林一石路
若芝に袖ひき垂れし写真かな/長谷川かな女
あららぎに日のなごみゐる初写真/木村蕪城
俳句例:181句目～
ヒマラヤの写真どさりと風邪見舞/星野双葉
まだ咲かぬ黄薔薇見本の写真付け/北川孝二
むしあつき庭を写真屋出て行きし/京極杞陽
月光写真まずたましいの感光せり/折笠美秋
写真も蘆花はひたもに春待つ眼/中村草田男
冬田へ透かし診る百姓の骨の写真/木村三男
冬の日や写真の隅をいつも占む/八牧美喜子
写真とるだけに夏帽かぶり出て/大橋櫻坡子
母の日の写真ぎらいの母を撮る/室生幸太郎
水害写真月余経てなほ貼られあり/宮津昭彦
永き日のはさみで切れる写真かな/五島高資
涅槃像写真なき世こそたふとけれ/正岡子規
写し手の飛び込んで来る初写真/田中佐和子
復活祭部屋ごとに立て母子写真/上田日差子
道泳の写真なつかしがりて老ゆ/後藤比奈夫
写真の中四五間奥に薔薇と乙女/中村草田男
写真撮る人後じさり蒲公英踏む/田川飛旅子
伊勢海老や写真の祖父の父を抱く/藤村克明
写真師のたつきひそかに花八ツ手/飯田蛇笏
少年走る秋晴れの日の古き写真/津沢マサ子
