俳句例:101句目～
干笊の動いてゐるは三十三才/高濱虚子
新しき笊に常節採りにけり/加倉井秋を
新涼の笊に和紙貼る手草かな/石川桂郎
朝市の笊にあふれし石蓴買ふ/安田優歌
梅を干す笊に筑波のきつね雨/弦巻淑子
梨の花笊つくる手のあれにけり/上村占
牛の眼に笊を溢るる水澄めり/浜崎敬治
猿曳の笊もて受くる祝儀かな/鈴木貞雄
田の端を踏み暮市の笊を買ふ/手塚美佐
盆市や笊よりこぼる茉莉花茶/呉屋菜々
短日や笊をかぶつて伸びぬ背丈/龍岡晋
秋日影銀貨を笊に盛りこぼし/久米正雄
竹笊の真中に氷盛られあり/対中いずみ
笊いつぱい芋白くむき大晦日/大熊輝一
笊に干す消炭銀杏道へこぼし/香西照雄
笊の梅甘き香はなつ夜の部屋/高見孝子
笊の目につきささる米蝉時雨/岡田史乃
笊の目をこぼれ流るる貝割菜/福田蓼汀
笊の目をまさぐつてをり鯊の口/原雅子
笊をなかに我も豆むくまどゐ哉/中勘助
俳句例:121句目～
笊を編む大寒の竹跳ねにけり/石井大泉
笊編む指春陰の竹たがへては/石川桂郎
笊飯を吊る藪母の忌としたし/萩原麦草
籾摺りし糯の白佳し笊すわる/大熊輝一
花御堂葺くげんげ笊つゝじ笊/宇野萩塘
菎蒻にしぐれ初めけり笊の中/正岡子規
落穂干すや日に傾けて笊の底/西山泊雲
蕗の薹取ると背中に笊のせて/遠藤梧逸
蚕笊もて猪垣結へり衣文村/松本たかし
蚕豆のそつぽ向きあふ笊の中/日戸美伸
赤貝は毛ものでありし笊に笹/山田尚良
酒亭肥後路苦瓜二本荒笊に/正木ゆう子
銭洗ふ笊あたらしき初巳かな/前橋竹之
銭洗ふ笊かかへゆく初弁天/織田みさゑ
鶏毛菜の嵩高に笊を零れつゝ/尾崎紅葉
阪神忌笊に干さるるパンの耳/木下節子
青梅や徒党組むごと笊にあり/原コウ子
青笊に湯呑が盛られ土工涼し/香西照雄
飯笊の夏も深みぬわび世帯/三浦十八公
飯笊の蓋をとぢたる斜かな/吉田立冬子
俳句例:141句目～
けさとれて一笊いくら鯊の秋/長谷川櫂
そば笊を干して讃岐路竹の春/森山光子
ゆで上りたる蟹笊に十三夜/鈴木真砂女
一笊の胡桃がら焼べ終ひ風呂/西村節子
鴨の毛や笊打ちたたく軒の水/黒柳召波
七草の笊躍らせてすすぎけり/重松里人
乾く地へ土用蜆の笊おろす/赤尾冨美子
庫裡の笊けふは名もなき菌干す/後藤夜半
干してある笊の動くは松毟鳥/梶山千鶴子
眩しげに母待つ笊へ実梅もぐ/玉村夜音女
海苔掻女小笊手に手に浜言葉/加藤あき江
水茄子の笊売り朝市たて込めり/高澤良一
笊茄の搗布つ喰ひに手が伸びて/高澤良一
笊買ひに町へ出でばや盆曇り/上田五千石
牡蠣海鼠銭吊つて笊ゆれやまず/石川桂郎
なつかしき昨日の海や笊はたき/増田龍雨
山畑や笊もむしろもをどろかし/加舎白雄
つまみ菜の小笊一つも徒ならず/石塚友二
うなぎ笊ころがしてある雨月かな/安住敦
いつまでも滴垂るるや鮎の笊/加藤三七子
俳句例:161句目～
露きるや若菜の笊の置きどころ/井上井月
青いのと真紅と笊のたうがらし/川崎展宏
子持鯊笊もろともに乾きけり/木村里風子
青味ある笊に新藷小味なる/長谷川かな女
大笊にどさとあけたる道草かな/児玉葭生
夏蚕上簇荒瀬くぐらし笊洗う/阿部しろう
種を選る亡母の名のある笊二つ/河津春兆
春驟雨母のうしろの笊にうどん/宮津昭彦
青葉木菟子芋ひと笊買いにけり/早乙女健
炉の前に笊抱き躍るふいご祭/平本微笑子
次の田へ笊をひきずり泥鰌掘り/今瀬剛一
棚に置く笊よく見えてすぐ忘る/金子明彦
蕗の薹摘みつつ笊の軽かりし/青葉三角草
鮟鱇を吊りまた銭の笊吊るよ/富岡掬池路
厨より笊持ち出して雹を受く/山口波津女
笊屋ある日春の草花売りに来る/正岡子規
蚕笊乾す庚申の碑をはばからず/木村蕪城
来合せて柿もぐ笊を持ちにけり/白岩三郎
蚕豆をむく大笊を買ひにけり/福永みち子
摘みとりて小笊にあふれ蕗の薹/曽我鈴子
俳句例:181句目～
ボロ市や枝に引っかけ笊を売る/高澤良一
めし笊のあはれ古びし世帯かな/野村喜舟
花烏賊の笊をこぼれし瞳の光り/酒井洋子
笊の目をこぼる零余子又拾ふ/長谷川かな女
笊編む手そのまま伸びて石榴売る/小池文子
笊にうどんあげて卯の花月夜なる/大熊輝一
箕と笊に今年の棉はこれつきり/中田みづほ
山独活がいっぽん笊にあるけしき/中原道夫
編みたての笊も蛇籠もうすみどり/伊藤敬子
小さき笊に母が摘み来し薺かな/飯島みさ子
寄居虫の笊を出でんとしては落ち/岡安迷子
菱が笊に在つて勝手から沼を見る/喜谷六花
地蔵会の笊にあふるる竹とんぼ/石鍋みさ代
味噌擂るやかたへの笊の独活分葱/石塚友二
笊の上にのせわたしある長き独活/鈴木花蓑
でんがくの串笊に干し梅見茶屋/森田れいこ
洗ひたる独活寝かしたる目笊かな/石川桂郎
ゆで栗や冷えたる笊の水しづく/楠目橙黄子
飯笊に夜は鳴いてゐるいとゞかな/松瀬青々
笊ふせて置けば晝鳴くきりきりす/正岡子規
