俳句例:101句目～
夕月やはづさんとする青簾/星野麦人
夕月やひそかに咲ける寒椿/日野草城
夕月や女の菽を引き止まぬ/尾崎紅葉
夕月や子等が遊びし草結び/佐藤漾人
夕月や家路となれば家恋し/松尾静子
夕月や林泉めぐる白団扇/島村元句集
夕月のさらさら雨やあやめふく/一茶
夕月や田舟めぐつて鳴く蛙/正岡子規
夕月や破船に沈む刻が来し/今瀬剛一
いつのびし茗荷の花や夕月夜/中村苑子
減反の田に逆立てゝ大豆乾す/内山夕月
夕月の影さす春の閼伽井かな/西島麥南
夕月の山をうしろに萱負うて/橋本鶏二
夕月の寒しと水菜さげてゆく/太田鴻村
夕月や木靴を刳りし屑を焚く/小池文子
種採つて宇陀の夕月細きこと/山本洋子
ふるさとはよし夕月と鮎の香と/桂信子
ふるさとはよし夕月と鮎の香と/桂信子
穴子釣る舟夕月にところ得て/三田青里
七夕の夕月や鈍に暮れかぬる/野澤凡兆
俳句例:121句目～
人の名の梅ほのかなり夕月夜/尾崎紅葉
作り滝夕月色を得つゝあり/山内傾一路
夕月や角なき鹿のうづくまる/山田三子
地虫鳴く高千穂野ゆく夕月に/白川朝帆
夕月にとどろき暮るる一雪嶺/岡田日郎
夕月にゆきあふ年の歩む中/赤松けい子
夕月の丘をはなるる桃の花/柴田白葉女
夕月に妻よ柚子買ひ忘れしか/目迫秩父
紅さして夕月はあり一の午/深見けん二
色鳥のねし木なるべし夕月夜/玉川湃山
夕月に瀬上も見ゆれ梅の花/金尾梅の門
花人やいつ夕月の影をひき/松本たかし
夕月に駆けのぼりたる桜かな/角川春樹
夕月に髪梳いてやる棺のうち/萩原麦草
夕月のありしあやめの返り花/高野素十
花人や夕月仰ぐこと知らず/大場白水郎
寒げなる夕月昇りをりにけり/高木晴子
夕月は樹海の孤舟ほととぎす/那須乙郎
夕月のとくかかりたり宵涅槃/平松措丈
茸飯にほひ夕月ひかり出す/柴田白葉女
俳句例:141句目～
草いきれ夕月赫く出でしかな/倉田晴生
落葉とび夕月しるく浮ぶとき/中尾白雨
思はざる夕月一葉地にけぶる/大野林火
戦死報夕月いまだひからざる/藤木清子
夕月や流れ残りのきりぎりす/小林一茶
掌の中の蕎麦種を見る夕月夜/萩原麦草
夕月にどよむ汐干の帰帆かな/尾崎紅葉
夕月も蜻蛉も天にとどまれり/岡田日郎
新雪の白馬も見ゆれ夕月夜/金尾梅の門
都心にも夕月夜あり生活あり/高木晴子
日脚のぶ夕月光もありぬべく/皆吉爽雨
夕月のかがやきいまだ鳥交る/森川暁水
開帳や夕月ひくくひとあるく/田中裕明
雑沓の名残り猶あり夕月夜/中口飛朗子
昇天祭夕月楚楚と天にあり/古賀まり子
夕月や槐にまじる合歓の花/芥川龍之介
夕月天下散乱して自裁の鈴虫/阿部完市
夕月は母のぬくもり花大根/古賀まり子
夕月のいろの香を出す青甜瓜/飯田龍太
夕月の色見て去らず畑焚火/楠目橙黄子
俳句例:161句目～
夕月の田毎の色の異なれり/米沢吾亦紅
夕月を土木の母は産むだろう/安井浩司
梨の花夕月あかりしてゐたり/清水基吉
夕月を花と仰ぎて花野去る/遠藤若狭男
機関車庫出て夕月に逢ふ暮春/宮武寒々
夕月を見ればながむるわが心/京極杞陽
泥やなぎ枯るる中洲の夕月夜/三好達治
夕月の影さす春の閼伽井かな/西島麦南
えにしだの黄や夕月はいろどらず/原一穂
鞍馬夕月花著莪に佇つつらき人/赤尾兜子
燈合は夕づき海髪のひしめける/下村槐太
たぐり寄せて夕月かゝる蓴かな/高田蝶衣
夕月のかかりて戻り馬車となる/下村梅子
ふつくらと夕月あがり桃花村/つじ加代子
わが骨の髄はくれなゐ夕月夜/沼尻巳津子
夕月に千鳥とわかるまでの距離/梶尾黙魚
夕月に日はにぎはしやつくづくし/岸田稚
夕月の照るまで峡の梨花暮れず/岡田日郎
夕月に道よぎる夜盗虫むれて/金尾梅の門
出稼ぎて夕月に舟伏せらるる/金箱戈止夫
俳句例:181句目～
夕月やわが紅梅のありどころ/鈴木六林男
山茶花の散りたまりつつ夕月夜/中村秋晴
夕月や泪もたねば死者も木も/河原枇杷男
夕月やもろこしの葉に風わたる/河合凱夫
雪渓に夕月きらりきらりとさす/岡田日郎
夕月や鱶の酢味噌をつまみ喰ひ/皆川白陀
夕月の触れずに浮び藺田の上/八木林之介
夕月細るその極限の罪を負う/林田紀音夫
早桃もぐ手を夕月に高かかげ/尾亀清四郎
暴風去りし空しさの夕月澄めり/原田種茅
神の夏身のうらがはも夕月夜/小檜山繁子
茶が咲いて夕月の香の金の蘂/千代田葛彦
茶の花に夕月あかりありそめぬ/高浜年尾
紅き蟹まだ夕月に染まずして/百合山羽公
夕月のまだひかりなき桑を解く/吉澤卯一
夕月のななめかそけし俊寛忌/西山多津子
夕月のかげあたたかき野菊かな/吉田冬葉
かなかなや夕月は子が見出でたる/井沢正江
夕月に桐の木挽くは淋しからむ/加倉井秋を
斧しまふ時残されし木木の夕月/栗林一石路
