俳句例:101句目～
啓蟄の産湯に泣かず強き男の子/田川飛旅子
滝見るにイタリヤ製の靴泣かす/諸田登美子
お酉さま空に泣かれてしまひけり/藤岡筑邨
誰泣かすことなく生きて雛あられ/水谷田鶴
秋草に泣き人形を泣かせけり/長谷川零餘子
未亡人泣かぬと記者よまた書くか/佐々木巽
虫干の木偶たはむれに泣かせけり/西村梛子
故郷とはひそかに泣かす花わさび/丸山佳子
泣かす子も泣く子も付けて牛膝/町野けい子
牧閉ぢの酔泣きのひと泣かしおく/太田土男
はたと打たれて泣かぬ子のその顔/小沢武二
獅子頭脱ぎて泣かせし子をあやす/谷美都子
花冷えや泣かぬ迷子に人が寄る/阿木よう子
シャボン玉大きく吹いて孫泣かす/梶田青游
ハンカチを泣かす弔辞の長かりし/三枝青雲
上げ潮や嫁泣かせ花いたづらに/小島千架子
祭獅子祓ひては子に泣かれゐる/丸山美奈子
汗疹出ぬやうに泣かせず孫の守り/高見多嘉
寝返りをさせて泣かせて天瓜粉/佐々木久菊
卒業歌泣かぬ子多したのもしかり/石川桂郎
俳句例:121句目～
筒鳥なく泣かんばかりの裾野の灯/加藤楸邨
柿紅しいつまで病みて母泣かす/古賀まり子
我泣かばちりやとまらん御所の花/正岡子規
毛皮着て泣かぬ女となりにけり/金田志津枝
妻泣かせ出づるや固き下駄はきて/播本清隆
泣くもあり泣かねば冬の月を見る/石原八束
子に泣かれ加賀万歳の困りけり/伊藤トキノ
引きあふて火燵の上で泣かすなよ/正岡子規
叱りたる母に泣かれて明易き/樹生まさゆき
鞦韆漕ぐ母を泣かせし日のごとく/上野一孝
馬の瞳の泣かぬやさしさ驟雨の湖/飯田龍太
泣きし過去鈴虫飼ひて泣かぬ今/鈴木真砂女
鬼百合を泣かしてをりし峡の雨/佐藤とみ子
泣きに来て母を泣かせる冬銀河/斉藤すず子
鶏頭を見し目をかへし泣かむとす/小林康治
人を泣かせ己れも泣いて曼珠沙華/鈴木真砂女
冬薔薇にもう泣かぬ顔あげにけり/鈴木真砂女
泣き相撲泣かせて勝ちし子をあやす/本多非文
師恩まだ仰がず泣かずハンカチフ/赤松ケイ子
残る虫老いてさめざめとは泣かず/鈴木真砂女
俳句例:141句目～
客の子をあやして泣かる子供の日/八牧美喜子
子を泣かせてゐたり鬼火のごとき船/神田斐文
母をひととき泣かせば済むか遠野分/鈴木栄子
穂草原師を焼きてあともう泣かず/増田河郎子
単衣きりりと泣かぬ女と見せ通す/鷲谷七菜子
妻泣かすはほとほとかなし炭火見る/杉山岳陽
女手にボジヨレヌーボの栓泣かす/後藤比奈夫
芋虫の泣かずぶとりを手に賞づる/上田五千石
泣かされし記憶ばかりよゆすらうめ/野崎静子
子に泣かれ子猫に啼かれ負けにけり/河野美奇
失職の日日めんめんと子に泣かる/板垣断層子
抱きあげし木偶ひと泣かせして曝す/水谷岩雄
もう泣かぬ顔セーターを抜け出せり/奈良文夫
見えぬ目を泣かず誇らずサングラス/高山青苔
抱かずとも赤子泣かすな大年ぞ/長谷川久々子
泣かむばかりに釣瓶落しの比叡愛宕/久保幹児
踊るらめ女泣かせぬ世の来るまで/中村草田男
遅き日や泣かせて歩く子守婆/吉武月二郎句集
酸漿や泣かすつもりはなかりしに/片山由美子
釣りし河豚きゆつと泣かして外す鉤/木下碧露
俳句例:161句目～
泣かれては泣かざるまでや虎が雨/中村草田男
しばらくは泣かせおくなり栗ごはん/奈良文夫
うれしさに雛泣かせてしまひけり/佐藤美恵子
おもへばや泣かれ笑はれとしのくれ/服部嵐雪
しばらくは子を泣かせ置く大花野/小湊美代子
燗熱し泣かされましたよあんたには/高澤良一
我泣かんに散ることなかれ御所の花/正岡子規
なぐさめの過ぎて泣かすや蓼の花/岩永のぶえ
もう誰のためにも泣かぬ素足かな/穂積由紀子
さよならに泣かない約束ポインセチア/松本恭子
冬菜洗ふことに一途や絶えて泣かず/鈴木真砂女
おぼろ夜の頬をひきつらせ泣かじ男/長谷川素逝
ちやつきらこ間違はぬやう泣かぬやう/笹尾照子
知るだけの子守唄尽き子に泣かれる/石川日出子
うち泣かむばかりに花のしだれけり/上田五千石
雪投げや女の児泣かせてよきものか/甲田鐘一路
菊枯れて泣かねばならぬこともなし/鈴木真砂女
まくなぎを泣かむばかりにうちはらひ/山口誓子
泣きしむかし鈴虫飼ひて泣かぬいま/鈴木真砂女
泣くための泣かないためのドレスの山/松本恭子
俳句例:181句目～
衣に着きし草の実を炉に泣かせけり/中戸川朝人
松過ぎのあやして泣かす他人の子/鍵和田ゆう子
おもかげよきんぽうげこそ泣かまほし/川島彷徨子
赤ん坊泣かし笑わしてから働きに出る/浜口弥十郎
転んで泣かぬ子鮭の切身と灯が待つよ/磯貝碧蹄館
そら豆の花に日ぐれの子を泣かしてある/橋本夢道
あが息づき泣かんばかりぞ天の川/飛鳥田れい無公
しんじついのちの母に泣かるる冬の星/栗林一石路
もろこし焼き泣かまくこころそだており/川口重美
叱ればすぐ泣く児だと云つて泣かせて居る/尾崎放哉
桐咲くや泣かせて締むる博多帯/西嶋あさ子「読点」
夜汽車の片隅で夏蜜柑むいてもう泣かない/栗林一石路
いもうとを泣かせしむかし草の笛/山上樹実雄「四時抄」
桐の花あまき夜ごとは子に泣かれ/『定本石橋秀野句文集』
心弱くなりゐる母を泣かしめて夜の時雨か落葉を踏むは/北沢郁子
手にとれば桐の反射の薄青き新聞紙こそ泣かまほしけれ/北原白秋
