俳句例:101句目~
涼しさや象の下掃く朝の人/佐野青陽人
サーカスの象吊る港十二月/野溝サワ子
象川の夜は聞ゆる屏風かな/大峯あきら
象谷に舞ひ上がりたる竹落葉/山本洋子
象谷の春行く雨の止まず降る/下村梅子
月光の象番にならぬかといふ/飯島晴子
日象に耶蘇降誕の茶のけむり/飯田蛇笏
象も耳立てゝ聞くかや秋の風/永井荷風
ブリキなる象の耳揺れ花祭/柳原控七郎
遠足の子等みな象の鼻さする/加藤華都
節分や寒気の熊と温気の象/秋元不死男
木をきるや心にしみる雲の象/細谷源二
八月の窓辺に象の微笑かな/宇多喜代子
霧罩めて青葉の象のくはしさよ/瀧春一
白象を笑ひ嘆かせ涅槃図絵/赤松けい子
音楽のわかる象の尾草の花/後藤比奈夫
白象の牙上げて哭く涅槃絵図/松本圭二
黄昏の象きて冬の壁となる/富澤赤黄男
象の背にキリンの首に黄沙降る/石川天虫
白象のごとくけだかく雲灼けて/高澤良一
俳句例:121句目~
立つてゐる象のかなしき愛鳥日/依光陽子
約束の眼鏡のなかに象をみた/前田圭衛子
花祭の白象生死無限にして/長谷川かな女
荒星や老いたる象のやうな島/夏井いつき
象みずから青草かずき人を見る/西東三鬼
ねむれずに象のしわなど考へる/阿部青鞋
はるかなる君が背にわれ夏の象/五島エミ
ぽやぽやの毛は象の頭に秋風に/堀内幸子
ジンタ嗄れ資産の象へ夜が落下/伊丹公子
鼻丸めきつたる象の時雨をり/猪俣千代子
傷兵は象に笑はず冬陽に去る/文挟夫佐恵
八月の窓の辺にまた象が来る/宇多喜代子
豆踏むは象のごとくに節分会/鳥居おさむ
冬枯れに長寿の象のハマ子さん/高澤良一
動物園さわやかに象みえ来たる/京極杞陽
象頭山詣でし朝寝のふくらはぎ/高澤良一
動物園さわやかに象見え来たる/京極杞陽
受胎して象のあくびを眩しみぬ/鎌倉佐弓
象の爪を磨いている春の夜の嵐/斎藤冬海
古りし絵に象の哭きをる青あらし/上村占
俳句例:141句目~
大象の牙折れてゐる土用かな/佐野青陽人
形而上の象はときどき水を飲む/大西泰世
日本産の象来る閉ざされた鉄路/久保純夫
涅槃の図白きは象の歎けるなり/山口誓子
象の眼は瞑想リンゴ食むときも/和田知子
涅槃図や身を皺にして象泣ける/橋本榮治
頭を伐られ小春の象の脚めく樹/高澤良一
温泉飲めるもある群象や春灯/吉岡禅寺洞
二月の雲象かへざる寂しさよ/橋本多佳子
黄葉描く子に象を描く子が並び/稲畑汀子
象へ走る花吹雪には目もくれず/石井とし夫
冬の日や象の病気をみておわる/宇多喜代子
傘の下から象につながる鎖見る/林田紀音夫
蓮/牡牛/鈴/簑経てまた心臓の象/竹中宏
象よりも大きく画きし寝釈迦かな/野村喜舟
灰色の象のかたちを見にゆかん/津沢マサ子
象亀のやうなテントもキャンプ場/高澤良一
象が目をつむりぬ穂絮ゆくあひだ/加藤秋邨
ヨット行く湖底に眠るナウマン象/安井信朗
象の餌のゆたかに積まれ敗戦忌/白岩てい子
俳句例:161句目~
象の鼻吹きたるやうなシャボン玉/石河義介
麦秋や江戸へ江戸へと象を曳き/高山れおな
サーカスの象に北見の月のぼる/青葉三角草
芭蕉の葉象のごとくにゆらぎけり/安田蚊杖
初明り象あるもの眼に見えそめ/小川双々子
冬日の象べつの日向にわれらをり/桜井博道
象の眼の枯れゆくものの中にあり/有馬朗人
春や佐保路普賢の象に乗る夢も/河原枇杷男
寝釈迦より小さく象の座りおり/成瀬正とし
寒い国のジンタヘ膝を屈した象/伊丹三樹彦
哀しき象せまく跪坐して寝釈迦かな/及川貞
象一歩あるき園樹のみな萎ゆる/長谷川かな女
象には象の冬日ことりとある寝部屋/栗林千津
はつふゆや象のかたちに帽子置き/上田日差子
菊の象の腋毛アパートの暗いシーツ/大沼正明
うららかや絵本の象が立ちあがる/藤井寿江子
風邪の子に象の真似してミカンとる/椎橋清翠
ことりことりと象へちかづく松葉杖/小宅容義
ジンタ裏でだ象番老人あっ!耳ない/伊丹三樹彦
アフリカ象の耳のうしろの寒暮かな/伊藤いと子
俳句例:181句目~
揺れる象のような海聾女の新聞ちぢむ/赤尾兜子
新しきとしのひかりの檻に射し象や駱駝はなにおもふらむ/宮柊二
曼珠沙華のするどき象夢にみしうちくだかれて秋ゆきぬべし/坪野哲久